更新日: 2019/10/07
旬の恵みを存分に堪能するアイデアを人気料理作家、中川たまさんの著書『暦の手仕事』からご紹介します。
文:中川たま 撮影:宮濱祐美子
美味しく七変化する秋刀魚の魔法
大根おろしとかぼすが添えられた、焼き秋刀魚しか知らなった幼少期。
年を重ねるにつれ、蒲焼きを知り、お刺し身を知り、つみれを知り……。少しずつ秋刀魚のアレンジに興味を持ちはじめました。
「オイル煮」という調理方法を知り、さらにバリエーションが増え、和食のみならず洋風の秋刀魚料理の魅力にも気づきました。
塩をふり、ほどよく水分を抜いた秋刀魚を、たっぷりのオリーブオイルやハーブで、じっくりゆっくり火を入れると、しっとり艶やかな一品に。
いわしのオイルサーディンのように、オイルをごま油に変えれば、ご飯に合うおかずになります。
秋刀魚のエキスが染み込んだオイルもまた、調味料のひとつ。身をほぐしてオイルごと茹で立てのパスタに絡めれば、魚が苦手な小さな人たちも、パクパク食べてくれます。
ごま油バージョンは、ほぐして少しのお醬油をかけ、ご飯に混ぜ込むのもおすすめ。
それを握って、おむすびもいいですね。
青くきらめくぷっくりボディに、黄色いくちばし。そして、透き通るお目めの秋刀魚を見つけたなら
フレッシュな美味しさを閉じ込めるように早速作ってみてください。
秋刀魚はオイルで煮込む前に、白ワインとビネガーで1時間ほどマリネしておくと、臭みが消えて身が締まり、煮崩れもしにくくなります。
<材料>
秋刀魚 … 3尾
塩 … 大さじ1
A 白ワイン … ½カップ
白ワインビネガー … 大さじ1
EXVオリーブオイル … 適量
B ローリエ … 1~2枚
赤唐辛子 … 1本
<作り方>
【1】秋刀魚は頭と尾を切り落とし、5㎝幅に切る。内臓を除いてきれいに洗い、水気をふき取る。
【2】1をバットに並べて塩をまんべんなくふり、15分置いてAを加える。途中裏返し、約1時間マリネする。
【3】バット(直火OKのもの)に薄くオリーブオイルを敷き、2の水気を押さえて並べる。秋刀魚が浸る程度のオリーブオイルを注ぎ、Bをのせる。
【4】3を極弱火にかけ、15~20分秋刀魚に火が通るまで煮て火を止め、そのまま冷ます。※油に浸かっている状態で保存する。
保存/冷蔵で約2週間
【書誌情報】
『暦の手仕事』
中川たま著
逗子在住の人気料理家・中川たまさんが伝える、季節を慈しむ「食」と「暮らし」の手仕事をまとめた写真エッセイです。
伝統を受け継ぎながら、今の暮らしに寄り添った保存食レシピや、季節ごとの心身の整え方など、暮らしを豊かにするヒントが満載です。
中川たま
料理家。神奈川県・逗子で、夫と大学生の娘と暮らす。自然食品店勤務後、ケータリングユニット「にぎにぎ」を経て、2008年に独立。旬の食材を活かしたレシピや、洗練されたスタイリングを書籍や雑誌などで提案している。 地元・逗子を拠点にイベントにも精力的に参加し、ジャムなどの保存食を提供するほか、伝統を受け継ぎながら今の暮らしに寄り添い、季節のエッセンスを加えた手仕事に日々勤しむ。 著書に『一汁二菜の朝ごはん』(成美堂出版)、『暦の手仕事』『旬弁当』『季節の果実をめぐる114の愛で方、食べ方』(すべて日本文芸社)、『私の好きなサラダの食べ方』(グラフィック社)、『たまさんちのおおらかなおやつ』(家の光協会)などがある。