植物教室(後編)|ハーブをふんだんに使ったスワッグづくりとエディブルフラワー入りのスペシャルデザートを体験!

植物教室(後編)|ハーブをふんだんに使ったスワッグづくりとエディブルフラワー入りのスペシャルデザートを体験!

フローリスト、NEROLIDOL猪飼牧子さんの「植物教室」体験レポートの後編です。前編ではハーブのアイスやブーケガルニづくりについてご紹介しました。後編はスワッグづくりをクローズアップ。植物教室が生まれた背景についてもお話を伺いました。

撮影:清水美由紀  取材・文:つくりら編集部

ハーブがいっぱいのスワッグづくり

NEROLIDOLさんの「植物教室」のスワッグづくり。「ハーブと暮らす」がテーマのこの日は、スワッグの花材もハーブづくしです。

ローズマリーにミント、ジャーマンカモミール、パクチーと、おなじみのハーブに彩りを添えているのが、オレンジ色のベニバナ、ブルーのコーンフラワー(矢車菊)です。ここにユーカリも加わり、スワッグづくりが始まります。

「カモミールには、ジャーマンとローマンの2種類ありますが、ジャーマンカモミールの花は、黄色い部分の花托(かたく)が盛り上がっていて背が高いのが特徴。ローマンはグランドカバーなどに使われることが多くて、味はやや苦みがあります」と猪飼さんが説明してくれます。

ジャーマン、ローマンともに鎮痛作用に優れた精油として有名です。また、ジャーマンのハーブティーはストレス性胃炎にも効果が期待されているそう。

 

まずはユーカリで土台づくりから

いよいよ束ねていきます。「ユーカリで土台をつくって、小さな枝は切って後から足します」と猪飼さん。

ボリュームがあって短いものは根元のほうに。
高低差をつけて。
茎しかないものは先に組んで。

スワッグを束ねていると、随時、猪飼さんがアドバイスしてくれます。どの花材をどのくらい加えるかは自由。ひゅるひゅるとしたジャーマンカモミールを入れると動きが出そう。

ここで猪飼さんが、大きなふわふわした花材を持ってきました。

「これはパンパスグラス。ハーブではありませんが、組み合わせるとちょっと変わったデザインになりますよ」

猪飼さんのおすすめ通り、パンパスグラスを加えてみました。こんな感じでいいのかしら? 壁に当ててバランスをチェック。

紐でしばる段階で、ああ、ちょっと短すぎました。猪飼さんに手伝ってもらってなんとか終了。

スワッグが完成!参加者3名の作品を窓辺に吊るして記念撮影です。三人三様、大きさもバランスもそれぞれ個性が出ています。

 

しめは手づくりデザートで!

ひとしきり手づくりを楽しんだ後は、お待ちかねのデザートタイム。レッスンの最初にみんなでつくった「ハーブフローズンヨーグルト」がちょうど固まっている頃です。猪飼さんが素敵な器を持ってきてくれました。添えてあるお花はエディブルフラワーですね!

取り分けたアイスに、花びらを散らします。

わぁ、きれい!再び撮影タイムです。

自分たちでつくったデザートを味わいながら、この日のワークショップをしみじみ振り返ります。

「二十四節気と七十二候」のお話に始まり、「フローズンヨーグルト」の種を混ぜたら、「ブーケガルニ」のハーブをしばって、スワッグを束ねた・・・。なんて濃密な時間だったんでしょう! 

 

「植物教室」が生まれたきっかけ

こんなに盛りだくさんのレッスンを毎月考えているなんてすごすぎます。「植物教室」の着想はどこから生まれたのでしょうか? 猪飼さんにお尋ねすると、その答えは、幼少体験から始まり、くぐり抜けてきた経験の一つひとつが積み重なって形になったものでした。

「幼少時代に過ごした家にはうっそうとした庭がありました。びわの木があって、木の上で宿題をしたりしていたんです」。一緒に住んではいなかったものの、お祖父さんは盆栽マニア。植物にいつでも触れられる環境があったのだと言います。

大学卒業後の会社勤めではストレスが多く、吹き出物に悩む日々だったそう。自分も含め、疲れている人が多い、何かできないか。そう思った猪飼さんは一念発起。会社を辞めて本格的にアロマテラビーの学校へ。そしてトリートメントの施術の仕事へと転職します。しかしほどなくしてその会社はクローズ。いったんは花もアロマもあきらめ、靴屋さんで働き始めました。

「靴屋さんで働いていたとき、ドライフラワーでアクセサリーをつくっていたら、欲しいと言う人が現れて・・・。そのとき、植物に戻りたい!って思ったんです」


▲ドライフラワーやプリザーブドフラワーを使ったアクセサリーは今も制作。

 

植物の魅力の伝え方はひとつじゃない

植物に戻るなら、生花から学びたい。そう考えた猪飼さんは、花の師匠について本格的に修行を始めます。

「複合的に植物を伝えたいと思い、単発のイベントを行っていました。そのとき植物の魅力の伝え方はひとつじゃないなと気づいたんです。アロマ、生花、アクセサリーと、今まで経験してきたものを3本立てでやるようになりました」

より生活に密着するものを・・・その思いもいっそう強まり、食にもつなげようとハーブも勉強。エディブルフラワーまで興味の範囲が広がっていきました。

「植物教室」に、実技だけではく、「二十四節気と七十二候」のような座学も取り入れているのは、「知識を持つと見方が変わる」という、猪飼さん自身が実感してきたことがベースになっているのです。

 

植物について語り合える場所に

教室ではいつも白衣姿と決めている猪飼さん。「このアトリエはラボっぽくしたいんです。みんなで植物について語り合える場所にしたくて」

さまざまな角度から植物を取り上げ、その楽しみ方を提案する。その根底にあるのは、植物を身近に感じてもらいたいという強い思い。季節の花束も、自分で活けなくていいから気軽にお花に楽しんでもらいたい。そんな気持ちから始めたものだそう。

「とにかく花の窓口を広げたい、敷居を下げたいと思っています。丁寧な暮らしってなかなかできないもの。自分も面倒くさがりですし(笑)」

 

じんわり効いてくる「植物教室」のすごさ

この日につくったスワッグは、持ち帰ってすぐに自宅の玄関のドアに飾りました。

あれから3か月。梅雨をくぐり抜け、猛暑を共にする今も、ベニバナのオレンジ色やコーンフラワーの青色は、衰えることなく、美しい色を保ち、ユーカリは、体に良さそうなスゥっとした香りを放ち続けています。

植物教室に参加したことで、季節への関心が芽生え、先人の知恵へのリスペクトも生まれました。お料理、フラワーアレンジメント、ハーブと、さまざまなことを体験することで、自分はいったい何に一番関心があるのだろうと自問することもできたような・・・。

「あ、これって意外に面白い!」

小さな感動は何層にも積み重なって、鈍った感性に揺さぶりをかけてきます。次回は季節を違えて、再び参加してみたいなあ。濃密な時間は、後を引きますね!

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