更新日: 2022/02/15
伝統模様から創作模様まで、3人の作家によるこぎん刺しの図案集『連続模様で楽しむ はじめてのこぎん刺し』(日本文芸社 編)から、その歴史や作品を紹介します。ひとつでも、組み合わせでも、ひろがるデザインに、こぎん刺しの楽しさを実感できます。
撮影:蜂巣文香 文・編:日本文芸社
こぎん刺しが生まれた背景や、模様の成り立ちを知ることで、こぎん刺しはもっと楽しくなります。
代表的なこぎん刺しの伝統模様をご紹介します。
▲上段左 1,2,3,4 中段左 5,6 下段左 7,8,9
上段左から
1. かちゃらず
「豆こ」の反転模様。「かちゃ」は「裏返し」のことで、津軽弁で「裏返しにあらず」という意味。
2.豆こ(よみ:まめこ)
もどこを構成する基礎模様の1つ。もどこ同士をつないで大きく展開させるときに使われる。
3.花こ(よみ:はなこ)
もどこを構成する基礎模様の1つ。「結び花」や「花つなぎ」など、「花こ」を応用した模様は多い。
4.石畳(よみ:いしだたみ)
城下町の石畳を思わせる、シンプルで美しい模様。模様同士をつなぐときにも使われる。
中段左から
5.結び花(よみ:むすびはな)
「花こ」を4つ連結させた模様で、こぎん刺しの伝統模様を構成する単位模様の1つ。
6.ふくべ(小)
単位模様の1つ。ふくべは「ひょうたん」のことで、縁起がいいモチーフとして古来、親しまれてきた。
下段左から
7.島田刺し(よみ:しまだざし)
単位模様の1つ。当時流行した、「島田結い」という女性の髪型にちなんでつけられた模様。
8.四枚菱(よみ:よんまいびし)
単位模様の1つ。「豆こ」を4つ合わせるとこの模様になる。模様を大きく展開するときに使われる。
9.小枕刺し(よみ:こまくらざし)
単位模様の1つ。日本髪が崩れるのを防ぐために当時用いられていた木枕(箱枕)を模したもどこ。
▲上段左 10,11,12,13 中段左 14,15,16 下段 17
上段左から
10.うろこ形(小)(よみ:うろこがた)
単位模様の1つ。魚のうろこを連想させる愛らしい模様。同じ名前で多くのバリエーションが存在する。
11.ふくべ(大)
単位模様の1つ。6ふくべ(小)を応用した模様で、上下を柱でつなぎ、四隅には「花こ」があしらわれている。
12.猫の足(よみ:ねこのあし)
単位模様の1つ。猫の足の裏、つまり肉球をかたどった模様で、「猫の足あと」とも呼ばれる。
13.猫のまなぐ(よみ:ねこのまなぐ)
単位模様の1つ。「まなぐ」は津軽弁で「目」の意味。猫の顔を模したユニークな模様。
中段左から
14.てこな
単位模様の1つ。津軽弁で蝶々を意味し、「てこなこ」とも。羽を広げた蝶々のような華やかな模様。
15.豆この四つこごり(よみ:まめこのよつこごり)
単位模様の1つ。「豆こ」をいくつも組み合わせた菱模様で、津軽弁で「4つの雪の塊」という意味。
16.やすこ刺し(よみ:やすこざし)
単位模様の1つ。四隅に「結び花」、中心に「豆こ」を配することで、×のようなクロスモチーフに。
下段
17.くるびから
単位模様の1つ。割れた胡桃の実をかたどった模様。四隅に「結び花」を配し、上下を柱でつないでいる。
布…DARUMA こぎん布 生成(1)
糸…DARUMA こぎん糸 カード巻 あさぎ(5)
こぎん刺しの模様をよく見ると、簡単な模様がいくつか組み合わさってできていることがわかります。中でも「かちゃらず」「豆こ」「花こ」「糸柱」「糸流れ」は「基礎模様」と呼ばれ、こぎん刺しの模様を構成するのに欠かせない最小単位の模様です。
この基礎模様を組み合わせることによって、連続模様のもとになる数々の「単位模様」が生まれました。名前のついている単位模様は20数個あると言われていますが、名前のないものも含めると、それ以上の数の伝統模様が存在します。今回紹介した模様はその一部にすぎませんが、個々の模様の成り立ちや由来を理解することで、アレンジがしやすくなります。
1目、3目、5目……と、奇数の目数で織り糸を拾いながら、横一列に刺し進めるのがこぎん刺しのルールですが、伝統模様の中には偶数の目数で刺されたものもいくつか存在します。まずは1つ1つの図案をじっくり観察してみることが、上達への近道です。
Instagram:@tsukurira0714
Twitter:@tsukurira0714
【書誌情報】
『連続模様で楽しむ はじめてのこぎん刺し』
日本文芸社 編
デザイン・製作 hanakogin、みずのよしえ(hitoharico)、金子 梢(promener avec) こぎん刺しの図案集です。
伝統模様を中心に、手軽に楽しめるものから刺しごたえたっぷりのものまで、こぎん刺しの連続模様を多数ご紹介。単独で刺してワンポイントに。配置を変えたり、連続で刺したり、模様を反転させたり。布と糸の組み合わせを替えたりするだけでひとつの図案が、いく通りにも楽しめます。
こぎん刺しの基礎もわかりやすく解説。基本のルールを理解することで、模様を組み合わせたり、連続で刺したりと、アレンジがしやすくなります。
さらに伝統模様から創作模様まで、3人の作家によるさまざまな図案を紹介します。仕立てを加えた、コースターやブローチなどのアレンジ作品も提案しています。これまでこぎん刺しを楽しんできた方にも、デザインの広がりを感じていただける一冊です。