更新日: 2018/05/14
前編では、ウクライナの伝統的な手工芸のお話をしました。後編では、つくりら記者も参加した、「プイサンカ」のワークショップのレポートです。
撮影:奥 陽子 取材・文:つくりら編集部 協力:ワサビ・エリシ
ナタリャさんの「プイサンカ」づくり、当日の参加者は記者を含めて5名。ビーズ織り作家のマクシムさんも一緒です。
ワークショップの冒頭で、ナタリャさんがプイサンカの本を見せてくれました。幾何学的な模様、シンメトリーなデザイン、小さな卵によくぞここまで・・・と、そのバリエーションの豊富さに感心してしまいます。
モチーフには意味があり、地域によっても異なる、とナタリャさんは解説を加えます。木は子孫繁栄を、四角は畑を意味し、水は「いつまでも元気で」という願いが込められているのだとか。太陽のサインや植物のサインも数多くあります。
ワークショップで使うのはニワトリの卵。すでに穴をあけて中身が出された状態で用意され、ナタリャさんが前もって下絵まで描いてくれています。
個々のテーブルには、マット、ろうそく、下書き用のシャープペンシル、キッチンペーパー、マット上部に置かれた青いペンは「ピィサチョク(Pysachok)」と言われる専用ペン。地方によっては「キストカ(kistka)」と呼んでいるところもあるそう。このペンにろうを入れて絵つけしていきます。
こちらは説明用のプイサンカ。ろうで線描きしたものに、黄色、赤、青と順番に色づけしていった工程がわかります。
ピィサチョクでろうを削り取ります。
ろうそくの炎に近づけてろうを溶かします。
ペン先を卵に当てて、下絵をなぞっていきます。ろうで描いた線が少しだけぷっくりと盛り上がりました。
裏面にはナタリャさんの下絵がありません。自由創作です。鉛筆の下書きなしで、花の絵を描いてみました。
線画が描けたら、酢につけて余分な汚れを落とします。
キッチンペーパーで酢を拭き取ります。
次は染めの工程です。まず、黄色の染料に浸します。
卵全体が黄色に染まりました。
黄色く残したいところをろうで塗りつぶします。
緑の染料に浸した後、緑色に残したいところをろうで塗りつぶします。葉っぱですね。
続いて赤の染料に浸し、赤く残したいところに再びろうを塗ります。風車のように互い違いに色のグラデーションがでるかなと期待しつつ。
その後、ブルーの染料につけて、色づけが終了しました。
いよいよ最後の工程、ろうそくの炎で、ろうを溶かします。すると、ろうで塗りつぶしていたところに美しい色が浮かび上がってきました。いちばん最初にろうで線を描いた箇所は、卵の白い色がくっきり。今までの“苦労”はこの一瞬のためにあったのかと思うほど、その美しさに感動する瞬間です。
感動の余韻に浸るも束の間、あら、美しい色のグラデーションになるはずの部分が、同じ赤になってしまっています。いったいどこで間違えたのでしょうか。赤の次に青に浸したのですが、赤に青がうまく浸透しなかったようです。頭の中では赤×青=紫だったのですが・・・。
色を重ねるときは、薄い色から濃い色へいうコツがあったようですが、どの色が薄くて、どの色が濃いのか、なかなか判断が難しいなあと実感。色を重ねる順番は、何回かトライして感覚をつかみたいところです。
失敗はありつつも、裏側の創作絵は初めてにしてはなかなかのでき映え(笑)。ナタリャさんにタッセルをつけてもらって、プイサンカのでき上がりです。
自由創作の裏面はこんな仕上がりになりました。
参加者全員の作品を集めて、記念撮影。地色が黒だと引き締まっていて美しいなあ。
手のひらにのせて、もう一回(笑)。
初めてのろうけつ染めは、要領がつかめず、失敗もありましたが、どこのモチーフをどの色にしたいかというイメージを持って臨んだら、次はもっと楽しめそう。色と色とが混ざり合う面白さや、ろうを溶かす最後まで完成色がわからないというスリリングな感覚。伝統的な染色法であるろうけつ染めを小さな卵で体感できる「プイサンカ」。1個つくるともう1個、と次々とつくりたくなってしまう、創作意欲を掻き立てるクラフトでした。
前編では「プイサンカ」をはじめ、ウクライナの手工芸についてご紹介しています。こちらもぜひご覧ください。
ナタリャ・コヴァリョヴァ
1994年に来日、語学学校での外国語教師などを勤める。2006年より、横浜市教育委員会のIUI(国際理解講師)として横浜小学校でウクライナ文化を教える。2011年、プリサンキ教室を設立。様々なイベントやフェスティバルを開催し、ウクライナの歴史や文化、伝統などを広める活動をしている。
facebook: https://www.facebook.com/kovalova.natalya
URL: http://dzherelce.github.io
WASABI-Elişi (ワサビ・エリシ)
トルコのアジア地方、アナトリアの手仕事の品を中心に扱う、針仕事の専門店。作家ものでもない、手芸でもない、お土産ものでもない、トルコの手仕事の品々を、店主の赤松千里さんが地方のバザールや小さな店に足を運び、直接買い付けている。針仕事のキーワードで、パラグアイの「ニャンドゥティ」や青森のこぎん刺しなどのワークショップも定期的に行っている。店名の「WASABI-Elişi(ワサビ・エリシ)」は、清々しい青い葉「わさび」と、トルコ語の「手仕事」=「Elişi」を合わせた名前。
156-0042 東京都世田谷区羽根木1-21-27 亀甲新 ろ60
営業時間:11:00~17:00(木・金 13:00~19:00)
定休日:火曜日(祝日は営業)
TEL : 03-6379-2590
http://wasabielisi.com