更新日: 2018/10/09
カメラマンの奥陽子さんにつくりらが初めて撮影をお願いしたのは、刺繍作家の川畑杏奈さんの取材でした。被写体にしっかり迫りながらも、その場の楽しい雰囲気が伝わってくる写真に感動。スタジオブーケさんで奥さんのフォトレッスンが始まったと伺い、さっそく取材におじゃましました。前編、後編の2回に分けてその様子をレポートします。
撮影:清水美由紀 取材・文:つくりら編集部 撮影協力:スタジオブーケ
ものづくりを楽しむ人にとって、写真は作品の魅力を伝える大切な要素。「もっと綺麗に撮れるようになりたい!」。そんな要望に応えるべく企画されたのが、スタジオブーケさんの「奥カメラマンによるカメラワークショップ」。カメラの基礎から一眼レフカメラのテクニックまで教えてくれる魅力満載のワークショップです。
レッスンの会場は千葉県新浦安のスタジオブーケさん。レッスンや撮影などに空間を提供しているスタジオで、つくりらでもたびたびお世話になっています。オーナー自らリメイクしたという部屋は、パリのアパルトマンのようなシャビーな空間。シンボルツリーのウンベラータが瑞々しさを添えています。
中に入ると、今日はパーティー?と見紛うような美しいテーブルセッティングが。オーナーの悦子さんがアレンジしたお花のなんとカッコいいこと! テーブルいっぱいに枝を広げているのはドウダンツツジ。このグリーンがあるとないでは大違いなのだとか。
美人な葉っぱがちょうどいい具合に白い器に。これだけですごくフォトジェニック!
レッスン当日はあいにくの雨。ですが、自然光の少ない空間でどうやって素敵な写真を撮るのか?というテクニックが学べるまたとないチャンス。この日の参加者は7名。ほとんどの方が一眼レフカメラを携えてやってきました。子どもが生まれたのを機に一眼レフを購入した方、買ったはいいがいつもはスマホ派という方まで、さまざまです。
レッスンは、カメラの基本のレクチャーから始まりました。ホワイトボードに図解しながら説明していきます。
「写真の明るさを決めるのは、シャッタースピード、絞り、ISO感度の3つです」と奥さん。シャッタースピードは、シャッター幕があく時間を調整するもので、これで動きの表現が変わるのだそう。
続いて「絞り」の説明。「レンズの中には絞り羽根がついていて、これを開け閉めすることで、背景のボケ具合が変わります。絞りが開いていると、ピントを合わせた位置から遠くにあるものはボケて見えるし、絞りを閉めると手前から奥まではっきり見えます。これを、被写界深度(ひしゃかいしんど)と言います。写せる世界の深さ、ピントの合う深さ、ですね」
そして3つめの「ISO感度」。「ISO感度は、光を感じる力のことで、100,200,400などの値で表します。暗いところでは光が不足しているため、極端にシャッタースピードを遅くしないと写真が暗くなってしまいます。それでは、手ブレしてしまいますね。それを防ぐには、高感度に設定します。絞りやシャッター同様、感度にも画質に影響する特徴があり、粒子感が変わります。低感度では粒子は滑らかで綺麗で、高感度では粗くザラザラした質になります」
シャッタースピード、絞り、感度。この3つが大事! ということが一瞬わかったような・・・。
「この3つの設定を勝手に察知して決めてくれるのがオートです。撮影するとこの3つの数値のデータがわかりますので、きれいに撮れたと思った写真があったら、その数値をチェックしてみるといいでしょう」と奥さん。
なるほど。理想の数値を知って自分で試してみる。数値のバランスを経験で体得していくというわけですね。
カメラの基礎講座の後は、実技。スマホでの撮影です。
「iphoneは、明るさとピントの位置が調整できます」と奥さん。この機能、意外に知らない人が多いのだとか。ピントを合わせたい画面の場所を軽くタッチすると、押した部分に四角い枠が現れ、ピントと露出が合います。四角い枠の横に太陽マークが現れ、それを上下することで、明るさが調整できます。
スマホには、「HDR」という、露出を自動で調節してくれる機能もついているそう。このマーク、なんだろうとずっと思っていました。
「背景をボカしたいときは、なるべく被写体に寄ってあげて、手前にピントを合わせてあげましょう」とアドバイス。
スマホの利点は機動力があることだと奥さんは言います。「何と言っても、真上からの撮影がしやすいですね。ふわんとした可愛い写真が撮れます」。インスタグラムでよく見かける真俯瞰の写真。スマホだからこそ簡単にできる撮影方法だったからですね。
真俯瞰の撮影で気をつけてほしいのが、部屋の電気の灯り。「電気をつけたままだと、どうしても影がでてしまいます」。あ、それ、あるあるです!
「太陽の光がいちばん綺麗なので、できるならば電気を消すこと。色の違う光が混ざらないほうが美しく撮れます。写真のポイントは光。光がきれいにあたっているところを探すことがコツです。光が来る方向を感じながら撮影しましょう」
光を調整するためのツールとして、カメラマンさんがよく使っているのがレフ板です。
専用のレフ板でなくても、ノートを折り曲げても使えますと奥さん。
とにかく光、光が大事。光を味方につければ、いつもの写真がドラスティックに変わるかも・・・! 俄然、やる気が出てきました。
後編では、一眼レフカメラのレッスンも登場します。お楽しみに!
奥 陽子
兵庫県生まれ。多摩美大グラフィック科を卒業後、レンタルスタジオ勤務の後、カメラマン専属アシスタントを経て2013年にフリーランスとして独立。人物、物、風景、ジャンルを問わず写真を撮る。現在、雑誌、カタログ、広告、ウェブと幅広く活動中。
Studio Bouquet (スタジオブーケ)
千葉県・新浦安にあるスタジオで、レッスンや撮影などに空間を提供。オーナー自らリメイクして造りあげた「パリのアパルトマン」をイメージしたインテリアが評判に。フラワーアレンジメント、カルトナージュをはじめ、多彩なレッスンを行っている。
ホームページ:http://studiobouquetb.wixsite.com/website
インスタグラム:@studiobouquet