更新日: 2017/11/08
前編では、栗農園の「青空市」に合わせて開かれたNutelさんの作品展、Nutel exhibitionをご紹介しました。後編では、Nutelさんのワークショップ、ブローチづくりをレポートします。
撮影:田辺エリ 取材・文:つくりら編集部
作品展では、たいていミシンを持参するというNutelさん。ミシンドローイングの様子をライブで見られるのも楽しみのひとつです。
「ミシンドローイングは90番の細い糸を使っています。一般によく使われる60番の糸も試してみたのですが、90番に落ち着きました」
会期中、いつでも参加できるワークショップは、Nutelさんが描いた絵の上に、刺繍糸でステッチして色をつけていくというもの。ブローチかヘアゴム、どちらか好きなほうを選べます。
テーブルにはワークショップ用の布がいっぱい。この中から好みの絵を選んでもいいし、リクエストして希望の絵を描いてもらうという贅沢な選択もあり。
たくさんの絵のなか、凛々しい馬と目が合って、これに決定。ブローチに仕立てたサンプルがあったのも選ぶ決め手になりました。
テーブルの上にずらりと並んだ刺繍糸。このなかのどの色を使ってもいいとなると、ワクワクする反面、かえって迷ってしまいます。
「普段の作品がモノクロなので、みなさんが色を刺すのを見て、刺激になるんです」とNutelさん。
秋らしいほっくりとした色合いにしようと、くすんだ緑と青、そして明るめの茶色を手に取り、合わせてみます。
久しぶりの刺繍でやや緊張、最初のひと縫いだけNutelさんに頼みます。「刺繍家ではないので・・・」と、はにかみながらも刺してくれました。
青、茶と刺し進めていくと、やはり赤が欲しくなり、月並みだと思いながらも、花は赤で刺すことに。あえて緑は使わず、線画の部分を残して、刺繍を終了。
仕立ての工程に入ります。まず、プラスチックのつつみボタンを布の裏側に当てて、ちょうどいい絵の見え方になるよう、輪郭の印をつけます。
縫い代を1㎝くらいとり、ぐし縫いしていきます。
ぐるりと一周縫ったら、糸を引き、つつみボタンの形になるようぎゅっと縮めます。
対角線上にひだの山をすくって、しっかりととめていきます。いびつな丸にならないよう気をつけて。
サイズどおりにカットし、あらかじめブローチピンを縫いつけてある合皮の裏側にボンドを塗ります。
つつみボタンの裏側に合皮を貼りつけ、指で押さえて固定します。
でき上がりました。青い目がポイントです。
日曜日とあって、会場には家族連れのお客様もちらほらと。小学3年生という女の子も刺繍に挑戦です。
「みなさん、家ではゆっくりと針や糸を持つ機会がないようで、はじめは緊張しているのですが、刺し始めると楽しくなるようです。地元(滋賀県)でワークショップを行ったときも、6歳の娘さんがもくもくと刺している姿を見て、ふだんかまってあげられないというお母さんが、『久しぶりに家族3人で過ごせてよかった』と喜んでくれました」
展示会のオファーが後を絶たず、常に日本各地を飛び回っているNutelさん。彼女が作品展を開くたびに、新しい輪が広がり、交流の渦がわき起こります。
アーティスティックな作品を堪能しながら、ワークショップでエッセンスを体感する。その楽しさを、今度はひとりじゃなくて、友人と、家族と。そんな気持ちにさせるNutel exhibition。早くも次の展示会の予定をチェックしてしまいそうです。
Nutelさんの作品展、Nutel exhibitionの様子をレポートした前編では、インテリアにぴったりのアート作品やアクセサリーやバッグをご紹介しています。
Nutel (ヌーテル) 渡邊笑理
ソーイングアーティスト。嵯峨美術短期大学卒。2003年から、ミシンを使ったフリーハンドステッチで絵を描き始める。主に植物や動物を布にスケッチするような感覚で縫い描く絵画が特長。国内外から高い評価を得ている。
http://nutel.jp