更新日: 2017/07/14
文:安田由美子(もったいないかあさん NEEDLEWORK LAB)
刺繍をしていて、糸を切るときに使うはさみのお話です。糸を切るはさみは糸だけ切ってください。布を切ると、糸が切れなくなることもあります。
▲左からゾーリンゲン(ドイツ)の甘皮切り、rubis(ルビス)社(スイス)の小はさみ、越前屋反り刃の刺繍ばさみ、ゾーリンゲンのGOSOL(ゲーゾル) キューティクルシザー。
はさみは、きれいに切れれば、まあ、ある程度どんなはさみでもいいといえるでしょうね。でも、困るのは、失敗したときや、間違ってしまってほどいてやり直さなければいけないときです。
縫い物で縫い合わせてあるものをほどくときは、布と布の間に渡る糸を、布を広げながら切ることができます。
刺繍の場合、そういう作業ではなく、それぞれのステッチを切るということです。そのとき、はさみの先が細く、薄く、尖っていると縫い目をパツンと切ることができます。
特にクロスステッチの場合、×の中にはさみが入れられると、ほどく作業はとてもはかどります。
刺繍のはさみは、反ってカーブしている刃のものも多いです。
糸は切れても刺し直せるけど、布を切ってしまうとどうしようもないもの。
反り刃だと切ってしまうことは、まず、なく、私も反り刃のほうを使うことが多いです。
反対に、カーブのはさみはいやという方もいらっしゃって、それは使い方や慣れだと思うので、お好みで選んでいただけばと思います。
私が刺繍のときに使っているはさみは、甘皮切り、あるいは眉毛切りとして売られているものです。 眉毛やデリケートな甘皮が上手に切れるということは、刺繍糸もきれいに切れるということです。
切れないはさみで糸を切ると、きたなく切れるのもいやなものですが、それ以上にすっきり切れないとストレスが生じるように思います。
切れるはさみで切ったときは、そうめんをいただくときのあの、プッツンという心地よさのようなものが感じられます。
よく切れる包丁でキャベツの千切りをするとたくさん切りたくなります。 同じように、いいはさみで糸が気持ちよく切れると刺繍はさらに楽しくなります。
ところで、海外の雑誌で昔の装飾のあるアンティークの刺繍ばさみにおもりのようなものがついているのを見たことがあります。
▲自作のシザーキーパー。
はさみがどこにあるか見つけやすくするためのものだと思っていました。
あるとき、自分のはさみが床に落ちて突き刺さりました。
そこで、あのおもりのようなものは、はさみの先からでなく、おもりの方から落ちて、はさみの先を守るためのものなのだと納得しました。
自作のシザーキーパーはおもりとして磁石を入れ、針を拾うときにも使っています。
意外と見落としがちですが、そういう尖った先を守るために、使わないときはしっかりしたケースに入れておくのが大事ですね。
革でつくったりもしています。
▲コウノトリや孔雀の形をした刺繍ばさみ。自作のレザーケースにステッチ。
簡単なところでは、フェルトを貼った缶に入れるのもいいですね。
キャンディの缶などです。
▲「HINT MINT」の缶ケースは、おしりのポケットに入れやすいよう、ゆるやかにカーブしているので、反り刃の収納にぴったり。
薄い缶でもカーブがあるものだとはさみのカーブにも対応できるのではと、選んでみました。
針の保管ケースも兼ねていて、携帯ができます。
Instagram:@tsukurira0714
安田由美子(もったいないかあさん NEEDLEWORK LAB)
文化服装学院デザイン専攻を卒業後、同校に洋裁の教員として勤務。現在は刺繍や洋裁の手芸誌で作品を発表する傍ら、つくり方指導、フランス手芸書の日本語版の監修などを行う。2007年から始めたブログ「もったいないかあさんのお針仕事」は、手芸をたしなむ多くの人々に愛され、現在、480万アクセスを超える。 http://mottainaimama.blog96.fc2.com