「冬の結晶 vol.4 8人の作家によるアクセサリー展」2018.12.13(Thu)-24(Mon)  東京

写真協力:組む東京  文:つくりら編集部

12月は一年の締めくくりの月。お世話になったあの人に、あるいは自分自身へのごほうびに、プレゼントを探してしまう月でもあります。

そんなギフト気分をいっそう盛り上げてくれるのが、東京・馬喰町のギャラリーショップ「組む東京」で開催中の「冬の結晶」。異なる素材を扱う8人の作家が手がける手づくりのアクセサリー展です。縁あって集まったという8人の作家、その作品の魅力を「組む東京」の代表、キュレーターの小沼訓子(こぬまのりこ)さんのコメントとともにダイジェストでご紹介します。

 

和紙のゆらめき。森田千晶さんの“小さな一粒”

これは蜘蛛の仕業? 人の手仕事とは思えない繊細な模様を紡ぐのは、和紙制作を手がける森田千晶さん。マクロにもミクロにもなるという森田さんの和紙づくり、展示会場を彩る雪の結晶のインスタレーションではマクロの世界を、アクセサリーではミクロの世界を見せてくれます。

「千晶さんの和紙づくりは、彼女の全霊をこめた創作だと思うのです。和紙に描き出されるイメージには、ときに、美しさ、可愛らしさ、ときに、命の神秘や力強さ、凄みまでもが映し出されています。マクロにもミクロにも、千晶さんの創作のエッセンスがつまっていて、ますます目がはなせません。アクセサリーは、そんな彼女の表現の小さな一粒です」(小沼さん)

 

磁土・釉薬・ガラスの調和。 小駒眞弓さんの“ミクロの彫刻”

朝露のしずくがポトリ。そんな印象のブローチは小駒眞弓(こごままゆみ)さんのfusionシリーズ。磁器とガラスは冷却時の収縮率が違うため、窯出し後にポロリと取れてしまうものもあるそう。無事焼き上がった作品は、まるで天から授かったかのごとく、生き生きと輝いています。

「小駒眞弓さんの手から、次々と紡ぎ出される形は、ミクロの彫刻。自然のパターンの神秘を宿した装身具は、 普遍的な強さを内包しながら、とても優しく美しく、どこか愛らしい」(小沼さん)

 

“自然の恵みが弾ける”! 羽田麻子さんのピアス

なんとも楽しそうに並んでいるのは、羽田麻子さんの作品。ツリバナマユミの実が弾けた姿からインスピレーションを得たという木の実シリーズは、革とガラスと真鍮を組み合わせたもの。ちらりと顔をのぞかせたガラス玉が耳元でゆらゆら・・・素敵すぎます。

「春夏秋冬の自然の恵みが弾けるようなアクセサリーを見たときに、麻子さんが暮らす山と海の景色が目に浮かびました。雨に洗われた木の葉の上にキラキラと光る水滴をつなげるように。自然の恵みを喜んで受け取り、心を遊ばせ、手で作ることを楽しんで。弾むようなきらめきと温かさを宿したアクセサリーは、麻子さんそのものです」(小沼さん)

 

 “小さきものに宿る神様”。中村なづきさんの記憶のかけら

植物・結晶・気候など、自然がつくり出したものをモチーフに作品を手がけているのは、金属アクセサリー作家の中村なづきさんです。

「なづきさんの作るアクセサリーを見ると、私は、そこに大切な何かが宿っているように感じます。小さきものに宿る神様と、無心に一体になれた少女の頃の感覚を思い出すのです」(小沼さん)

 

松本 愛さんの“シンプルで素直な形”

どんな服にも、どんな心持ちにも、すっとなじんてくれる心地よさと安心感。松本 愛さんのネックレスを身につけたときに感じたことです。

「松本 愛さんのアクセサリーを一番多くコレクションしているのは、お母様だそう。お母様は、娘が小さい頃から作り続けている作品を今も大切に使い続けてくれているとのこと。身近な誰かに喜んでほしくて、一つ一つを手で作る。工夫がありながら、シンプルで素直な形に仕上げたアクセサリーが、『組む』では多くの女性達の目にとまり、愛されています」(小沼さん)

 

 “清らかな白”。鈴木仁子さんの「白磁の装身具」

一見、レースのようだけれど、触ってみるとひんやり硬い。「白磁の装身具」のつくり手は鈴木仁子(すずききみこ)さんです。ペースト状にした磁土でレース模様を一点一点描いて焼き締めたという、一点もののシリーズは、強度を保つため、3〜5回層にして繰り返し高温焼成しているそう。

「鈴木仁子さんが作るアクセサリーは、まるで雪の結晶のよう。そっとしていないと消えてしまいそうな儚い刹那の美しさ。その一瞬をとらえたいのに、ぎゅっと握りしめることは永遠にできない美しいもの。そんな切ない憧れを抱かせるアクセサリーなのです」(小沼さん)

 

“魔術的な魅力”。山﨑淳子さんのイマジネーション

「おしゃれが大好きだけど、肌が弱かった」という山﨑淳子さんは、敏感肌の人でも気兼ねなくつけられるように、とコットンレースの作品を手がけるようになったといいます。レースのデザインから染めまで 1つ1つ手作業です。

こちらは、南米パラグアイの伝統工芸、ニャンドゥティ刺繍の技法を用いた鳥の羽根作品「quetzal(ケツァール)」。鳥モチーフの作品が多いのは、子どもの頃に南米に生息するケツァールという鳥を知り、深く感銘を受け、その後の創作活動に大きな影響を与えたからなのだそう。

「淳子さんは、不思議な力を宿した生き物と響きあう特別な感性をもっていて、そのイマジネーションを創作の世界に映し出しています。そうした作品は、子どもの頃、繰り返し読んだ空想の物語から抜け出てきたようで、どこか魔術的な魅力を放っているのです。美しい空想。それが彼女の作品にこめられた、大切なエッセンス。人々を魅了してやまないものだと思っています」(小沼さん)

 

“風土と精神から生まれる”奥田早織さんの服と装身具

服とアクセサリーを展示しているのは、服飾作家の奥田早織さん。アクセサリーはアンティークのパーツを使ったピアスや真鍮の髪飾りなど。


▲ガラス皿は、波多野 裕子(パート・ド・ヴェール)さんの作品。

「私たちの風土と精神から自然に生まれる衣服って、本来どんなものなのかと。早織さんの手がける衣服は、それに対する、すごく素敵な一つの答えだと思っています。彼女の服は、体に沿って形が生まれ、空気をはらみ、着こなし次第で、何通りにもイメージが変化する。颯爽として、自然体で、自由でまっすぐ。そんな女性像を感じる服と装身具は、実際、彼女そのもので、会うたびに嬉しくならずにはいられないのです」(小沼さん)

期間:2018.12.13(Thu)-24(Mon)
場所:組む東京
東京都千代田区東神田 1-13-16
開催時間:12:30~19:00
問い合わせ先:03-5825-4233
ホームページ:http://www.kumu-tokyo.jp/
インスタグラム:@kumutokyo

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