更新日: 2019/07/26
前編では「代官山 蔦屋書店」さんで開催された「ホワイトワークで彩る暮らし」のフェアをご紹介しました。後編ではフェア期間中に行われたワークショップの体験レポートです。
撮影:奥 陽子 取材・文:庄司靖子 協力:代官山 蔦屋書店
代官山 蔦屋書店の「ちいさな手芸教室」は、手芸作家さんが招かれて講師を務める、定期開催のワークショップです。その第41回として開かれたのが、「ヒーダボーリングでつくるイヤリング&ピアス」。白糸刺繍作家、中野聖子さんが講師です。
ワークショップは店内の一角を使って行われました。一面ガラス張りのそのスペースは、光をふんだんに取り込める空間。ちょうど晴れ間がのぞいたこともあり、明るさも十分です。作業しやすい環境の中、ワークショップの準備が始まりました。
ワークショップに参加する8人分のキットを中野さんが配っていきます。
こちらがワークショップでつくるイヤリングとピアス。中野さんがつくったサンプルです。テーマは白糸刺繍ですが、今回は、白以外に青と黄色も用意。申し込みの際、3色から選ぶことができるという嬉しい企画です。
黄色を選んだ方はいませんでしたが、中野さんの耳元で揺れていたのは黄色いピアス。生徒さんの注目の的でした。
「今日はヒーダボー刺繍というデンマークに伝わる刺繍に挑戦していただきます。ヒーダボーリングというリングをつくり、つなげてアクセサリーにします。配置も個数も自由ですので、時間いっぱいたくさんつくって、最後につなげていきましょう」。中野さんの説明とともに、いよいよワークショップがスタート。
今日のために準備されたキット。オリジナルのパッケージには中に入っているものが記されているので、中身を確認しやすく、機能的です。
さっそくキットのパッケージを開け、選んだ色に間違いがないか、足りないものはないか確認。キットの内容は、刺繍糸(アブローダー・16番、25番)、針(先丸、先細を各1本)、丸棒2本、パールビーズ(Tピン、Cカンつきを各1個)、金具。
確認が済んだら、糸の引き出し方を教えてもらい、針に通します。先の丸い針に70cmにカットした16番の刺繍糸を通し、準備完了です。
針に糸を通したところで、中野さんがヒーダボーリングの刺し方を実演。直径8mmの丸棒に16番の糸を巻き、ヒーダボーのボタンホールステッチをひとつ施したら棒をはずします。ループの周りを時計まわりにボタンホールステッチでかがっていきます。
一周かがったところ。刺し終わりは最初のボタンホールステッチに針を入れ、糸を引いて完成です。ここまで、中野さんの、糸を捌く手が早くてあっという間!
「ヒーダボー刺繍のボタンホールステッチは同じ作業の繰り返しなので、難しくはないんですよ」という中野さんの言葉通り、たしかに複雑な動きではなさそうですが・・・。果たしてできるのでしょうか?
改めてサンプルの作品を見ながら、先ほど針に通した糸と丸棒を準備。通すのが難しい方のために糸通しも用意されていたので心強いです。いよいよヒーダボー刺繍。直径8mmの丸棒に糸を8回巻きます。
巻いた糸の下に針を入れるのが思ったより難しく、いきなりここで時間がかかってしまいました。
ボタンホールステッチをひとつかがったら糸を引き、棒からはずします。ここで手を離すとばらばらになるので、気をつけながらループにボタンホールステッチをかがっていきます。
一周したら最初のステッチの頭に針を入れ、引き出します。この糸はリングをつなげるために使うので切らずにおきます。
刺し始めの糸端はステッチの途中でくるむので、リングの裏側でそのままカット。やっとひとつリングが完成しましたが、時間がかかったうえにきれいな円になっていなくて、「見るのとやるのは大違い」と実感。
大きいリングができるようになったら、今度は小さいリングに挑戦です。25番の刺繍糸を40cmにカットして針に通し、直径4mmの丸棒に4回巻き、同じ要領でボタンホールステッチを施していきます。
「どんどん練習してくださいね。だんだん慣れてきて糸を引く加減もわかってきますよ」。中野さんはみなさんの手元を確認しつつ、コツをアドバイスしながら回ってくれます。
ときどき生徒さんから「四角くなっちゃった!」などという声が聞こえ、笑いが起こります。こうやって直接教えてもらったり、初対面の生徒さん同士がコミュニケーションを図ったりできるのもワークショップの醍醐味。
刺し方や教えてもらったコツをメモしていきます。
きれいな丸にならない、中の芯(最初に巻いた糸)が飛び出してきてしまうなど、それぞれの悩みを相談し、アドバイスをもらいます。
四苦八苦しながらも、リングをつくり続けると、なんとなくコツがつかめたような・・・。いくつかつくったリングで使えそうなものをチョイス。上からどのようにつなげていくか、大小のパールをどこにつけるかなどを考えます。
配置が決まったら、イヤリングの金具やパールは中野さんにつけてもらいます。
イヤリングの金具とパールをつけてもらいました。なんかぐっとアクセサリーっぽくなってきた!
残しておいた糸を先のとがった針に通し、リングどうしをつないでいきます。ここでひとつ問題が。ボタンホールステッチがきつすぎて、針がなかなか入らないのです。
中野さんに助けを求めると、「ステッチのとき、糸を引かないと緩んで目がきれいにそろいませんが、引きすぎるときつくなって針が通らなくなるんです。そのあたりの手加減は、やっているうちにわかってきますよ」とのこと。改めて中野さんの作品を見てみると、なるほど、きれいにそろった目はふっくらと立体的。針もすっと通りそうです。
他の生徒さんと、サンプルを見ながら思わず「全然違う…!」とうなずき合ってしまいました。
きつい目の中になんとか針を入れ、リングどうしがやっとつながりました。ほっ。
イヤリングがひとつできました。つなぐときなかなか針が入らず悪戦苦闘したため、リングが歪んでしまいましたが、完成したことに大満足!
参加したみなさんも、それぞれ考えた組み合わせでリングをつなぎ、イヤリングやピアスを仕上げました。お顔を見ると、完成させた喜びと達成感で生き生きとしています。
こんなに集中してものづくりをしたのはいつ以来だろう、と考えるくらい、充実した2時間でした。知らなかった世界に触れることができるのもワークショップの魅力です。繊細なホワイトワークの作品を直に見たり、刺繍の体験ができたり、フェアのおかげで豊かなひとときを過ごすことができました。
前編では、「代官山 蔦屋書店」さんで開催された『はじめての白糸刺繍 ホワイトワークでつむぐくらしの小物』フェアの様子を紹介しています。こちらも合わせてどうぞ。
笑う刺繡 中野聖子
刺繍作家。白糸刺繍教室「白い針仕事」主宰。ホワイトワークに魅せられ刺繍を始める。講師資格取得後、教室、作家活動を開始。現在は吉祥寺のアトリエを中心に、青山など都内数か所で教室を展開。企業カタログの装丁や手芸雑誌など寄稿も多数行う。著書『はじめての白糸刺繍 ホワイトワークでつむぐ くらしの小物』
ホームページ https://www.warau-embroidery.com/
インスタグラム @warau_embroidery