laglag_サトウキミコさん(前編)|ふわふわ、もこもこ。色を塗るように刺し埋めて描くパンチニードルは手軽で自由なのが魅力。

laglag_サトウキミコさん(前編)|ふわふわ、もこもこ。色を塗るように刺し埋めて描くパンチニードルは手軽で自由なのが魅力。

今春に『パンチニードルの ふわふわ、もこもこ、やさしいこもの』を上梓したサトウキミコさん。パンチニードルとの出会いに始まり、著書制作のエピソードまで、たっぷりお話を伺いました。前編・後編の全2回でお伝えしていきます。

撮影:寺岡みゆき  取材・文:酒井絢子

ラグをつくる技術のひとつであるフックドラグをより簡単に楽しむことができるのがパンチニードル。そのパンチニードルで多くの作品を生み出し、各方面で活躍しているのが、「laglag_(ラグラグ)」のサトウキミコさんです。

 

シンプルなテクニックで自由に楽しむ


▲基本がマスターできるという、「小さなお花のブローチ」。小ぶりのブローチは、ワークショップでも初心者向けによく扱われるアイテム。

まだまだ広くは知られていないと、サトウさんも感じているというパンチニードル。しかし、そのテクニックは決して難しいものではなく、基本はニードルを図案通りに布に刺していくだけ。目数を確認したり、細かい部分を気にしたり……などといった難しい作業はなく、かんたんな手仕事で、小さなものから大きなものまで、自由な感覚でつくり上げることができる魅力的なハンドクラフトです。


▲パンチニードルの仕上がりは、針を刺す方を面にする「ステッチ面」と裏返した方を面にする「ループ面」の2タイプ。左側はループ面、右側はステッチ面が表側。ステッチ面の方は裏側にフェルトをかがって仕立てる。

「小さめの作品は制作する場所を選ばず、外出先などでも空いた時間に少しずつ進める事ができるのもいいところ」とサトウさん。「それに、無心になってざくざくと刺し進む感覚や音が心を落ち着かせ、リラックスできるんです」

細かい作業が苦手な人でも短時間で作品を仕上げることができるので、小さな子どもや年配の方にもおすすめなのだそう。

 

より使いやすく手に馴染む道具を求めて

サトウさんがパンチニードルをはじめたのは、3年ほど前のこと。それまではフックドラグの作品を制作していたそうですが、アメリカのオックスフォード社のパンチニードルに出会い、個人輸入して実際に使ってみると、その使いやすさにびっくり。たちまち夢中になりました。


▲宝石のルビーをイメージしたポットマット。コントラストのある配色で洗練されたデザインだが、パンチニードルならではのあたたかみのある質感で、柔和な表情。


▲ステッチ面を表側にし、フラットに仕上げたポットマット。「裏側にフェルトをかがって仕立てる際、角の部分が縫いづらいときはフェルトに切り込みを入れると生地が収まりやすくなります」

「ラグ針を使うフックドラグは、布に針を刺し、糸を引っ掛け、引き抜いてループをつくります。ぬくもりある作品に仕上がりますが、一針一針手間のかかる手法です。でも、パンチニードルは専用の針に糸を通したら、色を塗るように刺し埋めていくだけでどんどんループがつくれるんです。よりスムーズに制作が進むので、作品の幅も広がっていきました」


▲お花と幾何学模様を組み合わせてデザインしたという「春風を呼ぶコースター」。茎や葉っぱ、ドットやラインなどの細かい部分を仕上げてから、周りを刺し埋めていく。

とりわけオックスフォード社のパンチニードルは、糸通しが簡単で、針先が細くベースの布に刺し込みやすいことが魅力だと言います。

サトウさんはこのニードルをもっと多くの人に知ってもらいたいと思い、2019年、オックスフォード社との販売契約を結び、【オックスフォードパンチニードル】の公式販売をスタート。さらに昨年には、アメリカまで出向き、オックスフォード社代表のエイミーオックスフォード氏に直接指導を受けたそう。その際には、毛糸の染色についても教えていただいたのだとか。

 

ラグのやさしい風合いを伝えたい

laglag_の作品の魅力は、多彩な色づかいでありながら暮らしになじむデザイン。作品づくりの工程でも、「思い描くデザインを自由に形づくり、色を選ぶ時間がとても楽しい」とサトウさん。

「少しずつ刺し埋まっていくことにも喜びを感じますし、仕上がったときの達成感はもちろん、ラグのやさしい風合いに癒されています」


▲大地や風をイメージしたという、「晴れとくもりのタペストリー」。それぞれ立体感を出すために、「ホワイト」(写真左)はさまざまな技法を組み合わせ、「グレー」(写真右)は糸の太さを変えるなど、工夫が凝らされている。


▲「おうちでのコーヒータイムが明るい気分になるように」との思いで制作したという「お花畑のマグウォーマー」。花瓶や鉢植えに巻きつけても可愛いアイテム。

著書『パンチニードルの ふわふわ、もこもこ、やさしいこもの』には、幾何学模様をアレンジしたインテリアアイテムや自然をモチーフにしたアクセサリーなど、幅広い作品が掲載されており、パンチニードルの可能性が感じられます。

「自分の好きな雰囲気を取り入れつつも、デザインや色合いで、パンチニードルの楽しさ、ラグのやさしい雰囲気が多くの方へ伝わるようにと考えて多様な作品をつくりました」

サトウさんが「存在感がありながら、暮らしの中にとけこむ作品を目指した」と言う『パンチニードルの ふわふわ、もこもこ、やさしいこもの』の作品たち。実用性のあるアイテムが多いことも大きな魅力となっています。後編では、パンチニードル作品で広がる暮らしの楽しみをお伝えしていきます。

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