更新日: 2019/10/08
10日8日から10月23日までは寒露(かんろ)。今回の暦のレシピは、菊花寿司です。
制作・文:猪飼牧子 撮影:清水美由紀
10月8日から二十四節気は寒露となりました。空気は澄み渡り、見上げた空は高く、日に日に夜が長くなってきます。
この時季、私たち日本人にとてもなじみのある菊の花が旬を迎えます。今は一年中花屋さんには菊の花が置いてあるので、実際の菊の季節がわかりにくいですが、昼よりも夜が長くなってくると蕾を膨らます短日植物の菊は、本来この時季に咲く花です。
菊の花は「五節句」という祝いの日とも深いつながりがあります。五節句とは、中国から伝わり、江戸時代に制定された祝いの日で、無病息災、子孫繁栄、五穀豊穣などをさまざまな形で祝っていました。
五節句は、「1月7日 人日(じんじつ)の節句」、「3月3日 上巳(じょうし)の節句」、「5月5日 端午(たんご)の節句」、「7月7日 七夕(しちせき)の節句」そして、「9月9日重陽(ちょうよう)の節句」の5つの日。この中の「9月9日 重陽の節句」は「菊の節句」ともいわれ、菊を観賞したり、薬効の高い菊の花の香りを移した菊酒を飲んで長寿を願ったりしたそうです。
古来から薬用や食用としても親しまれ、解熱や解毒作用などから漢方にも多く使われている菊は、節句を祝うおめでたい花でもあるのです。
重陽の節句の9月9日は旧暦。旧暦と1か月差がある新暦では、実際の菊の旬の時季は10月、二十四節気でいうと寒露の頃です。新暦の9月9日頃は菊の旬にはまだ早いため、重陽の節句は、他の節句に比べてあまり注目されることがなくなってしまいました。素敵な風習なのにもったいないですよね。
ちょっと影の薄い重陽の節句ですが、寒露の七十二候「菊花開(きくのはなひらく)」にもちなみ、今回は旬の時季に菊を楽しめる菊花(きっか)寿司のつくり方をご紹介します。
材料(1人分)
写真上段左から
食用菊・・・3〜4つ(菊の花の大きさによって調節)
乾燥菊「もってのほか」・・・1.5g
シソの葉・・・2〜3枚
下段左から
寿司酢・・・小さじ2強
白ごま・・・小さじ1.5
白米・・・100g
今回は生花と乾燥の2種の食用菊を使います。生花はフレッシュな香りと新鮮な歯ごたえを楽しむことができますが、長期の保存には向きません。乾燥菊は生花の香りや歯ごたえにはかないませんが、保存に優れ、必要な量だけその都度使えるのでとても便利です。
※キク科アレルギーの方はお召し上がりにならないでください。万が一、体調に異変を感じた際は、速やかに摂取を中止し、医師に相談してください。
つくり方
1.乾燥菊に酢小さじ1(分量外)を加え、30℃ほどのぬるま湯に漬けて10分〜15分ほど置いておく。
2.食用菊は花弁だけを取り、ほぐす。
3.沸騰した湯に、酢大さじ1(分量外)を加え、花弁を入れてさっと湯がく。
4.すぐに冷水に浸す。
5.1でぬるま湯に漬けておいた乾燥菊と、湯がいた食用菊の両方ともしっかり水を絞る。
6.シソの葉を2ミリ幅のせん切りにする。
7.白米に寿司酢を混ぜ、酢飯をつくる。
8.絞った菊の花びらを、手でほぐしながら酢飯に入れる。ほぐさないと全体を混ぜるときに固まるので注意する。
9.シソの葉と白ごまを加える。
10.全体をよく混ぜる。
11.ラップに包んで両脇を絞り、俵形にする。
12. 器に盛ってでき上がり。
食用菊はあまりなじみがないかもしれませんが、東北や北陸あたりの方はご存じの方も多いかと思います。特に山形県は食用菊の産地として有名です。
