更新日: 2017/09/21
撮影:masaco 文:太田明子
英語のつづりがRで終わる4つの月に入ると、今年も残り少なくなって感傷的になります。その一方で野山は美しく色づき始め、季節のゆらぎに呼応するように街角のショーウインドウにはアートなディスプレイが並び、なかにはハッと足を止めてしまうものも。
この時季になると、決まって思い出されるコマーシャルがあります。某ダイエット食品のキャッチコピーでのこんな問いかけ・・・。
気になるのは異性ですか。それとも、同性ですか。
男女どちらの視線が気になるか。私の場合、まちがいなく後者です。なぜなら、同性のほうが目端が利いて手厳しいから。とりわけ、歯に衣着せない目上のシニア世代はとかく誰かをつかまえては何か言いたげな雰囲気。
ある日のこと。スポーツジムで、
「先週、駅前のバス停であなたを見かけたのよ」とあるご婦人が話しかけてきて、その時着ていたブルーのワンピースがよく似合っていた、と盛り立ててくださいます。「いつもきちんとした格好をしてるんだなーって感心したのよ」
いえいえそんな、滅相もない。スエットの上下で図書館まで自転車を走らせる日もしばしばで、忙しい日の私はまるでお粗末なありさま。その日はたまたまそういう格好をしていただけ。冷汗をかきました。
けれど、おかげで少しばかり心境に変化が訪れました。いつ、どこで誰に見られても恥ずかしくない姿勢や装いでいよう、と。それは、人目のためでなく、誰より自分のためのおしゃれを愉しめるように、ほんの少しの余裕をもつこと。好きな服を着ると豊かな気分になって、身のこなしも変わるようです。
折しも、ファッションに心ときめく季節です。おしゃれは、アクセサリー小物を含めたトータルコーディネートがセンスの見せどころ。体型に自信がなくても、あえてウエストをマークするベルトを取り入れて、引き締めるのはまず気持ちから。
『うつくしい組みひもと小物のレシピ』(多田牧子監修)では、組ひもで飾りベルトをつくってみましょうとアプローチ。丸台を用いて笹波組と呼ばれる矢羽根模様ができる組み方が掲載されています。
お気に入りの服に合わせて糸の色選びからスタートするので、あれこれ迷うプロセスもテンションが上がります。周りの人の着こなしを見たり、本や雑誌をチェックしたりしている間に、いつのまにか、おしゃれをルーティンにしているアナタがいるはず。そのうえアクセサリーがお手製なんて言うことなし、愛着もひとしおです。だってワン・アンド・オンリー、誰も持っていないんですから。ちょっとしたオートクチュール感が味わえちゃうかもしれません。
同性の誰かさんから、「どこで買ったの?」なんてセリフが聞こえてきたら、最高にゴキゲンですね。
写真は『うつくしい組ひもと小物のレシピ』より。
太田明子
神戸市生まれ。幼少期の一部を横浜市で、思春期の大半を宮崎県延岡市で過ごす。出版社勤務を経て、フリーランスの記者に。学生時代から好奇心の赴くまま国内外を旅する。1992年『そよそよ族の南米大陸』で第11回潮賞ノンフィクション部門優秀作受賞。座右の銘は、「おもしろき こともなき世を おもしろく」。現在、家族とともに鎌倉市在住。