アンティーク, パッチワーク, ワークショップ, 布, 手芸
アンティーク, パッチワーク, ワークショップ, 布, 手芸
更新日: 2017/10/24
カーリ・メンさんは、アメリカ・ロサンゼルスで、クラフトショップ「French General(フレンチ・ジェネラル)」を営むデザイナーです。10月に東京で開催された「キルト&ステッチショー」に合わせて初来日しました。滞在中に開催されたワークショップにつくりら記者も参加。ヴィンテージファブリックの魅力から、最近気になるクラフトのことまで、たっぷりお話を伺いました。前編、後編、2回に分けてお届けします。
撮影:奥 陽子 取材・文:つくりら編集部 協力:moda Japan
「French General」は、1997年、小さなクラフトショップとして、ニューヨークのソーホー地区にオープンしました。その後、2003年にロサンゼルスに移り、現在は、古いスパニッシュスタイルの倉庫を拠点に、週に2回、ショップとしてもオープン。南フランスで買い付けたヴィンテージの布や手芸小物のコレクションを一般に公開、販売もしています。
アンティークやヴィンテージの布、ビーズや手芸小物・・・。カーリさんの審美眼により集められた膨大なコレクションは、キルターや手芸家の間では常に垂涎の的。自らファブリック・コレクターと称し、北欧の布、フランスの布、日本の布など、さまざまな国の布を集めているカーリさんのもとには、インスピレーションを求めて、アメリカ国内はもとより、世界中から愛好家が訪れます。
「古い布の収集は、歴史への興味から始まりました。アンティークを通じて、100年前、いえ、200年前の人々の暮らしが見えてきます。当時はどんな道具を使っていたんだろう、どんなエプロンをしていたんだろうと。私は古いものから多くのことを学んでいるのです」
カーリさんが10年ほど前から始めているのが、古い布のピースを集めた「ドキュメント・ファブリック」づくり。布の記録帳です。
▲「ドキュメント・ファブリック」を見ながら、ピースを説明するカーリさん。
「『ドキュメント・ファブリック』は、1週間に1枚のペースでつくっています。今や私のルーティンワークですね。布を買ったときに必ず少しだけカットしておきます。そうやってコツコツためてきた布の記録が、期せずしてひとつのプロジェクトを生み出すことになったり、手織りのプロジェクトに役立ったり。自分が好きなのはどんな色だろうとか、この記録帳から好きな色を探し出して、日々、作品やプロジェクトに生かしているんです」
▲修復されていたりする布は、手仕事の軌跡が感じられ、いっそうストーリーを感じるそう。
「私は専門家ではないので、美術館や図書館に行って調べることもしょっちゅう。でも、布のにおいや見た目などからわかることもあります。あ、これはベッドに使われていたものだな、とか、古い茶色の布なら、おそらくルイジアナのものかな、とか。書かれている文字から推測することも。これは中国語? フランスの蚤の市で見つけたのに、なんてね。小さなことから、少しずつ、少しずつ、ヒントの糸口をさぐり、その布のルーツを解き明かしていくのです」
カーリさんの「ドキュメント・ファブリック」を見せていただくと、赤い布が多いのに気づきます。
「フリーマーケットに行っても、布の山から最初に見つけ出すのは赤い布。その次に青、そしてナチュラルカラーと続きます。赤という色に情熱を感じるのです。たしかに赤は万人が好む色ではないでしょうし、多くの人はもっとニュートラルな色のほうが心地いいというかもしれない。でも、赤を使うと、プロジェクトもキルトも素晴らしいものになる。そう、赤は私の色なのです」
▲集めている布は、1800年代から1900年代始めのものが多いそう。布のピースから生まれるカラーストーリーやインスピレーションが、次のModaのコレクションに生かされる。
「French General」のロゴもホームページも、そのメインカラーは、赤。カーリさんにとって、「赤」はスペシャルな存在のよう。来日時にいただいたショップカードも赤一色です。
▲「French General」のショップカード。アイコンはスクーターに乗った女の子。「フリーマーケットで見つけた古い安全ピンの箱に描かれていた絵がとても可愛かったので、それを参考に。おそらく1930年代くらいのものではないでしょうか」
2007年、アメリカのファブリックメーカー、moda(モダ)から依頼を受け、「French General」の名前で布のシリーズが発売されるようになります。
今年は、カーリさんが「French General」を始めてちょうど20年。今秋発売された新シリーズ、「Atelier De France(アトリエ・ド・フランス)」は、カーリさんの大好きな柄がつまっているそう。
▲「Atelier De France」は、「French General」の20周年を記念してつくったベストセレクション。後編で紹介するワークショップ、「ヘキサゴンのミニバッグ」もこちらの布を使用。
▲同じく「French General」の20周年を記念して発売される「Atelier De France Wovens(アトリエ・ド・フランス・ウーブン)」。こちらは織り布。
modaで発表する布も、「French General」のショップで販売する手芸小物も、テイストは一貫してフレンチアンティーク。そのインスピレーションの源となる南フランスに、カーリさんが足しげく通うようになったのは、25年前のことです。
