更新日: 2021/08/20
斎藤由美さんが『パリスタイルで愉しむ 花生活12か月』を通じて伝えたかったこと。フリー編集者・須藤敦子さんが由美さんから受け取ったメッセージを凝縮した編集後記の最終話です。
撮影:斎藤由美 文:須藤敦子、つくりら編集部
『パリスタイルで愉しむ 花生活12か月』の表紙の花は、チューリップ。ピントの合った一輪のチューリップは、咲きたてというより、すこししおれています。
表紙カバーにどの写真を使うか。いくつかの案がありました。どの写真も魅力的だったのですが、最終的にこのしおれたチューリップが選ばれたことが、この本を象徴しているように思います。なぜなら、この本を通じて由美さんが伝えたかったことのひとつが、「朽ちていく姿の美しさ」だったからです。
そんな思いもあり、チューリップの月、3月の文章は2つ書いてもらいました。「朽ちていく花の美しさを愛でる」という題をつけた文章の中で由美さんは、チューリップはしおれていく姿がハッとするほど魅力的で、すっかり枯れてしまうまで変化を愉しんでいると綴っています。
「どんな瞬間にも美しさが宿っていることに気づいたら、年齢を重ねることを恐れずに、そのときどきを謳歌していこうと思えます」。これは、この本のプロローグに由美さんが書いた文章ですが、私自身、この言葉に共感し、そして、とても励まされました。
花であれ、人であれ、「どんな瞬間にも美しさが宿っている」。
そう気づくことで、心の持ちようも、ものの見方もずいぶん変わります。
『パリスタイルで愉しむ 花生活12か月』は、花の本であって、花の本にあらず。うつろう季節に合わせてページをめくれば、そのときどきの「美しい姿や言葉」に出会える本です。自分自身の心境や変化によって、心に響く言葉も写真も変わります。
読み返すたびに新しい発見がある、人生の愛読書。つくりらの連載、そして書籍の編集を通じ、斎藤由美さんに伴走してきた私ですが、この『パリスタイルで愉しむ 花生活12か月』という本が、私の人生の伴走者となりました。
Instagram:@tsukurira0714
【書誌情報】
『パリスタイルで愉しむ 花生活12か月』
著者:斎藤由美パリ在住のフラワーデザイナー、フォトエッセイストとして活躍する斎藤由美さんが、「花のある暮らし」をテーマに12か月の花を紹介します。
華やかな作品や暮らしに溶け込む花あしらいなど、パリの街に咲き誇る花々の美しい表情を切り取った、たくさんの写真とともにお伝えします。
すぐにでも生活に取り入れられる花活けのテクニックや、由美さんがいち早く日本に広めたシャンペトルブーケに、コンポジション・スペシャル、キューブワークのプロセス解説も。
20年以上パリに暮らし、由美さんが感じた、個性を重んじるフランスの生き方や、花と人、真の豊かさについて綴るエッセイに、心豊かに生きるヒントを見つけることでしょう。ページをめくるたびにパリのエスプリも感じる、心のエステになる一冊です。
斎藤由美
パリ在住フラワーデザイナー/フォトエッセイスト。信州で花教室主宰後、2000年パリへ花留学。著名なフラワーアーティストの元で修行。コンペに勝ち抜きホテル・リッツの花装飾を担当。現在は驚異のリピート率を誇るパリスタイルの花レッスンと執筆が主な活動。花市場と花店視察など研修ツアーも手がける。著書に『シャンペトルのすべて』『コンポジション』『二度目のパリ』などがある。
インスタグラム: @yumisaitoparis
ブログ「パリで花仕事」:https://ameblo.jp/yumisaitoparis/
須藤敦子
出版社勤務を経て、フリーの編集者に。「つくりら」には立ち上げから参加し、2020年9月まで編集ディレクションを務める。企画・編集した書籍に『Flower Noritake』『二十四節気 暦のレシピ』『パリスタイルで愉しむ 花生活12か月』『植物刺繡と12か月のおはなし』(日本文芸社)、『Calligraphy Styling』『Calligraphy Lifestyle』『amenote』(主婦の友社)などがある。