ハーブ入りの花氷で涼を呼ぶ。『二十四節気 暦のレシピ』は暮らしを快適にするアイデアの宝庫 

7月に出版された『二十四節気 暦のレシピ』は、フラワーアレンジメント、料理におやつ、ハーブとアロマなど、植物と暮らすアイデアとレシピが満載の本。そのみどころと制作秘話を編集担当者が綴ります。

撮影:清水美由紀、天野憲仁(日本文芸社) 文:つくりら編集部

長い梅雨がやっと明けたと思ったら、いきなりの猛暑。とくに今年は、新型コロナウイルスと熱中症のダブル対策が求められる、試練の夏となりました。

フローリストの猪飼牧子さんとフォトグラファーの清水美由紀さんは、毎日を快適に過ごすために、植物の力を取り入れて暮らしています。彼女たちの初の共著、『二十四節気 暦のレシピ』は、植物と暮らす“実践方法”がたっぷり詰まった本。

 

おもてなしにぴったりの花氷

たとえば、夏の小暑の節では、見ためも涼しげな花氷のつくり方を紹介しています。

ハーブとエディブルフラワーを閉じ込めた華やかな花氷は、サマーパーティーにもぴったり。夏休みの自由研究として子どもたちと一緒につくってもいいですね。

 

精油でつくる虫除けスプレー

夏休みは人混みを避けて山や海に出かける方も多いでしょう。アウトドアレジャーの必需品といえば、虫除けスプレー。こちらもアロマの力が大活躍!蚊を寄せつけないペパーミントやハッカなどの精油が威力を発揮します。『二十四節気 暦のレシピ』では、この虫除けスプレーのつくり方も紹介。煮沸消毒をした遮光瓶に無水エタノール5mlを入れ、好みの精油を10滴垂らし、精製水45mlを加えたら完成、という手軽さです。

・・・と、こんな具合に、『二十四節気 暦のレシピ』には、暮らしに役立つ手軽なアイデアが、なんと120も掲載されています。

 

アイデアの源は猪飼さんの「植物教室」

著者の一人、猪飼さんは東京・下北沢で植物教室を開いています。猪飼さんのホームページをのぞくと、毎月、趣向を凝らしたレッスンを開催していて、しかもそのラインナップの豊富さにびっくり。つくりらの取材でスワッグづくりの教室に参加させていただいたときは、スワッグづくりに加えて、「二十四節気」のミニレクチャーがあったり、ブーケガルニをつくったり。フィナーレは参加者全員でつくったフローズンヨーグルトを食べて、おしゃべりに花が咲く・・。まさに大・大・大満足の教室で、帰り道はほくほくでした。

このときに一緒につくらせてもらったフローズンヨーグルトのレシピも、『二十四節気 暦のレシピ』にしっかり掲載されています。

その季節にみんながつくりたくなるようなレシピを開発し、何度も試作を重ねて植物教室に臨む猪飼さん。年間を通じて、少人数のワークショップスタイルの教室をコツコツと積み上げていくのは、とても根気のいること。著書に収録された120のアイデアとレシピは、この“コツコツ”の賜物なのです。一朝一夕には成し得ない、バラエティに富んだ内容のルーツがここにあります。


▲2020年7月。東京・銀座の森岡書店さんで開催された出版記念の作品展では、『二十四節気 暦のレシピ』に登場した写真をコラージュしたハンカチーフも販売。つくりらのインスタライブで説明する猪飼さん。

 

長野県・松本の自然の風景に癒される

『二十四節気 暦のレシピ』は、全ページ、清水さんが撮影。二十四節気や歳時記をテーマにした本は、イラストで説明するものが多いなか、季節の移り変わりを写真で見せているこの本はかなりの異例。このすご技が実現できたのは、清水さんが長い年月をかけて撮り続けてきた写真があったからこそ。ここでは、清水さんの“コツコツ”が形になりました。

たとえば、寒露の節の写真。この柿は清水さんのお母さまが干したものだそう。天日に吊るされ、どこか誇らしげにゆらめく柿は、まさに日本の原風景。この光景に秋の到来を実感する人も多いはず。

「雨が降ってもイヤな気分になりません。自然のささいな変化に心が動かされます」。出版記念の作品展のとき、森岡書店さん主催のインスタライブで、清水さんはそんなことを語っていました。

松本で暮らし、日々、その自然をファインダー越しに見つめてきた清水さんだからこその言葉。彼女の写真を眺めていると、刻々と変化する自然が私たちに語りかけてくるようです。


▲出版記念の作品展では、『二十四節気 暦のレシピ』に登場した清水さんの写真も展示。こちらは小暑の節の扉になった海と空の風景。


▲作品展の初日に開催したつくりらのインスタライブの風景。直前まで在廊を希望していた清水さんでしたが、コロナ禍での周囲への影響を考慮し、長野から東京への移動を断念。松本のりんご園からの中継に。

 

「毎月、開いてもらいたい!」の願いを込めて

『二十四節気 暦のレシピ』は総頁数224ページ。制作時に最後まで迷ったのは、紙の厚さです。

書籍の制作では、「束見本(つかみほん)」と呼ばれる、希望する紙とページ数で製本した冊子をつくることがあります。いわば何も印刷されていない真っ白の本です。これで全体の厚さや重さ、雰囲気をチェックします。今回は、厚めの紙とやや薄めの紙の2通りの束見本をつくりました。

厚めの紙を使えば背幅が厚くなり、ボリューム感もでます。厚めの紙の本は、ずっしりとした趣で、高級感もあるし、保存版にぴったり。本の価格とのバランスを考えれば、“厚くてしっかり”に1票です。全員でうんうんと悩んだあげく、最終的に私たちが選んだのは、薄いほうの紙でした。

「できるだけたくさんの回数、開いてもらいたい。節が変わるたびに本棚から取り出して、旬の植物を再確認してほしいし、その季節ならではのものづくりも楽しんでもらいたい」。そんな二人の著者の思いが最終的な紙選びの決め手となりました。

印刷・製本が終わり、初めて見本誌を手にとったとき、なんとも手なじみのよい紙にホロリ。これなら何回だってめくりたくなる。大正解!一人にっこりした瞬間でした。


▲森岡書店さんでの作品展では、もちろん『二十四節気 暦のレシピ』も販売。コロナ禍で来客数が減ったとはいえ、多くの本がここから旅立っていきました。

季節や植物とともに歩むことで、平板な日常が今よりずっときらめいてくる。猪飼さん、清水さんと連載や書籍をご一緒するなかで、このことを実感しました。取材・編集の現場で感じた、数え切れないほどの「小さな喜び」が、何十枚ものレイヤーとなり、今の自分の豊かさをつくっています。今度は本を片手に実践してみよう。めぐる季節に胸をときめかせながら、植物と歩む生活を。

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