更新日: 2021/03/17
まずは小さなキリムを誰でも気軽にはじめられるようにと、Koyun由紀子さんが工夫した『はじめての、小さなキリムと小物たち』。のびのびと織りの時間を楽しみましょう。
文:Koyun 由紀子、つくりら編集部 撮影:寺岡みゆき、天野憲仁(日本文芸社)
中央アジアから西アジア、北アフリカにかけて、乾燥地帯や草原地帯で羊とともに生活をしてきた遊牧民。キリムは生活の必需品として、女性たちが家事や育児の合間に祈りや願いを込めて織った家財道具です。生まれたときから家族が織ったキリムに囲まれて育ち、女の子なら嫁入り道具のひとつとして、母から娘へと伝承されてきました。
チチェッキ/花[左]
自然への賛美の象徴で、豊かな実りを願うモチーフ。永遠に続く幸福への願いが込められています。
<使用糸>
オリジナル糸:タテ糸、1 薄ベージュ、4 薔薇、17 薄緑
DMC:7491、7491、7758、7404
*作品はオリジナル糸使用
ベレケット/豊穣[右]
くもが巣を作るように、キリムを織ることは創造的なことであり、豊穣へとつながっていくと考えられています。
<使用糸>
オリジナル糸:タテ糸、1 薄ベージュ、3 桃、17薄緑、33 茶
DMC:7491、7491、7760、7404、7525
*作品はオリジナル糸使用
キリム織りとは?
タテ糸とヨコ糸が一本ずつ交互に直角交差した組織を平織りといい、キリム織りも平織りの一種です。平織りには、ヨコ地合、タテ地合、平(タテヨコ)地合の3種類があります。
糸の密度によって異なり、キリムはヨコ糸の密度が高い「ヨコ地合の平織り」です。このヨコ地合の織物を日本では綴織、欧米ではタピスリーと呼びます。
平(タテヨコ)地合/図左
平方間でタテ糸とヨコ糸の数がほぼ同数のもの。タテ糸もヨコ糸も同じ分量見え、比較的やわらかい布となります。
ヨコ地合/図中
ヨコ糸の本数がタテ糸の本数より密なもの。ヨコ糸でタテ糸を包み込むように織るため、タテ糸は見えなくなります。
タテ地合/図右
タテ糸の本数がヨコ糸の本数より密なもの。ひもなどタテ方向の強度を求めるものに多いです。
Koyunオリジナル糸の購入は
全38色の太めのキリム織り専用の糸です。タテ糸(白)もあります。
WEBで購入可能です。
DMCのタペストリーウールの購入は
手芸店やWEBでも購入可能。
*オリジナル糸より細いので、完成品も小さくなります(本書p.48掲載)。
株式会社越前屋
https://www.echizen-ya.net/
つくり方の詳細は、本書掲載の織り図とポイントをご参照ください。
Instagram:@tsukurira0714
【書誌情報】
『はじめての、小さなキリムと小物たち』
著者:Koyun 由紀子「キリム」とは、アナトリア高原を中心とする遊牧民たちによって受け継がれてきた伝統的な織物のこと。エキゾチックな文化と歴史に育まれてきた独特の文様、色彩が魅力です。
キリムに魅せられたKoyun 由紀子さんが、現地で修業した技法をシンプルにわかやすくまとめ、すべて図案を掲載しています。はじめの1枚のシンプルなコースターなら、いつもの手芸と同じ気分で取り組めます。キリムのモチーフにこめられた、遊牧民らしい願いや祈りの意味も紹介します。
日本ではほとんど手に入らない糸の購入先を掲載しています。手芸店で一般的に手に入る糸も紹介しているので本格的な糸と、トライしやすい糸、お好きな糸ではじめられます。
暮らしに取り入れやすいよう、小物もたくさん紹介。巻末にはKoyun由紀子さんの作品やオールドキリムを掲載しています。キリムの魅力が満載です。
Koyun 由紀子
1996年トルコに渡航、現地でキリム織りを習得し、1998年キリム教室をスタートする。現在、キリム手織り工房koyun主宰。グァテマラでもマヤ織りを習得するなど、その活動は多岐に渡り、プリミティブテキスタイルの研究・伝承を行っている。個人教室のほか、NHK文化センターなどでも講師を務める。個展・合同展示会も多数開催。2019年に初めての著書『はじめての、小さなキリムと小物たち』(日本文芸社)を上梓。
ホームページ:https://kilimkoyun.thebase.in/
インスタグラム:@kilimkoyun