更新日: 2018/10/31
前編では、待ち針の種類についてご紹介しました。後編では、待ち針の打ち方、待ち針以外の止める用具、安全ピンやクリップについてお話します。
文:安田由美子(針仕事研究家 NEEDLEWORK LAB) 撮影:天野憲仁(日本文芸社)
待ち針の打ち方がよくないと布がずれてしまうこともあります。打ち方の基本は小さくすくうことです。そして、縫い線に直角に打ちます。このとき、縫い代より針がたくさんはみ出ていると、針の先が出ていて危ないので、縫い代から出てない方が作業しやすいです。
▲左から、基本的な打ち方、ミシンをかけるときに右手で針を抜きたい場合の打ち方、以降、悪い例5点は左から順に、広くすくいすぎている、でき上がり線に対して垂直になっていない、針の先が裁ち端からはみ出している、縫う方向に刺してしまっている。
待ち針を打つ順番も大事です。端からとめていくのではなく、両端、真ん中、そしてその中間、と打っていくと、均等に打つことができます。
(動画)待ち針を打つ順番
待ち針がはずれにくいといいなと思ったことはありませんか?縫い物では安全ピンも待ち針の仲間です。つけっぱなしにできる待ち針と考えるとよいでしょう。
▲安全ピン。布に合わせて大きさを選ぶ。
待ち針が使いにくい素材にはクリップを使うといいですね。ラミネート生地、厚手の布、ボアや、ファーなどの毛足の長い生地、革など針では都合のよくないものに向きます。硬かったり、厚くて針が打てなかったり、穴の跡が付いてしまうと困るものも多いです。また、スライサー芯のようなシール状のものが貼ってあるときなど、針を通すとべたついてしまうときでも、クリップで挟むだけなら大丈夫ですね。
▲待ち針では針穴の跡が残ったりする革のような素材にはクリップが便利。
クリップは編み物にも使えます。袖や脇の接ぎでクリップを使うと楽ですよ。小物を縫うときもいいですし、試しに組み立てるのに針を使うと針だらけになってしまうところを、クリップで仮止めして形を見てみるなど、いろいろに使えます。
今のようにソーイング向けの使いやすいものは開発されてなかったころは、洗濯ばさみや文房具のダブルクリップや目玉クリップを使っていました。でも、そこは本来の用途とは違うので、つまみ部分が大きくてちょっとやりにくかったり、針金部分に織り糸が引っかかってしまったりすることもあります。
ソーイング用に開発されたクリップはフラットな形状で作業のじゃまにならなくていいですね。もちろん文房具用の金属やプラスチックのクリップも、バチ型などいろいろな種類が出ていますので、布を挟むのに使いやすいものを選びましょう。
▲上段・左から:洗濯ばさみ、ミニ洗濯ばさみ2種、ダブルクリップ2種、中段・左から:プラスチック製クリップ2種、目玉クリップ、プラスチック製クリップ2種、下段・左から:ミニ洗濯ばさみ、バチ型クリップ、ミニ・プラスチック製クリップ2種、動物モチーフのクリップ2種
色は、透明なものや目立たない色のもの、カラフルなものなどあります。目立つ色なら忘れずに取り外すことができます。透明や目立たない色のものはつけていても目立たないので、ちょっと着て、つまんで様子を見たりするときにはカラフルでない方が、見たとき余計な色が入ってこないのでイメージがつかみやすいです。
▲左:カラフルなクリップ。目立つので縫いやすい。右:透明、白、グレーなど、目立たない色のクリップは、仮縫いのときにイメージが伝わりやすい。
小さいものは細かい部分や小物を縫うときに便利です。小さくてもしっかりつかめる工夫がしてあります。ボアの生地でぬいぐるみなどつくるときなどには最適です。
挟む部分が長いタイプのものは、奥の方を挟むのに便利です。スカートやパンツの裾、袖口など、縫い代幅の広いところに役立ちます。バッグの持ち手やテープを押さえておいたり、袋口の見返しなど布端から離れた奥の方を押さえたいときにも重宝します。
▲ソーイング用のクリップ。左から:ミニ、普通、ロング。
▲バッグの袋口などで奥を縫うときにロングタイプを使う。
ロックミシンは、布端を裁断ながらかがっていくミシンです。近年はロックミシンの本も多く出るようになり、ロックミシンだけでつくれる服のお教室も全国各地にあります。こういうミシンでは待ち針など使わずに縫っていくほうがよいのです。もし待ち針が刃に当たってしまうと、針だけでなくミシンを傷めたりします。慣れなくてどうしてもとめるものが使いたいときは、待ち針の代わりにクリップなら、大きいので間違って縫い進めてしまうことはありません。
ソーイング用のクリップは、クリップ本来の使い方、まとめておく、という目的としても便利です。布をしっかりつかむ、しかも傷めないというのは、洗濯ばさみや金属のクリップではできないときもあります。洋裁で型紙と一緒にはさんでおいたり、パッチワークのパーツなど挟んでおくのにもぴったりです。
▲端切れなどを色別、柄別などにまとめておきたいときにも便利。
安田由美子
針仕事研究家。文化服装学院で洋裁とデザインを学び、卒業後は同学院の教員として勤務。現在は洋服や刺繍作品のデザインとつくり方を手芸書に発表し、フランス手芸書の日本語版の監修も行っている。「つくりら」のコラム「素材と道具の物語」に執筆中。2017年11月に『はじめてでもきれいに刺せる 刺しゅうの基礎』(日本文芸社刊)を出版。10年続くブログ「もったいないかあさんのお針仕事 NEEDLEWORK LAB」では手芸書を中心に幅広く手芸の情報を発信している。http://mottainaimama.blog96.fc2.com/