更新日: 2018/11/27
縫い方同様、ほどき方についても知っておくと、お裁縫がもっと楽しくなります。針仕事研究家の安田由美子さんの「大人の家庭科」、今回は、ほどくということについてのお話です。
文:安田由美子(針仕事研究家 NEEDLEWORK LAB) 撮影:天野憲仁(日本文芸社)
目打ち、小ばさみ、リッパーなど、ほどくための道具はいろいろあります。眉用カミソリなども使えます。
道具というのはそれぞれよい点、悪い点があり、人によって使い勝手も違います。ある人にとってはこの上なく使いやすい道具でも、別の人にとっては使いにくい、ということもあります。試してみて、また、練習して上手に使える道具を使ってください。
▲左から、先の尖った目打(クロバー)、目打ち(BUNKA)、先丸の目打(クロバー Nなめらか目打)、先丸目打ち(チューリップ クッショングリップ付き先丸目打ちM)、ボールポイント目打(クロバー)、カーブ目打(クロバー)
▲目打ちの先端。左から、先の尖った目打(クロバー)、目打ち(BUNKA)、先丸の目打(クロバー Nなめらか目打)、先丸目打ち(チューリップ クッショングリップ付き先丸目打ちM)、ボールポイント目打(クロバー)、カーブ目打(クロバー)
目打ち
先の尖った目打ちはミシンの針目に簡単に入り、奥まで押し込んで糸を切ることもできますし、引き抜くこともできます。でも、刃がなく、側面は丸いので、布を切ってしまったり、傷つけたりすることがありません。うまく一気に引き抜けば、早くほどくこともできます。初めて使う方でも扱いやすい道具だと思います。ミシンをかけるときなどほかの作業でも使う場面がたくさんあるので、品質の良いものを1本持つとよいですね。品質が良くないと生地を傷めたり、先が曲がってしまうこともあります。
カーブ目打ち
メーカーでは洋裁用具の部類に入っているようなのですが、私は刺繍でほどくときに活用しています。先端のカーブに糸がうまく引っかかってほどけるのです。先が丸いため、生地を傷めません。
小ばさみや刺繍ばさみ
小ばさみは、にぎりばさみ、糸切りばさみともいうように、糸を切るのに都合がよく、先が尖っています。これが尖っていない、あるいは先がうまく重ならない場合は上手にほどけませんので、尖っていて、先の切れ味がよいことが大事です。
▲左から、小ばさみ(BUNKAすみれ【イブシ】)、スプリングバネ化粧はさみ【反り刃】、キューティクルシザー【反り刃】、刺繍ばさみ【コウノトリ】、刺繍ばさみ【クジャク】
小ばさみは、先が尖っているので、針目に刃を差し込んで切ることができます。また、刃と刃を合わせて「はさみ」として切ることもできますし、刃が鋭いので、ナイフのように刃を押し当てて切ることもできます。また、縫い合わされた布を開いてその間のゆるんだ糸を切っていくこともできます。本来の用途ではありませんが、甘皮などを切るはさみも、刃が薄く尖っていて切れ味がいいので、同じように使えます。
リッパー
別の用途としてボタンホールを開けることもできるリッパーですが、本来の仕事はほどくこと。先端は目打ちのように尖っていて、奥には糸が切れる刃がついています。
学校で洋裁を教えていたとき、リッパーで失敗して布を切ってしまう学生を少なからず見てきました。楽にほどけるとても良い道具なのですが、うっかり布まで切ってしまうことも多いのも事実。確実に糸だけ切れるような使い方をマスターしてから使うのがおすすめです。
▲左から、リッパー(クロバー)、黒羽志寿子オリジナルリッパー(左はそのまま、右は革を貼って持ちやすくしたもの)、眉そり用カミソリ
眉用カミソリやカーブした刃の道具
布と布の間を広げて、間に渡っている縫い糸を切るのに使います。布を切ることはないとは言い切れませんが、リッパーの逆で、もしかしたら切れちゃうかも、と気をつけて使うせいか、意外と布を切ってしまうことは少ないです。手早くほどくことができるので、古着のリメイクなどでバンバンほどいていきたい!というようなときに使うと便利です。カーブした刃のナイフは革で持ち手部分を持ちやすくしてから使っています。
ほどくときは糸くずがたくさん出ます。ポリエステルの糸などは静電気で指にくっついてしまうこともあります。そんなときは、ガムテープやコロコロする粘着テープで取ると楽に取れます。もちろん、粘着テープを使うと毛羽立ってしまうデリケートな生地には向きません。取っ手つきのクリーナーは個人的には縦型のものが使いやすいと思っています。くい込んでしまって取れないようなときは、毛抜きを使うと取りやすいです。
▲上段は衣類用クリーナー(無印良品)、下段・左よりガムテープ、毛抜き
▲布にくい込んでしまった糸は毛抜きを使うと取りやすい。
後編では、手縫い、ミシン縫い、刺繍のほどき方についてお話します。
安田由美子
針仕事研究家。文化服装学院で洋裁とデザインを学び、卒業後は同学院の教員として勤務。現在は洋服や刺繍作品のデザインとつくり方を手芸書に発表し、フランス手芸書の日本語版の監修も行っている。「つくりら」のコラム「素材と道具の物語」に執筆中。2017年11月に『はじめてでもきれいに刺せる 刺しゅうの基礎』(日本文芸社刊)を出版。10年続くブログ「もったいないかあさんのお針仕事 NEEDLEWORK LAB」では手芸書を中心に幅広く手芸の情報を発信している。http://mottainaimama.blog96.fc2.com/
第7回 待ち針とクリップ(前編)|長さ28mmの待ち針がミシンにも手縫いにも小物づくりにもちょうどいいです。
第7回 待ち針とクリップ(後編)|待ち針は、両端、真ん中、そしてその中間、と打っていくと、均等に打つことができます。
第6回 しつけ糸としつけの方法(前編)|1本持つなら、カセの綿しつけ糸「しろも」がダンゼンおすすめ。同じ長さに揃えておけば作業もはかどります。
第6回 しつけ糸としつけの方法(後編)|布がずれにくい「置きじつけ」、印つけ用の「切りじつけ」など、覚えておくと制作スピードと仕上がりに差が出ます。
第5回 製図の道具(前編)|型紙をつくるときは、細くて濃い線が描ける筆記具を選びます。鉛筆なら「HB」よりは硬いものがおすすめです。
第5回 製図の道具(後編)|いちばん使う方眼定規は50cm。小回りの利く30㎝、少し長い60cmも揃えておくと作業がはかどります。
第4回 布を切る道具(前編)|糸は糸、布は布。それぞれに使い勝手のいいはさみを揃えるのが、お裁縫が好きになるひとつの方法です。
第4回 布を切る道具(後編)|ロータリーカッターは、厚い生地や直線には直径45㎜、袖ぐり、衿ぐりのカーブには28㎜が便利です。