更新日: 2019/03/19
12回にわたってお届けしてきた「大人の家庭科」も、いよいよ最終回。知っておくと便利なこと、覚えておきたい道具の使い方など、もりだくさんでお届けします。
文:安田由美子(針仕事研究家 NEEDLEWORK LAB) 撮影:天野憲仁(日本文芸社)
「素材と道具の物語」や「大人の家庭科」では本にはあまり載ってないようなちょっと変わったやり方もご紹介してきました。洋裁・和裁から、刺繍、編みもの、レザークラフト、料理やお菓子づくりまで、他の分野で普通にやっていることが、別の分野でも役に立つヒントになることがあります。最終回はそんな分野を超えて思いついた便利なことや覚えておきたい道具の使い方などをお話します。
私は、長年の洋裁の仕事でミシン糸をたくさん持っています。ある程度多くなると、ボビンと別々に保管した場合は探すだけで時間がかかってしまうので、ボビンキャッチャーという道具を使っています。
▲写真右下の白と青の道具がボビンキャッチャー。大きい方をミシン糸の穴に、小さい方をボビンの穴に差し込んでとめる。ミシン糸の色番号をボピンに書いておくと便利。左下の緑の道具は、大きな巻きのミシン糸をとめるときに使うキャッチアダプター。
▲家庭用のミシン糸とボビンキャッチャー、大きな巻きのコーン巻きミシン糸はキャッチアダプターとボビンキャッチャーを取りつけてからボビンを差し込む。
ボビンに巻いた糸が出てきてぐずぐずにならないように、ホースを切ったものをはめています。試行錯誤の末、30年くらい前にこの方法を思いついてボビンの糸がすっきりしました。
▲ホームセンターで切り売りされている透明のホースに切り込みを入れ、ボビンの幅に切ったもの。
糸は引き出しに入れてホコリにならないように引き出しに入れて並べてあるので、一目瞭然です。絹のミシン糸は、光が当たらないように、湿気を吸わないように桐の箱で保管しています。ポリエステルの糸は長持ちしますが、絹糸は経年劣化するので早めに使い終わるようにします。
▲桐の箱に入れた絹ミシン糸。
▲ポリエステルの糸は透明の浅い引き出しに色が見えるように並べて収納。
針に糸を通すとき、向こう側が黒っぽいと針穴がよく見えませんね。だから、白っぽいものの前で通すことが多いと思います。でも、黄色いものの前に針穴を持ってくるとよく見えます。だから、針刺しを黄色にしておくとか、黄色い折り紙を一枚、裁縫箱に入れておくと便利です。
教員になってすぐの頃、授業で切りじつけを教えるときにはしつけ糸をたくさん針につけて用意しておかなくてはいけませんでした。からまらずにすぐ使えるように、だらんと伸ばさないでピンクッションにつけておくやり方を先輩から教えてもらいました。しつけ糸を針に通して用意しておくときに便利です。
▲しつけ糸がたくさん必要なときは、あらかじめ針と糸を何本か用意し、からまらないようにピンクッションに刺しておく。
▲この状態でピンクッションに刺しておけば、針をはずして、すぐに使え、からまることもない。
▲針をつまんでしつけ糸を8の字になるように巻いていくとしつけ糸がころんとした形で収まる。
アイロンは、その都度プラグを抜き差しするのが安全です。抜くときはコード部分に負荷がかからないよう、プラグをきちんと指で挟むようにします。決してコードを引っぱったりしてはいけません。この指で挟む動作も、差したり抜いたりするときに硬かったりすると、億劫になってしまいます。プラグの先に便利道具をつけることによって、力を入れずに安全に抜くことができ、コードとの接続部分が傷むことを防ぎます。
▲プラグが抜き差ししやすくなる補助用品。力がいらないので、抜き差しが億劫にならない。
ミシンは長く使わないと可動部分が固まってしまいます。ときどき動かした方がいいので、しまわずに出しておくのが長く使うコツではないでしょうか。私のミシンもロックミシンもすぐ使えるように出してあります。ときどき油を差して動かして手入れしながら30年以上使っています。
ミシンを出しっぱなしにしておくときは、コンセントとプラグの間にスイッチつきのコンセントを利用すると便利です。使うときはそのスイッチをONにするだけで、プラグを差し込んだのと同じになり、OFFにすれば、プラグをわざわざ抜かなくてもよいからです。
▲スイッチつきのコンセント。コンセントとプラグの間にはほこりを入れないよう、プラグ安全カバーを間に挟んだり、使わないコンセントにはコンセントキャップをしておくと安全。
ただし、プラグを差しっぱなしにしておくと、その隙間にホコリがたまり、そのホコリが空気中の湿気を吸って漏電して発火する、トラッキング現象を起こすことがあります。定期的に掃除するようにしましょう。
長く使っているとミシンのフットコントローラーもアイロンもコードが傷むことがあります。その原因のひとつは、コードを巻きつけて収納してしまうことにあるように思います。束ねる道具を使ったりして、きちんと留めるようにしましょう。
▲フットコントローラーのコードは、本体に巻きつけずに、コードだけで束ねておく。
▲コードを本体に巻きつけると、コードの中で断線したり、フットコントローラーの故障の原因になる。
束ねる道具がない場合は、コードを途中まで巻いてコードそのもので留めることもできます。この方法は、教員時代、ミシンの修理を専門にしている方に教わりました。今でもヘアアイロンやドライヤーなどのコードの処理に大いに役立っています。
▲束ねる道具を使わない方法。ミシンとの接続部分から束ねて、フットコントローラーから少し離れたところまで束ねる。残っているコードを続けて束ねる。それを芯にして残りのコードで巻き、プラグを輪の部分に通して留める。コードのどの部分にも負荷がかからないように、折れ曲がったりしないように注意する。
全12回に渡ってお届けした「大人の家庭科」、参考になりましたでしょうか?指ぬきや布を切る道具、運針やしつけの方法など、覚えておくときっと役に立ちますよ。日々のお裁縫がいっそう楽しくなることを願って。
安田由美子
針仕事研究家。文化服装学院で洋裁とデザインを学び、卒業後は同学院の教員として勤務。現在は洋服や刺繍作品のデザインとつくり方を手芸書に発表し、フランス手芸書の日本語版の監修も行っている。「つくりら」のコラム「素材と道具の物語」に執筆中。2017年11月に『はじめてでもきれいに刺せる 刺しゅうの基礎』(日本文芸社刊)を出版。10年続くブログ「もったいないかあさんのお針仕事 NEEDLEWORK LAB」では手芸書を中心に幅広く手芸の情報を発信している。http://mottainaimama.blog96.fc2.com/