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第10回 作品の仕上げ方(後編)|紫外線対策にはUVカットのアクリルケースが、湿気対策には桐箱での保管がおすすめです。

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前編では、刺繍やレース編み、ニット作品の仕上げ方についてお話しました。後編は、作品の保存方法についてです。

「大人の家庭科」の連載記事
第1回 指ぬきとシンブル(前編)
第2回 運針(前編)
第3回 まつり縫い(前編)
第4回 布を切る道具(前編)
第5回 製図の道具(前編)
第6回 しつけ糸としつけの方法(前編)
第7回 待ち針とクリップ(前編)
第8回 ほどくということ(前編)
第9回 アイロンの種類とかけ方(前編)
第10回 作品の仕上げ方(前編)|ほつれや破れを未然に防ぐのが「力布」や「力ボタン」。「虫食い」や「かぎ裂き」を直すには、アイロン接着の樹脂シートが手軽で便利です。
第11回 繕うということ(前編)
第12回 雑巾の話(前編)

文:安田由美子(針仕事研究家 NEEDLEWORK LAB) 撮影:天野憲仁(日本文芸社)

作品をつくり終えたら、お部屋に飾ったりして暮らしのなかで楽しむ人もいらっしゃると思いますが、クロスステッチなどは意外と刺したら仕立てず、箱にしまっておく方も多いそうです。飾るにしても、しまっておくにしても、紫外線や湿気などを避けて、作品がいつまでもきれいな状態でいられるようにしておきたいですね。

 

作品は清潔に保ち、紫外線対策をしっかりと

前編の仕上げの話にも書きましたように、汚れがついていると、カビや変色の原因になります。保管する場合は汚さないように扱い、汚れていたら洗ってよく乾燥させて保管しましょう。

お部屋に飾るときに大切なのが紫外線対策です。作品に直射日光が当たらなくても、部屋の中まで紫外線は入ってきます。紫外線カットのレースのカーテンがあっても、作品の生地は変色してしまったことがありました。

下の写真は、額に入れて長らく飾っておいた作品。額の裏側になっていた四隅の生地の色が元の色。ずいぶん色が褪せてしまったことがわかります。


▲額の中で変色してしまった刺繍作品。

窓に紫外線カットのシートの貼ってある部屋に置いてあるものはそれほど変色していません。ですから、どうしても日焼け・色褪せをさせたくない場合は、紫外線カットのアクリル板でカバーするなど、ちょっと手をかけてあげるといいですね。


▲UVカットのアクリルボックス 20×20×20㎝

 

湿気対策も大切。保管には桐箱がおすすめ

生地などは湿気のあるところ、空気が流れないようなところに置いておくと、カビが生えたり、シミができたりします。一度ついてしまうとなかなか簡単には取れません。

夏になると高温多湿になる日本においては、やはり桐の箱や桐のタンスで保管するのが望ましいと思っています。そうできない場合は除湿剤を一緒に入れたり、部屋の中でも上のほうに置いておくなど注意するといいでしょう。また、湿気がないと思われる場所でも長期間そのままにしておかず、空気の乾燥した時期には風を通してあげるといいですね。


▲桐の箱いろいろ。草履とバッグの入っていた箱、そうめんの入っていた箱、風呂敷の入っていた箱など。左下はシート状のシリカゲル。

 

防虫剤は種類の違うものを一緒に入れない

ウールは虫の害も受けやすい素材です。他の繊維でも食べ物のようなもので汚れていると虫の害を受けることがあります。きれいにしてから保管します。紫外線が当たらないからといって夜に洗って干しておくと虫が卵を産んだりすることもあるので、注意が必要です。念のためアイロンをかけてからしまうようにしましょう。防虫剤は種類の違うものを入れると溶けて作品を汚すことがあるので注意が必要です。

絹はとくに日焼けに注意します。また、白い絹は長い年月を経ると、きちんと保管しておいても、もともとの絹の色に戻っていく性質があります。そういうものだと認識して、しまってばかりおかずに、暮らしのなかで飾ったり、使ったりしていくといいですね。

 

金糸・銀糸の刺繍は薄紙に包んでおく

着物をお持ちの方はご存じかと思いますが、着つけのゴム製品や輪ゴムなどが一緒に保管されていると、ゴム自体が時間と共に溶け出してしまうだけでなく、金糸・銀糸の刺繡糸が変色してしまうことがあるので注意しましょう。また、金糸・銀糸・絹糸の刺繍がしてあるものは、刺繍の面同士で重なって摩擦で傷めてしまうことのないように薄紙を挟んでしまっておくようにします。


▲金糸の刺繍の着物と薄紙。

作品の保存方法のお話、いかがだったでしょうか。前編では刺繍やレース編み、ニット作品を美しく仕上げる方法について、動画も交えて解説していますので、こちらも合わせてご覧ください。

 

 

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