「私の主人はスペインの北、バスク州、サン・セバスティアンの出身。そこはフランスとの国境から約20km、車で10分も走ればフランスです。25年前、主人と一緒にサン・セバスティアンに行ったとき、みんなはビーチに向かうけど、私はひとり、車で国境を越えてフランスへ(笑)。ものの10分でフリーマーケットに到着するわけ。ヨーロッパには素敵な場所がたくさんありますが、南フランスに通うことになった理由、それは夫の出身地に近くて、行きやすかったからなんです」
オープン当初、ショップで販売するのは、南フランスで買い付けたヴィンテージやアンティークが中心でしたが、次第にフレンチアンティークテイストの手芸小物を自らプロデュースするように。
▲小さな糸巻きに巻かれたリボンは、Modaがつくった「French General」コレクションのひとつ。1巻き3ヤード。
▲アメリカのリボンメーカー、「Renaissance Ribbons」から発売されている「French General」のリボン。Modaのファブリックコレクションとコーディネートできるようにデザイン。
▲ジュエリーデザインからキャリアをスタートしたカーリさんにとって、ヴィンテージのビーズや手芸小物は、とくに愛着があるもののひとつ。
▲カーリさんが開発した新しい刺繡枠、「フレンチエンブロイダリーフープ」。真鍮の外枠に、スチールコイルワイヤーをカチッとはめるという仕組み。
「French General」では、布を使ったピースワークをはじめ、その道のエキスパートを講師にさまざまなワークショップを開催しているそう。サイトをのぞいてみると、ビーズジュエリー、刺繡、ウィービング(手織り)、さらに刺し子や絞り染めまで!
「ロスに住んでいる友人知人たちが、『私も教えてもいいかしら?』と集まってくるんです。日本では、ひとりの先生にずっと教わっている方が多いのではないでしょうか? アメリカでは、やってみたいことをさまざまな先生から教わるスタイルがポピュラーになっています」
▲オーストラリアの会社、「L’Uccello」がデザインした裁縫箱とニードルブック、メジャーのキット。「Le Bouquet Francais」コレクションの生地を使用。
▲「つくりら」サイトで紹介したワークショップを見てもらうと、「私が『French General』で行っていることと共通点がありますね!」と。手仕事のワークショップというトレンドが世界に広がっていることに深く共感した様子。
ご主人の出身地の近くという“偶然”の引き合わせから、南フランスに通うようになったカーリさんですが、10年前から「FRANCE GETAWAY(フランスゲッタウェイ)」というリトリートの取り組みを行っています。
「ここ10年くらいで『リトリート』がひとつのトレンドになってきています。私が南フランスで「FRANCE GETAWAY」を始めたのも10年前。10年間で約600人の女性たちを迎えました。1グループ1週間ずつ、南フランスのシャトーに滞在します。『リトリート』は、リラックスしながら、何か新しいことを学びましょう、というもの。美味しいものを食べたり、フリーマーケットに行ったり。みんなこの1週間のために、普段は無駄使いしないで、貯金をして、南フランスにやってきます。参加者はアメリカ人とオーストラリア人が多いけれど、日本でもコーディネートしてくれる方がいたらいいですね」
▲南フランスでのナチュラルな暮らしのエッセンスがつまった『French General The French –Inspired Home』は2006年に出版された「French General」初期の頃の著書。クラフトやデコレーションのアイデアがつまっている。
後編では、つくりら記者も参加したワークショップ、イングリッシュ・ペーパーピーシングでつくる小さなヘキサゴンバッグのレポートをお届けします。
Kaari Meng(カーリ・メン)
「French General」オーナー。ニューヨークのFIT(ニューヨーク州立ファッション工科大学)のジュエリープログラムを修了後、ジュエリーデザインを手がける。1997年、ニューヨークのソーホー地区に小売店「French General」をオープン。2003年にロサンゼルスに拠点を移し、フレンチアンティークテイストの布、手芸小物などを販売する傍ら、ワークショップにも力を注ぐ。2007年より、アメリカのファブリックメーカー、Modaから「French General」コレクションを発売。フランスの田園地方の自然と人々の暮らしに魅せられ、2007年より南フランスでのリトリート、「FRANCE GETAWAY」を続け、参加者は延べ600人を越える。
https://www.frenchgeneral.com
GALLERYKTEX(ギャラリーケイテックス)
2017年1月にオープンしたレンタルギャラリースペース。テキスタイル、アパレル、ファッション雑貨を中心としたギャラリースペースとして幅広く利用されている。定期的に、modaの生地を使ったワークショップを開催している。
https://moe538.wixsite.com/galleryktex
modaの生地のお問い合わせ先
株式会社moda Japan
〒540-0027 大阪府大阪市中央区鎗屋町2-2-5
TEL: 06-6360-9240 FAX:06-6360-9241
http://www.moda-japan.com/