更新日: 2018/08/13
前編では、製図の道具として、鉛筆や芯ホルダーなどをご紹介しました。後編は定規についてお話しします。
文:安田由美子(針仕事研究家 NEEDLEWORK LAB) 撮影:天野憲仁(日本文芸社)
定規というとたくさんの種類があります。一度にあれこれ買わずに、自分のつくるものに合わせて必要だと思ったら買い足していくといいでしょう。
定規の値段は信じられないくらい安いのもあります。私は、ロールケーキを巻くときにプラスチックの定規みたいな板が必要だったのですごく安い50㎝の定規を買ってみたことがあります。それでちょっと線を引いてみたのですが、25㎝までは目盛りは合っていたものの、そこから50㎝の目盛りまでは数㎜長かったです。テンプレートなどでも正確でないものやバリが出ているものなど、製図に向かない品質のものもあります。見た目は似ていても、定規の硬さ、しなり具合など使い勝手がまるで違うものもありますので、注意して選びましょう。
▲上から「BUNKA」方眼定規30㎝、50㎝、ライン入り方眼定規50㎝、60㎝。他に40㎝のものも販売されている。緑のライン入りは濃い色の上でも文字が読みやすい。一番下は「BUNKA」L方眼定規 方眼定規とカーブ尺と分度器の機能が1本にまとまっている。
私がいちばん使うのは赤い線で縦横に線の描かれている50㎝の方眼定規です。学生時代から使っている定規もまだ健在で、大事に使えば長持ちします。この定規の目盛りは、何層にも重なった塩ビ板の内側面に印刷されているので、布や紙でこすれても消えないのがいいです。さらに、手で軽く曲げることができるので、きつすぎないカーブであれば、定規でカーブを測ることができます。
▲手で定規を曲げてカーブを測ることができる。
30㎝の定規は、縫いしろ付きパターンなどをつくる際、小回りが利きますし、小さい部分を書くのに便利です。60㎝のものは、50㎝よりほんの10㎝長いというだけで、長い部分を書くのに便利に使えます。
それより長いたとえば1mくらいの長い線を描く場合は、長い金属の定規や竹の定規などで書いてもいいのですけど、重かったり、不透明だったりして、線を描くのには少し不便を感じます。長い線は方眼定規2本を組み合わせて使う方が、長いものを別に買うより使いいいように思います。
方眼定規は透明で内側にも方眼の線があることでいろいろ便利に使えます。まず、直線を引いたらそれに平行な線を簡単に引くことができます。縫いしろ付きパターンの線も効率的に引けます。また、先に引いた線に90°向きを変えて載せるだけで直角に交わった線が引けます。同じように定規を傾けて、同寸の縦横の目盛りを合わせれば、三角定規がなくても45°の角度の線をひくこともできます。
洋服の曲線を描くのに適した定規があります。
▲上から、アームホールルーラー(文化学園購買部)、岡市 雲形定規 (アンタレス)、Hカーブルーラー、Dカーブルーラー(文化学園購買部)
Hカーブルーラーの「H」は「Hip」の頭文字からとっています。スカートの脇のゆるいカーブなどが上手に描けます。袖ぐりや衿ぐり、股ぐりなど、ヒップのカーブに比べてきつい曲線を描くところにはDカーブルーラー。「D」は「Deep」のDです。洋裁用の雲形定規はHカーブルーラーとDカーブルーラーのようなカーブのほかにも洋裁の製図で使われるあらゆるカーブが含まれています。
L方眼定規は、方眼定規とHカーブルーラーと直角定規にさらに分度器もついています。アームホールルーラーは前後のバランスの良い袖ぐりがつながりよく手早く描けるように工夫されています。
カッターやロータリーカッターを定規に当てて布や型紙を切るような場合は、製図用の定規を使うと削れたり、傷がついていい線が描けなくなってしまいます。切るときはステンレスエッジのついている定規などを使います。カッターのための定規で製図をすると厚みがありすぎたりして使い勝手が悪いので、別のものと考えて使い分けるとよいでしょう。
▲ステンレスエッジのついている定規。
いいパターンの曲線はフリーハンドで、と教わりました。定規に頼っちゃいけないと。最初からいい線が見極められればよいのですが、なかなかそうはいきません。腕のよいパタンナーさんがつくったいいパターンをたくさん見ているうちに、何が、どう、いい線なのか、わかってきます。まずは、いいパターンを選んで写すのも勉強かと思います。
Dカーブルーラーなどの定規を使う場合は、定規のちょうどいい部分を選びながら描いたり写したりします。
直線の定規を使って曲線を描く場合は、少し練習しましょう。定規を当てて、少し線を引いたら動かし、また少し線を引いたら動かすという動作で曲線を描いていきます。
直線の定規を使って曲線を引く方法
定規などの道具類はケースに入れて保管しましょう。直射日光に当てておいたり、傷をつけたり、欠けたりしないようにしておきます。長い定規などは立てかけておいたりすると曲がったくせなどがついてしまいます。いつでも正確でよい線が描けるよう、保管にも気をつけましょう。
安田由美子
針仕事研究家。文化服装学院で洋裁とデザインを学び、卒業後は同学院の教員として勤務。現在は洋服や刺繍作品のデザインとつくり方を手芸書に発表し、フランス手芸書の日本語版の監修も行っている。「つくりら」のコラム「素材と道具の物語」に執筆中。2017年11月に『はじめてでもきれいに刺せる 刺しゅうの基礎』(日本文芸社刊)を出版。10年続くブログ「もったいないかあさんのお針仕事 NEEDLEWORK LAB」では手芸書を中心に幅広く手芸の情報を発信している。http://mottainaimama.blog96.fc2.com/