更新日: 2018/03/20
文:安田由美子(針仕事研究家 NEEDLEWORK LAB) 撮影:天野憲仁(日本文芸社)
冬の晴れた日。ふと見ると、前を歩いている方のバッグがキラキラしていてとてもきれいでした。立ち止まった横断歩道の手前でよく見たら、ビーズの刺繍でした。
和装などでは全体がビーズのバッグというのを見かけますが、普段のお買い物でもビーズのバッグなど、心がうきうきしていいですね。
▲さまざま色が揃う、丸小ビーズ。
ビーズ(beads)と聞いて思い浮かべるのはシードビーズのことでしょう。Seed(種)、つまり小さなつぶつぶのガラスビーズを呼びます。丸みを帯びたビーズは穴の開いたストロー状のガラスが、小口切りにされたあとに加熱されながら回転することで角が取れて丸くなります。大きさは、特小、丸小、丸中、丸大、特大、メーカーによってはE、EEとあって、手芸屋さんなどですと、丸小、丸大あたりがよく店頭に並んでいますね。
▲左から、特小ビーズ、丸小ビーズ、丸大ビーズ、特大ビーズ(4㎜)。特大ビーズでは5.5㎜のものもある。
糸に通して販売されている糸通しビーズ(パックビーズ)もあります。束になっているものは結び目を引っ張ると束がほどけて一本の糸になります。からまらないように注意して引きましょう。
いろいろな色の入ったミックスビーズもあります。ミックスビーズは、色のバランスのよいものが一つの袋に入っているのがいいですね。袋の中のものを並べて刺していくだけで、ちぐはぐな印象にならない組み合わせになっています。
オーソドックスな丸形のビーズのほか、さまざまな形のビーズがあります。形状やカットのしかたによって光の反射に変化があるので、ポイントとして作品に使うと、ニュアンスが出てきます。
「竹ビーズ」はガラスの管を切った竹のような形です。長さによって、五厘、一分、二分、三分、四分、五分などがあり、一分、二分、三分あたりをよくみかけます。竹ビーズやツイストビーズなどは長さがあるため、小さい粒のビーズに比べると強い力が加わったとき割れやすいです。
▲竹ビーズ。左・一分竹(上下段)、二分竹(真ん中・上下段)、四分竹(右・上段)、ツイスト(右・下段)。
『刺しゅうの基礎』では、外側が六角形で中に丸い穴の開いている「六角ビーズ」や表面がランダムにカットされていて落ち着いた輝きの「スリーカットビーズ」、ガラスの筒が薄くてちょっと金属っぽい雰囲気もある「アンティークビーズ」とよばれるガラス管を小口に切ったの形状のビーズを使ったサンプラーを掲載しました。
同じ色でどう違うかを比較できるように刺してあります。『刺しゅうの基礎』電子書籍版の方でご覧になりますと、輝き方の違いなどがよくわかるかと思います。
▲六角ビーズ。左:六角小、右:六角大
▲スリーカットビーズ。面がカットされていて、輝き方に変化がつく。
▲「アンティークビーズ」と呼ばれるガラス管を切っただけのような形のビーズ
ほかにも、外側が三角の「三角ビーズ」、外は丸くて内側が四角い穴の開いている「内角ビーズ」、あるいは「角穴ビーズ」、外側が四角の「四角ビーズ」(あるいは「スクエアビーズ」)などもあります。
▲サイズ違いの四角ビーズ。
他の形では、アボカドのような形の「まが玉ビーズ」(あるいは「ドロップビーズ」)、横から見てそろばんの玉のような形のビーズなどもあります。また、カットした後に加熱して角が取れたファイアポリッシュビーズなども。
▲左から、まが玉ビーズ、ダイヤ型のガラスビーズ、ファイアポリッシュビ―ズ。
「キラキラ糸」のお話でも紹介したように、ビーズでも本金を使ったものがあります。本物だけに輝きがまた一段と美しいですよ。
▲本金の特小ビーズ
ガラスの管の中を銀メッキしてあるものは、長い時間保管しておくと金属が酸化して色が変わることがあります。古いものと新しいものを一緒に使う時は注意しましょう。
パールビーズはガラスのビーズやプラスチックのビーズをコーティングしてパール、つまり真珠に似た感じにつくってあります。また、淡水に住んでいる貝からとれたパールに穴を開けた淡水パールビーズもあります。こちらは大きさや形が均一でないものの、自然の輝きを持っています。
▲プラスチック製のパールビーズ、丸い形の他、ナツメ型などもある。
他にも木でできたウッドビーズ、真ちゅうなどの金属のビーズ、天然石、貝殻、骨、木の実など天然素材のビーズ、アクリルなどプラスチックでできたビーズなどさまざまなものがあります。
▲ウッドビーズ
海外ではチェコ産のビーズなど、なんとも素敵な色のビーズがあり、特小よりもまだ小さな極小のビーズもあったりして創作意欲をかき立てます。
▲チェコ製のビーズ。アメジスト色のシャーロットビーズ(中段)、ホワイトローズ(下段)、ピンクゴールド(上段)。
▲アメジスト色のシャーロットビーズを留めつけた綴れの帯。
Instagram:@tsukurira0714
安田由美子
針仕事研究家。文化服装学院で洋裁とデザインを学び、卒業後は同学院の教員として勤務。現在は洋服や刺繍作品のデザインとつくり方を手芸書に発表し、フランス手芸書の日本語版の監修も行っている。「つくりら」のコラム「素材と道具の物語」に執筆中。2017年11月に『はじめてでもきれいに刺せる 刺しゅうの基礎』(日本文芸社刊)を出版。10年続くブログ「もったいないかあさんのお針仕事 NEEDLEWORK LAB」では手芸書を中心に幅広く手芸の情報を発信している。http://mottainaimama.blog96.fc2.com/