更新日: 2021/10/14
『植物刺繡と12か月のおはなし』の作品撮影での偶然や、撮影時のエピソードも。マカベさんがどんなふうに季節を感じて、それをどのように作品という「形」に仕上げていくのか。フリー編集者・須藤さんが感じたこと。編集後記の最終話です。
撮影:マカベアリス、清水美由紀、奥 陽子(マカベさん) 文:須藤敦子、つくりら編集部
メインのロケ場所として、松本のカフェ「栞日」さんをお借りしました。なんとマカベさんも以前、松本にいらしたときに「栞日」さんに立ち寄ったことがあるとのこと。嬉しい偶然が重なり、“チーム松本”の息の合った撮影が始まりました。
ハウススタジオではなかなか撮れない、自然を感じるようなシーンも入れたい。
そんな思いで撮影したのは、「新緑のカバークロス」(9ページ)です。この場所は、「クラフトフェアまつもと」の会場としても知られる、あがたの森公園です。
「ハーブ刺繍のひもつきポーチ」(16ページ)は、まつもと市民芸術館の屋上で撮影。もうあとちょっとで太陽が隠れてしまう、夕方に近い午後でした。
この本には、清水さんに撮影してもらった写真のほかに、連載時にマカベさんご自身に撮影してもらった写真も多数入っています。作品に仕立てる途中の写真や、それにまつわるエピソードの写真まで収録した丁寧なつくりになっています。
この本は、「季節の物語を刺繍で語った本」とも言えるのではないかと思っています。本書のサブタイトルとして版元さんがつけてくれた「季節の中で感じること、考えること、それが形になるまで」は、まさにそのことを言い表しています。
マカベさんがどんなふうに季節を感じて、それをどんなふうに作品という「形」にしていったのか。本書では「作品づくりのアイデアノート」(52、53ページ)として、具体的なエピソードも収録しています。
「うつりゆく季節の美しさに心を動かされ、
それを縫い留めるように刺繍する。
生地の感触を確かめ、糸の色を選び、
ひと針ひと針、植物のモチーフを描いていく。
12か月をめぐるそんな喜びを綴りました」
上記は、書籍の制作の最後にマカベさんが綴ってくれた巻頭言。この本の内容をこれほどまでに端的に、そしてこんなに美しくまとめてくれるとは。インタビューで初めてお会いしたときから本の制作まで、ともに過ごさせてもらった幸運に感謝するばかりです。
Instagram:@tsukurira0714
【書誌情報】
『植物刺繡と12か月のおはなし』
著者:マカベアリス
「つくりら」で、昨年1年間連載された人気エッセイ「植物刺繍と季節のお話」で発表したポーチやバッグなどの小物作品12点に、リースやサンプラーの新作23点を加えた全35作品を掲載。
4月から始まって3月まで、12か月の季節の移ろいや草花、風景を切り取り、刺繡で表現。全作品の実物大図案と作り方を紹介しています。電子版でも図案のダウンロードができます。
マカベさん自身が季節の中でどのように題材を得、どのようにそれを形にするかを垣間見ることができ、オリジナルの刺繡作品制作のヒントがたくさん詰まっています。エッセイで紹介された季節のモチーフをデザインする過程や、布の素材や糸の色選び、刺し方のコツ、などについても、ポイントを押さえて収録しています。
マカベアリス
刺繍作家。手芸誌への作品提供、個展の開催、企画展への参加、ショップでの委託販売などで活動中。著書に『野のはなとちいさなとり』(ミルトス)、『植物刺繍手帖』(日本ヴォーグ社)、『刺繍物語 自然界の贈りもの』(主婦と生活社)。共著に『彩る 装う 花刺繍』『植物刺繡と12か月のおはなし』(日本文芸社)ほか。季節の流れの中に感じる、小さな感動や喜びをかたちにしていけたら…と 日々針を動かしている。
https://makabealice.jimdo.com/
須藤敦子
出版社勤務を経て、フリーの編集者に。「つくりら」には立ち上げから参加し、2020年9月まで編集ディレクションを務める。企画・編集した書籍に『Flower Noritake』『二十四節気 暦のレシピ』『パリスタイルで愉しむ 花生活12か月』『植物刺繡と12か月のおはなし』(日本文芸社)、『Calligraphy Styling』『Calligraphy Lifestyle』『amenote』(主婦の友社)などがある。