更新日: 2019/06/19
アメジストやサファイア、エメラルドなど、人気の宝石30種類のつくり方を紹介した『ほんものみたいなジュエルソープ』。この本の著書、みなみざわななえさんに会いたくて長野県小諸市のアトリエにおじゃましました。日々の制作やものづくりへの思いについてお話を伺ったインタビュー、前編後編にわたってお届けします。
撮影:清水美由紀 取材・文:つくりら編集部
みなみざわななえさんは、長野県小諸市で「宝石せっけん教室」を主宰しています。東京から北陸新幹線で佐久平駅へ。くるみ蕎麦が名物のおそば屋さんを通り過ぎると、辺りはのどかな田園風景に。住宅もまばらになった細い坂道を上ったところに、みなみざわさんのアトリエを見つけました。
▲みなみざわさんのアトリエに向かう小径。初夏の緑がまぶしいこと!
みなみざわさんがアトリエを構えているのは、ワークショップなどが行える多目的空間の一角。チョークアートにアクセサリー、お料理教室にヨガまで、バラエティーに富んだワークショップが開催されているのだそう。
▲みなみざわななえさん。制作スペースには、宝石せっけんづくりの“三種の神器”、電子レンジ、保温庫、ポータブル冷凍庫が常備。「この3つはどこに行くにも持って行きます」
壁際の棚には、教室で教えている作品のサンプルや著書掲載作品がディスプレイされています。
▲カップケーキソープ、パフェソープ、アイスキャンディーソープなどは、JDSA(日本デザイン石けん協会)認定の作品サンプル。
▲ジュエルソープのサンプル見本。模様の入り方がまるで本物の鉱物のよう。
▲ワークショップスペースには大きな窓があり、天気のよい日は浅間山が見える。なんて素晴らしい環境!
みなみざわさんは、結婚、出産後、ご主人のご実家がある小諸市に引っ越してきました。「生まれは東京・立川です。父が転勤族で小学生のときは4回、転校しました。幼少期を主に過ごしたのは神奈川県の伊勢原市。丹沢にも近く、自然が多く残るところで、小諸市とも共通点がありますね」
小・中学校を通して得意な科目は、図工に音楽、そして体育。その当時流行っていた手芸ももれなく体験したそう。「ミサンガ、ビーズ、編み物。ワイヤーで人形もつくりました。私の母もいつも何かをつくっている人で、紙にろうを塗ってお花にしたり、固形のせっけんにピンを刺したり。編み物も好きで、セーターを編んでくれたことも。ローズのボタンがついたお洋服などは今でも覚えています」
じつはみなみざわさん、宝石せっけんの講師だけなく、子ども服作家の一面も。専用のSNSもあるのです。
▲ジュエルソープとは別のアカウント「handmadeby7e」でハンドメイドの子ども服も発信している。
「そういう母の姿を見ていたので、自分に娘ができたときに、いろいろとつくってあげたい、って思ったのでしょうね。自分がつくった服って、市販のお洋服とはやっぱりちょっと違うじゃないですか。娘に着せて児童館などに行くと『それ、どこの?』から始まり、手づくりだと答えると、『じゃあ、私にもつくって』となっていったんです」
手づくり好きの少女“ななえちゃん”も、たおやかに成長し、妻となり、母となり。今や小学3年生と年長の2人の女の子のお母さん。娘たちとも手づくりでつながっています。
「上の娘が小1のとき、夏休みの自由研究がありまして、インターネットで検索しながら娘にやりたいものを尋ねたら、宝石せっけんを見て『これ、やりたい!』って」。これが記念すべき宝石せっけんとの出会いの瞬間。
「そのころはまだMPソープの知識もなくて、薬局などに売られている市販の固形せっけんで試したら、見事に失敗。カットしたときにボロボロになってしまったり、食紅の赤を使ったら、赤がオレンジになったり、ダマになってしまったり」
そのときの失敗を糧に一念発起。もっときれいなせっけんをつくりたいと、JDSA(日本デザイン石けん協会)のディプロマコースやアロマティカメソッドMP宝石石鹸ディプロマコースを修了し、自ら教えるようになったのです。
▲アトリエのテーブルにずらりと並んだ色材や香料。選びやすいように種類別に箱に入れて。
MPソープとは「Melt&Pour(溶かす、注ぐ)」の略で、グリセリンを多く含む、透明なせっけんのこと。50〜60℃で溶けるので、電子レンジや湯せんで溶かし、好きな色や香りをつけて手軽にせっけんづくりを楽しむことができます。
▲リキッドタイプで混ぜやすく、MPソープの色づけに適したカラージェル。透明感のある仕上がりになるそう。
▲MPソープにカラージェルを混ぜてつくった色見本。
▲キラキラとした輝きをプラスするのに使うグリッター。
取材時にジュエルソープのつくり方を教えてもらいました。つくってくれたのはパープルとグリーンのグラデーションが美しい「フローライト」。MPソープを細かく刻んだものに、色をつけて溶かしたMPソープを順番に注いでいくという「クラックジェルソープ」という方法です。
プラスチックカップからソープを取り出し、ナイフで小分けにします。
断面が多くできるように表面をそぎ落としていきます。
削り落としたソープはさらに刻みます。「切り取ったかけらは、溶かしたり、石けんの中にパーツとして埋め込んだりして再利用。余すところなく、使えます。紙コップに入れて溶かすと、市販の色材ではつくれない、複雑な色がつくれたりするのです」
取材陣一同、「わぁ〜きれい」と歓声をあげてしまったほど、美しかったかけら。「このかけらを見せると、みなさん喜びます」
▲色とりどりのかけらは色別に分類してケースに。
後編では、子ども向けのワークショップがきっかけで編み出した独自の手法、「マーブルジェルソープ」の作り方を取材しています。
みなみざわ ななえ
小学生の娘の夏休みの自由研究で宝石せっけんを知り、その後、娘と一緒に教室に参加し、本格的に制作を始める。JDSA(日本デザイン石けん協会)認定の宝石石けん、アイスキャンディーソープ、カップケーキソープの各ディプロマコース修了、アロマティカメソッドMP宝石石鹸ディプロマコース修了。現在は長野県で「宝石せっけん教室JewelSoap7e〜nanae〜」を主宰。
ホームページ:https://www.jewelsoap7e.com
インスタグラム:@jewelsoap7e