更新日: 2019/05/10
つくりら海外取材スペシャル、最後のお話は、今回の取材に同行してくれたフォトグラファー、清水美由紀さんの特別寄稿です。手工芸のみならず、清水さんのファインダー越しに見た美しい風景をお届けします。
撮影・文:清水美由紀
パリに来るのは3度目、10年ぶりのことです。
早速パリ散策に出かけます。治安面からUberがおすすめという話も耳にしましたが、荷物が多い場合を除いて、時間の読めるメトロを利用していました。どこもかしこも、何気ない風景が全て素敵です。
▲Grands Boulevards(グラン・ブールヴァール)の街並み。
私にとって、パリの風景といえばエッフェル塔とセーヌ川。パリ気分を味わうため、まずはエッフェル塔に向かいます。
▲朝焼けに包まれる、朝8時半のエッフェル塔。
エッフェル塔の足元には、いつ見てもエッフェル塔に登るための長い行列があって、それを横目にそそくさと通り過ぎていたのですが、今回は朝早かったこともあってか行列が短く、初めて登ってみることにしました。
上に登って見えた景色は…こんな感じ!
▲シャン・ド・マルス公園のシンメトリーな形や広さが一目瞭然。
上から見るシャン・ド・マルス公園の美しさったら!反対側に回ればセーヌ川も見渡すことができます。パリの建物は上から見ても繊細な線画のようです。
ただ、びっくりしたことがひとつ。東京タワーのようにガラス張りの室内を想像していたのですが、ガラスがなく柵があるだけのテラスだったので、風がびゅうびゅう!パリの冷たい風に、吹き飛ばされそうになって慌てて退散してきました。
▲観光地でよく見かける望遠鏡もゴールド&シルバーで美しい。
セーヌ川が流れていることで、建物がみっしり並んだパリの風景は、そこだけぽっかりとした広がりを見せ、空が見えて明るくなるように感じます。セーヌ川沿いの歩道には、ゆったりと散歩する人たちの姿。この景色とのんびりした雰囲気が、パリで過ごす時間の中でもとびきりです。
▲セーヌ川にかかる橋からの眺め。この橋を渡るとノートルダム大聖堂に続く。
▲パリで最も古い橋のひとつ、Pont Marie(マリー橋)。
セーヌ川沿いを散策して、可愛い洋服屋さんやアイスクリーム屋さんを目指してシテ島を巡ったり。ノートルダム大聖堂の鐘が鳴るのを聞くたび、じーんと胸にその音が響いてパリにいる実感を覚え、心と体がパリに馴染んでいくのでした。
▲パリの代名詞のひとつ、ノートルダム大聖堂。
パリから日本へ帰国したちょうど1か月後、ノートルダムの火災のニュースを目にしました。
「何度も来ているし、混んでいるし、今回はさらっとだけでいいや」。そんな風に考えていた私は、ニュースを見て大きなショックを受けました。「ノートルダムは、パリに行ったらいつでもそこにあるもの」。そう思っていたものが、違うと分かったからです。火災それ自体にショックを受けたのはもちろんですが、「いつでもある」と思ってしまった私の慢心に気づいたことも大きな衝撃でした。あの美しい姿のノートルダムに、また戻ってこられますように。
今回初めて行った場所がもうひとつ。モンマルトルにある、サクレクール寺院です。スマホも地図もポケットにしまい、正確な位置は分からないまま大体の方角を目指し、急な坂道をハアハア息をつきながら登ります。
▲モンマルトルへ続く長い階段の途中で振り返ると、すごい高低差!
人の流れで、なんとなく目指す寺院の方角を予想して歩くのは、今やスマホ片手に歩いてしまう東京での生活から離れて、野生の勘のようなものを取り戻すことができるドキドキワクワクとした時間でした。
▲パリらしいレストランは、インテリアや配色、看板の文字など見所がいっぱい。
サクレクール寺院からは、雨で霞むパリの街が見えました。映画の世界にいるようで、その雰囲気に酔いしれます。
▲サクレクール寺院前から眺めるパリの街。
パリは見所が豊富なので、これまでの旅では美術館などを巡ることが多く、小さなお店に足を伸ばせていなかったので、今回は気になるお店や歩いていて惹かれたお店にも行くことにしました。
まずはカリグラフィー用品や文房具を扱う「Melodies Graphiques(メロディーズ グラフィークス)」へ。ノートルダム大聖堂から歩いて行くことができます。カリグラフィー用のペン先も豊富で、フランスのアンティークのペン先や、エッフェル塔の形のペン先まで!封筒や紙類なども並び、どれもため息ものの美しさです。
▲カリグラフィーで筆耕された封筒の宛名や美しい道具たちで埋め尽くされた店内。
▲カリグラフィー用のペン軸とペン先のセットも数種類置かれている。
アンティークやブロカントの雑貨がほしくていくつかお店を回った中で、一番長居してしまったお店はこちら、「Au Petit Bonheur La Chance(オ プチ ボヌール ラ シャンス)」です。サンポール村という骨董屋さんが何件も立ち並ぶエリアにあるお店です。
▲赤い文字と窓枠が目印。ディスプレイされたハンカチもキュート。
店内には所狭しと、器やリネン、文房具に紙モノ、ありとあらゆる可愛いものが並んでいて、引き出しを全部開けてしまいたくなるほど(かなりの引き出しを開けて楽しんできましたが、さすがに全部は開けきれず!)。
ここでは、古い定規などの文房具やパッケージに使えそうなパーツ、キュートな子ども用のハンコなどを購入しました。小さな宝物が一気に増えました。
▲アンティークの小さなパーツもラッピングなどに使えそう。
あっという間に日も暮れ、ホテルへ戻ります。夕暮れのパリも素敵で、胸にせまる美しさです。
さて、朝早く起きて、この旅いちばんの目的であるヴァンヴの蚤の市へ!見てください、この掘り出し物感!ワクワクが止まりません。
▲Porte de Vanves(ポルト ド ヴァンヴ)駅を降りて徒歩2分ほどの広場から、通りに沿って店が並ぶ。
▲シルバー食器などの装飾的なアンティーク。
▲ざっくりと紙に巻かれた古いレーステープは、カジュアルなものからフェミニンなチュールまで、種類もさまざま。
▲花柄の食器やホウロウのキャニスターは、いかにもフランスといった風情。雑貨好きにはたまらない!
全部連れて帰りたいくらいでしたが、この後パリ取材を控えていたため、絞りに絞って、絶対にパリで買いたいと思っていたアンティークの器と花器を選びました。
改めて写真を見てみると、やっぱりこれも買ってくればよかったなあと小さな後悔が芽生えてしまいますが、それもご縁ですね。ちなみに、紙モノは日本にないデザインばかりでどれも可愛いのですが、お値段はそこまで可愛くはなく(笑)、器は日本で買うよりも格段に手頃という印象でした。
▲夜が白み始めた頃の、ルーブル美術館のピラミッド。
パリでの楽しい数日間はあっという間にすぎ、早朝のパリにさよならを告げて次の旅へと向かったのでした。
清水美由紀
フォトグラファー。生活を感じる旅、暮らしのあれこれ、健やかな食&住が興味の対象。雑誌やWebなどで「LIFE(生活、暮らし、人生)」にまつわる写真を撮影。日本&世界を娘とふたりで旅しながら写真を撮って暮らしている。美しい日常の瞬間を切り取った透明感のある写真は、国内外問わず、多くのファンを魅了している。
ホームページ:https://miyukishimizu.format.com/
インスタグラム:@uriphoto