今回は黄色と赤紫色の食用菊を使いましたが、黄色の食用菊は、比較的どこのスーパーでも通年販売されています。赤紫色の菊は「もってのほか」といわれる菊で、9月末〜10月になると生花で出回ります。干し菊や菊海苔といわれる乾燥菊は、黄色の食用菊、赤紫色「もってのほか」ともに通年インターネットなどで販売されています。
スーパーで売っている食用菊は量が多くて使い切れない・・・という方も多いかと思います。その場合は、買ってきたら全ての花弁をとって今回のレシピでご紹介したように、湯がいて絞り、タッパーに入れておけば冷蔵庫で1週間は持ちます。小分けにしてラップで包み冷凍保存も可能です。使う場合は自然解凍で、2か月ほどで使い切るようにしましょう。
彩りも美しい菊花寿司は、お弁当にも最適。酢を使っているため傷みにくいので、運動会シーズンのこの時期にぴったりです。曲げわっぱのお弁当箱に詰めたらとってもきれい!食欲をそそります。
みんなで少しずつつまむお弁当なら小さめのお団子状にしても可愛らしいですね。
冷凍や冷蔵保存した菊は、菊花寿司のほかにもいろいろな活用法があります。汁物や煮物の彩りにしたり、そのまま三杯酢や寿司酢を菊にかけたりするだけでも、しゃきしゃきとした歯ごたえがあり、美味しく手軽に食べられますよ。
見た目にも、健康にも良い菊。ぜひ気軽に試してみてくださいね。
NEROLIDOLの猪飼牧子さんとフォトグラファーの清水美由紀さんの連載、「二十四節気 暦のレシピ」は、大幅な新規取材を加えて、書籍『二十四節気 暦のレシピ』としてみなさまにお届けします。
NEROLIDOL(ネロリドール) 猪飼牧子
フラワーアレンジメントやエディブルフラワー(食用花)、アロマテラピー、ハーブなどの植物教室を開催する傍ら、季節の花束、オリジナルブレンドハーブティー、ドライフラワーやプリザーブドフラワーなど本物の植物を使用したアクセサリーの販売などを手がける。植物が姿を変えながらも、生活に寄り添ってくれている「植物のある暮らしと装いを」を伝えている。
ホームページ:http://nerolidol-flower.com
インスタグラム:@ makiko_nerolidol/
清水美由紀
フォトグラファー。生活を感じる旅、暮らしのあれこれ、健やかな食&住が興味の対象。雑誌やWebなどで「LIFE(生活、暮らし、人生)」にまつわる写真を撮影。日本&世界を娘とふたりで旅しながら写真を撮って暮らしている。美しい日常の瞬間を切り取った透明感のある写真は、国内外問わず、多くのファンを魅了している。
ホームページ:https://miyukishimizu.format.com/
インスタグラム:@uriphoto
二十四節気 暦のレシピ 第1話 清明|春の景色をお部屋に運んでくれる、草花のテーブルリース
二十四節気 暦のレシピ 第2話 穀雨|八十八夜にちなんだお菓子、「お茶の葉の練り切りあん」
二十四節気 暦のレシピ 第3話 立夏|麦わら帽子に似合う「ボタニカル・ハットピン」
二十四節気 暦のレシピ 第4話 小満|草花の香り漂う「ベニバナ入りハーブスワッグ」
二十四節気 暦のレシピ 第5話 芒種|2色のハーブでつくる梅酒ゼリー
二十四節気 暦のレシピ 第6話 夏至|半夏生の籠活け
二十四節気 暦のレシピ 第7話 小暑|夏の身体をいたわるアロマバスソルトのつくり方
二十四節気 暦のレシピ 第8話 大暑|夏の土用。ハーブとトマトでさっぱり風味!うなぎパスタのつくり方
二十四節気 暦のレシピ 第9話 立秋|食欲なくてもさらさらいける!茄子と梅干しの冷やし茶漬け
二十四節気 暦のレシピ 第10話 処暑|穀物の実りを感じる月形リース
二十四節気 暦のレシピ 第11話 白露|秋の身体を整えるハーブチンキ
二十四節気 暦のレシピ 第12話 秋分|秋の七草を愛でるフラワーバスケット