日本の古裂に魅せられて。からむし作家・ますみえりこさんの展示会「祈りにも似た布」2020.9.5(Sat)-9.13(Sun) 名古屋

写真協力:則武有里(Tisane infusion) 文:つくりら編集部

『Flower Noritake フラワーノリタケの花々』の共著者、則武有里さんは、アンティークや古道具、雑貨を扱うショップ、Tisane infusion(ティザーヌ・インフュージョン)を営んでいます。つくりらでは、フラワーノリタケの則武潤二さんとともに「花とアンティークと」の連載を担当してくれました。

Tisane infusionでは、年間を通じて企画展を行なっています。古いものを慈しむ有里さんが企画する展示会は、毎回、本当に楽しみなのですが、9月には、からむし作家、ますみえりこさんの展示会「祈りにも似た布」が開催されると知り、古い布の魅力とますみさんの作品についてお話を伺いました。

 

骨董と同じくらい魅力的な日本の古裂

「日本の古裂に触れていると、他の国とは比べることができないあたたかい糸味を感じます。天然素材を利用した布づくりでは、日本ほど布地を無駄なく使った国はありません。着古した着物は羽織になり、寝間着になり、やがては布団地へと用途を変えて大事に使い続けられました。使い古された布のお直しは、まるで現代作家のパッチワークのようです」(有里さん)

古裂に魅了され、美しい大麻布の糸束を仕入れたことが、天然素材の糸や布への興味をさらに後押しします。

一般に麻やリネンという言葉で親しまれているのは、クワ科の大麻(たいま・ヘンプ)とイラクサ科の苧麻(からむし・ちょま・ラミー)を指すことが多いそう。「この2つの麻は、木綿が普及する前から栽培・採取され、気の遠くなる時間と労力で繊維をとり出し、長い糸になります。この作業を『糸績み』と呼ぶのですが、この糸績みのプロセスを体験しているつくり手に展示をしてもらいたいと思い、作家を探していました」(有里さん)

そこで出会ったのが、からむし作家、ますみえりこさんです。

 

伝統を継承し、新しい解釈でかたちにする

天然素材の苧麻は、昔から人々の暮らしに寄り添ってきた植物。麻の素材でものづくりをする作家は多いのですが、苧麻でつくる作家は少ないのだそう。

ますみさんは、福島県昭和村の「織姫体験生制度」で、10年ほど、苧麻の畑から繊維を取り出す作業をしていました。畑を管理してくれていたおばあちゃんが亡くなってからは、苧麻の原麻(糸になる繊維の状態)を村から購入して糸をつくるところから制作しています。

「苧麻の全行程に向き合い、糸を績み、布を織り、かたちにしている。そんなますみさんにぜひ、展示を開催してほしいと思いました。糸や布が、ますみさんの手を通して伝統を継承しつつ、新しい解釈でかたちに仕上っているところが魅力です」(有里さん)

展示では、蚊帳のバッグとオブジェ、170cm四方の大きな布などが並ぶそう。「いつもは1種類のタイプしかつくらないのですが、今回は太い糸でざっくり織った布、細い糸で繊細に織った布が並びます」

展示タイトルは「祈りにも似た布」。ますみさんが糸を績む姿を見たある人が「祈りにも似た静かな所作から生まれる草の糸」と表したというエピソートから名づけられたもの。静かな空気がたゆたうTisane infusionの空間で、その布が、その糸が、いったいどんな表情を見せてくれるのか、楽しみでなりません。

からむし作家・ますみえりこさんの展示会「祈りにも似た布」

期間: 2020.9.5(Sat)-9.13(Sun)
時間: 11:00〜18:00 *木曜日休
場所:Tisane infusion
〒461-0005 名古屋市東区東桜1-10-3 7F
問い合わせ先:tel: 052-951-7117(Tisane infusion)
http://www.flower-noritake.com/

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