更新日: 2021/08/15
パリの空気感までも伝える、斎藤由美さん撮り下ろし写真がふんだんに収録された『パリスタイルで愉しむ 花生活12か月』。ページをめくる度に、見惚れて思わずため息がでてしまいます。編集後記4回目は巻頭の写真集ページの制作課程のお話です。
撮影:斎藤由美 文:須藤敦子、つくりら編集部
「花があったら、暮らしはもっと輝く」。
それを伝えるためには、「花のある暮らし」をさまざまな角度から見せていかなくては。
「花のある暮らし」を、月ごとに「季節の花」という切り口で見せていったのが「つくりら」の連載。書籍でももちろん、この部分がメインになっていくわけですが、それだけに終始することなく、この本では、違ったアプローチでも「花のある暮らし」を見せていきたい。
例えて言うなら、そう、ミルフィーユみたいな。サクッとしたパイ生地、こっくりと甘いクリーム、じゅわっとした瑞々しいフルーツ……。異なる層がいくつも重なって、ミルフィーユというお菓子を成しているみたいに、この本も「味」の異なるまとまりをいくつか重ねていけたら。
そんな思いででき上がった「まとまり」のひとつが、巻頭の写真集のようなページです。
この巻頭ページは、「パリの花生活」というテーマのもと、由美さんから撮り下ろしの画像を送ってもらいました。何度も何度も送ってもらったので、その数は数百枚、いや、数千枚に及ぶかもしれません。
制作中のハプニングといえば、見開きで大きく使おうと思っていた写真が、最後の最後に、若干ピントが微妙なのが気になって、ボツにしてしまったこと。どうしても見開き1カットのページが欲しかったので、由美さんに撮り下ろしてもらっては、翌日、セレクトして高橋さんにデザインをお願いする、という、日刊紙のような日が数日続きました。
最終的に見開きの写真は、METROPOLITANという地下鉄のサインが入った写真で決着。次ページには、セーヌ川を背景にした紅葉と、由美さんのご自宅から撮影した虹の写真を配しました。花が写っていないこんな写真も織り交ぜたところに、パリの空気感までまるごと伝えたいという、制作チームの思いが込められています。
写真のセレクトと順番は、デザイナーの高橋さんにお願いしました。静かに始まり、だんだんと華やかさが増し、満開の花で絶頂を迎え、最後は朽ちた花で幕を引く。まるで「花のある風景」という無声映画のようだと思っています。
Instagram:@tsukurira0714
【書誌情報】
『パリスタイルで愉しむ 花生活12か月』
著者:斎藤由美パリ在住のフラワーデザイナー、フォトエッセイストとして活躍する斎藤由美さんが、「花のある暮らし」をテーマに12か月の花を紹介します。
華やかな作品や暮らしに溶け込む花あしらいなど、パリの街に咲き誇る花々の美しい表情を切り取った、たくさんの写真とともにお伝えします。
すぐにでも生活に取り入れられる花活けのテクニックや、由美さんがいち早く日本に広めたシャンペトルブーケに、コンポジション・スペシャル、キューブワークのプロセス解説も。
20年以上パリに暮らし、由美さんが感じた、個性を重んじるフランスの生き方や、花と人、真の豊かさについて綴るエッセイに、心豊かに生きるヒントを見つけることでしょう。ページをめくるたびにパリのエスプリも感じる、心のエステになる一冊です。
斎藤由美
パリ在住フラワーデザイナー/フォトエッセイスト。信州で花教室主宰後、2000年パリへ花留学。著名なフラワーアーティストの元で修行。コンペに勝ち抜きホテル・リッツの花装飾を担当。現在は驚異のリピート率を誇るパリスタイルの花レッスンと執筆が主な活動。花市場と花店視察など研修ツアーも手がける。著書に『シャンペトルのすべて』『コンポジション』『二度目のパリ』などがある。
インスタグラム: @yumisaitoparis
ブログ「パリで花仕事」:https://ameblo.jp/yumisaitoparis/
須藤敦子
出版社勤務を経て、フリーの編集者に。「つくりら」には立ち上げから参加し、2020年9月まで編集ディレクションを務める。企画・編集した書籍に『Flower Noritake』『二十四節気 暦のレシピ』『パリスタイルで愉しむ 花生活12か月』『植物刺繡と12か月のおはなし』(日本文芸社)、『Calligraphy Styling』『Calligraphy Lifestyle』『amenote』(主婦の友社)などがある。