更新日: 2022/06/14
世界各地の伝統的なテキスタイルの色に焦点を当てた『世界の配色見本帳』。配色パターンやテキスタイルのデザイン集として学べる新しいタイプの配色見本帳です。フランスの伝統的なテキスタイルの一例を紹介します。
文:ザ・ハレーションズ 撮影:サカモトタカシ 文:つくりら編集部
16世紀後半、南仏一帯ではマルセイユの港へ上陸したインド更紗の東洋的な色彩や文様に魅せられ、ヨーロッパで最初の更紗の生産が始まる。その後、フランス王朝が渡来プリントの輸入や製造を禁じた時代を経て、1806年にソレイアードの前身となる工房が誕生。
そこでは「トワルパント」と呼ばれる版木染めの技法でプロヴァンス地方の植物染料から生まれる美しい色と独特なモチーフが溶け合い、独自のプロヴァンス・プリントへと発展、1939年にソレイアードが誕生した。今ではプロヴァンス・プリントの伝統を残す唯一のブランドで、モード界へ影響を与え続けている。画家のピカソもファンの一人だったという。
【配色イメージ】
フランス最南端、サン・ロラン・デュ・セルダンで生まれたテキスタイルブランド「レ・トワール・デュ・ソレイユ(太陽の生地)」。ミロやダリ、ピカソなどに影響を与えたスペイン・カタルーニャ地方と同じ文化圏の村で、フランスの街の色、食の色、建物の色などをテーマに昔ながらの製法で紡がれている。照りつける太陽と豊かな土壌を思わせる鮮やかな色たちが、ストライプ状に配置されているのが特徴。
【配色イメージ】
18世紀後半から19世紀半ばにかけ、パリ近郊の町ジュイ・オン・ジョザスの工場で作られたプリント生地「トワル・ド・ジュイ」。当時流行ったのどかな田園風景(パストラル)に牧人や農夫、語らう男女、狩りを楽しむ人々と動物などがプリントされているのが特徴。主には「カマイユ」と呼ばれる単色の濃淡・明暗のみで描く技法で、ロココ様式の風景画のように美しく表現されている。マリー・アントワネットやナポレオンを魅了したという逸話が残ることでも有名。
【配色イメージ】
狭義には、フランス・パリのゴブラン工場で製作されたタペストリーのことを「ゴブラン織」という。芸術的で繊細な柄を表現することができ、17世紀ルイ14世の時代以来、王室宮殿御用達のタペストリーや装飾品として使用された。広義には「綴織」全般もゴブラン織と呼ばれる。経糸と緯糸を交互に規則正しく織り、緯糸だけで模様を表現する。模様を描く緯糸には太めの糸が使われているため、立体的で重厚感のある仕上がりになる。
【配色イメージ】
【テキスタイルの問い合わせ先】
ソレイアード:TFC Japan(http://www.tfcjapan.jp/)(https://www.e-craf.com/c/souleiado/)
レ・トワール・デュ・ソレイユ(http://lestoilesdusoleils.com/)
トワル・ド・ジュイ:D&T FRANCE(https://dt-france.com/)
Instagram:@tsukurira0714
Twitter:@tsukurira0714
【書誌情報】
『世界の配色見本帳』
ザ・ハレーションズ著
橋本実千代監修世界各国の伝統的なテキスタイルから、配色パターンやデザインを学べる新しいタイプの配色見本帳です。
長い歴史を持つ民族的な織物や染物から、ソレイアードやフェイラー、ローラ アシュレイといった人気ブランドまで、228種のテキスタイルを掲載、配色パターンは955種!
テキスタイルごとに使用色とボリュームを、見た目の印象で置き換えた「配色バー」で示しています。すべての色にはRGBとCMYKの数値を記載しているので、印刷にもデジタルにも対応。基本的な色のしくみや、世界各国のテキスタイルの特徴や歴史的背景も解説します。国旗とは違った各国の独特なテキスタイルを学べて、新鮮な配色を楽しむことができます。クリエイティブな活動に役立つ一冊です。
ザ・ハレーションズ
編集兼ライターの武智美恵とデザイナー兼イラストレーターの伊藤智代美からなる創作ユニット。
カラフルな色が大好きで「色」と「編み物」にまつわる著書を多数出版。ザ・ハレーションズ名義では『世界のパンチカラー配色見本帳』(ピエブックス)、『かぎ針編みのモチーフ 色づかいと配色の見本帖』(誠文堂新光社)、『かぎ針で編むモチーフデザインBOOK』(日本文芸社)などがある。
www.facebook.com/halations
橋本実千代
婦人服地のテキスタイル卸売会社に11年勤務後、色彩講師の道へ。クリエ・スクール、跡見学園女子大学他、企業、個人向けに色彩教育を行う。テレビ、雑誌、新聞の連載等でも活躍。
日本色彩学会正会員 色彩検定協会認 定色彩講師 東京商工会議所認定講師。
近著は『世界でいちばん素敵な色の教室』、『366日 日本の美しい色』/監修(三才ブックス)。