更新日: 2019/10/31
旬の恵みを存分に堪能するアイデアを中川たまさんの著書『季節の果実をめぐる114の愛で方、食べ方』からご紹介します。
文:中川たま 撮影:宮濱祐美子
生でも干しても美味しい滋味深さに気づいた果実
慣れ親しんだ果実は、心と身体を穏やかに健やかに整えてくれます。
幼いころ、年末になるとお年玉と一緒に届いた干し柿は、嬉しかった思い出。それは、大分県に住む祖父母が山で垂れ落ちそうに実っていた渋柿を持ち帰り、軒先に吊るして干し柿にしてくれたもの。生の柿とはあまりに違う食感なので、物心つくまで同じものだとは気がつかなかったくらい。大人になった今では、生柿をいただく機会も多くなり、自分でも干し柿を作るようになりました。
柿の穏やかな甘みと包容力の深さは、どんな料理も受け止めてくれます。我が家ではおやつとしていただくより、むしろ料理の食材として、サラダや和え物にして食卓に上げる方が多いくらい。
旬を感じさせてくれる照柿色(てりがきいろ)は、鮮やかなひと皿に仕上がります。
柿は皮が薄いので、気がつくとじゅくじゅくと柔らかくなっていることも。でも、硬いときとは異なる魅力があって、これもまた好き。とろりとしたゼリーのような食感を上手く利用すると、簡単なソースに早変わりします。そのために、少しの間見て見ぬふりをして、ぷよぷよになるまで育みます。
春菊の苦みとごま油が柿の風味を際立たせます
<材料> 2人分
柿…1/2個
春菊…4~5本
落花生(ゆでたもの)…20粒
A ごま油…小さじ2
しょうゆ、米酢、しょうが(すりおろし)…各小さじ1
白すりごま…少々
<作り方>
【1】柿は皮をむいて一口大のくし形に切る。種があれば除く。
【2】ボウルにAを入れよく混ぜ合わせ、1、ちぎった春菊、落花生を加えてさっと和える。
完熟柿とカマンベールが作る美味しいとろみとコク
<材料> 2人分
柿(柔らかくなったもの)…1個
カマンベールチーズ(厚みを半分にしたもの)…1/2個
マッシュルーム(白)…2個
オリーブ油…適量
塩、こしょう…各適量
<作り方>
【1】柿はヘタの下に水平に包丁を入れて切り落とし、切り口に塩、こしょう各少々をふってチーズをのせる。
【2】1を200℃に予熱したオーブンで10~15分焼く。
【3】器に盛って薄切りにしたマッシュルームをのせ、塩、こしょうをふって油を回しかける。
【書誌情報】
『季節の果実をめぐる114の愛で方、食べ方』
中川たま著
春夏秋冬の果実ごとに、生のまま料理に使うフレッシュメニューと、保存が効くストックメニュー、ストックを使って作るアレンジメニューのほか、果実を使った季節の食卓をご紹介しています。
食べるだけでなく、旬の恵みを存分に堪能するアイデアを綴った著者のショートエッセイ付きです。
中川たま
料理家。神奈川県・逗子で、夫と大学生の娘と暮らす。自然食品店勤務後、ケータリングユニット「にぎにぎ」を経て、2008年に独立。旬の食材を活かしたレシピや、洗練されたスタイリングを書籍や雑誌などで提案している。 地元・逗子を拠点にイベントにも精力的に参加し、ジャムなどの保存食を提供するほか、伝統を受け継ぎながら今の暮らしに寄り添い、季節のエッセンスを加えた手仕事に日々勤しむ。 著書に『一汁二菜の朝ごはん』(成美堂出版)、『暦の手仕事』『旬弁当』『季節の果実をめぐる114の愛で方、食べ方』(すべて日本文芸社)、『私の好きなサラダの食べ方』(グラフィック社)、『たまさんちのおおらかなおやつ』(家の光協会)などがある。