更新日: 2017/07/14
文:安田由美子(もったいないかあさん NEEDLEWORK LAB)
フリーステッチの刺繍では、図案を布に写すという作業があり、これが苦手とおっしゃる方も多いようです。苦にならないでできたら、刺繍はますます楽しくなるはずです。
▲(左)文字を複写するためのプラスチックカーボン紙/PILOT(右)スーパーチャコペーパーは布やティッシュ、筆に含ませた少量の水で下地を消すことができる。/チャコペーパー株式会社
シート状になっている布用複写紙を使うのが一番一般的な方法でしょうか。
図案を写したトレーシングペーパーと布の間に、布用複写紙をはさんで、透明なフィルムで保護した上をスタイラスなどでなぞって写す方法です。
薄い色の布にでも濃い色の布にでも使えるグレーが使いやすいように思います。
水で消えるものと、水洗いで消えるものがあります。
水だけで消えるものが刺繍には向いています。
線が消えずに残ってしっても大丈夫な場合、プラスチックカーボン紙でも大丈夫です。
文房具屋さんで手に入ります。
文字を複写するだけあって、細かいものも細い線で写すことができます。
黒、青、赤などがあり、糸の色に近い色を選びます。
図案を写す道具としてペンタイプのものもいろいろありますね。
▲左から、Heat transferは写した図案をアイロンで転写できるペンシル、熱転写ペンシル/クロバー 濃い色の布に白いンクで印をつけるアイロンマーカーホワイトはアイロンの熱や水で消える/KAWAGUCHI 温度変化で消えるフリクション。0.5赤と0.7水色/PILOT 水で消えるチャコバー。ピンク、青、茶/チャコペーパー株式会社 水筆
薄い色の布の場合、下から光を当てるトレース台の上に図案を置き、布を置いてマスキングテープなどで固定します。
鉛筆や布用のシャープペンシル、あるいはペンで図案の影が見える線をなぞるだけで図案が写せます。
水で消えるタイプのものはとても便利でよく使われます。
ただ、梅雨の時期にはいつの間にか消えていることがあります。
また、水で消せるペンの中には自然に消えるものもあり、すぐに刺し終わるときは消す手間がなく便利なものの、刺繍が終わる前に消えてしまうこともあるので注意が必要です。
濃い色の生地にはアイロンで消える白いペンも便利です。
透かして写せないのでステンシルの型などを利用するのもよいでしょう。
描いてすぐは見えないのですが、少しすると白い線が乾いて見えるようになってきます。刺繍が終わったらアイロンを当てると消えます。
図案を写すペンとしては熱で消えるペンも便利です。ただし、これは布用というわけではなく、あくまでも文房具です。
文房具として紙に書く場合はこすって摩擦熱で消しますが、布の場合だとこすると布が傷みますから軽くアイロン、あるいはドライヤーの熱風を当てるだけで消えます。
布に書くには、太さは0.4以下だと布にはうまく書けず、0.5か0.7くらいが書きやすいようです。
ただし、極寒の地域ですと印が再び浮き出ることもあります。
消えはしませんが、熱転写ペンシルというのもあります。
ずいぶん昔ですが、HEAT TRANSFERという転写できる鉛筆を買いました。紙の裏に反転した絵を描いて布に当て、アイロンをかけると赤い色が布に写っているというものです。
今は日本のメーカーから青いのも出ていますね。
細い線を描くといいです。
消えなくてもかまわないようなときには便利です。
海外の刺繍雑誌などではこれと同じような方法で、アイロンで転写できる図案を印刷した紙が付録としてついていたりします。
▲フランスの熱転写シート。ROUGE DE RHIN。右下はシートをカットしたもの。刺繍枠にはめてあるものが、アイロンで布に転写したもの。
色は青色が多いでしょうか。
線が細く写せるので刺しやすいですね。
Instagram:@tsukurira0714
安田由美子(もったいないかあさん NEEDLEWORK LAB)
文化服装学院デザイン専攻を卒業後、同校に洋裁の教員として勤務。現在は刺繍や洋裁の手芸誌で作品を発表する傍ら、つくり方指導、フランス手芸書の日本語版の監修などを行う。2007年から始めたブログ「もったいないかあさんのお針仕事」は、手芸をたしなむ多くの人々に愛され、現在、480万アクセスを超える。 http://mottainaimama.blog96.fc2.com