更新日: 2019/10/30
藤原連太郎さん、Shabomaniac!さん監修の『珍奇植物 ビザールプランツと生きる』より、世界が愛してやまない不思議な植物たちをご紹介します。
水玉のような可愛らしい姿には
生き抜くための工夫が詰まっている
コノフィツムは、リトープスとならんで、いわゆるメセン類(ハマミズナ科 Aizoaceae)を代表する高度多肉植物。属名はギリシャ語で『円錐形の植物』の意味で、この仲間の葉が円錐形をしている種が多いことから名付けられた。およそ110種が年間降水量50〜300ミリ未満の砂漠が広がる南アフリカ西部に分布し、特にナマクアランドに多様化の中心がある。
すべての種が多肉植物で、丸い玉のように見えるのは茎の先端にある一対の葉が融合したものである。その姿は実に多様で、透明な窓を持つ種や、色と形模様にも様々なものがある。主に秋に咲く花の色は白・黄色・桃色などがあり、夜に咲くもの・香りを放つものもあって多彩だ。
本属の植物は『脱皮をする』植物として有名である。生育期は秋から春で、暑く乾燥した夏は休眠する。春になると、そのシーズンの葉は干からびた皮のようになり、それに守られる形で翌シーズンの葉が入れ替わるように成長する。旧葉の水分を受け取った新葉は干からびた旧皮を破って次の成長期に姿を表す。
観賞植物として世界的な人気を集めるコノフィツムだが、各種の自生地が局限されることや、過放牧や鉱山開発、違法な採集などで多くは稀少種となっており、既に野生では絶滅した種もある。
珍奇な植物とは奇態なるものと思いがちだが、ブルゲリはその単純すぎる姿ゆえにビザールプランツの頂点に立つ。半球形水玉のような植物体には、ひっこみもでっぱりもなく、ツルツルでゼリーのように透明。おそらくすべての植物のなかでも、これほどシンプルでディテイルを持たないものは、他にない。ふつう単頭で育ち、二枚の葉は完全に融合して直径2〜3cmのたまねぎ状となる。学名は自生地のある土地の持ち主で、発見者でもあるウィリアム・バーガー Willem Burger への献名。唯一の自生地はナミビア国境に近いナマクアランドにあり、半透明の石英の小石に覆われている。年間降水量は50ミリ足らずで、冬も乾くが霧がしばしば発生するという。ブルゲリは石に半ば埋もれて生きている。栽培下では旧皮を取り除きツルツルの姿を楽しむことが多いが、本来は過去の葉の残骸である薄皮で幾重にも体を包んで強い日差しと乾燥から身を守っている(下の写真)。花は先端のわずかな割れ目から秋に咲く。自生地での個体数は250株未満。種子からの育成は難しくなく、広く栽培されるようになった。
“多肉植物”ブームの中、今世界中から注目を集めているのが、塊根植物やディッキアなど“珍奇植物”と言われる見た目が変わった植物たち。盆栽のような見た目、デザイン・アート性に優れたその特徴は、インテリアとして部屋によくなじみ、写真映えも◎。
本書は、独特な特徴や育て方、自生地を詳細解説するとともに、今回、まだどこにも載っていない、北アメリカ、南アフリカ、オセアニアなどのレアな珍奇植物もたくさん掲載している完全保存版!
【書誌情報】
『珍奇植物 ビザールプランツと生きる』
珍奇植物と言われる、姿形に特徴があり、その生態も非常に個性的な植物たちがいま注目されています。その変わった植物たちの特性や自生地の環境など、共に珍奇植物たちと暮らしていくための他にはないヒントがたくさん詰まった実用書です。
藤原連太郎
新しい価値を提供する園芸用品と植物のショップTOKYの代表兼ディレクター。植物好きが昂じて2014年に同店のネットショップを立ち上げ、2016年には東京日本橋に実店舗をオープン。作家物やセレクトの植木鉢のほか、自社オリジナルアイテムも多数手がけている。
Shabomaniac!
幼少よりシャボテン・多肉植物に惹かれ、栽培歴40年の園芸研究家。幅広く様々な科、属の植物を育て、栽培困難種の実生や、新種の輸入にも早くから取り組んだ第一人者。自生地を度々巡り、開設から10年を迎えるブログには実体験に基づく栽培法と、自ら長期間育成した美しい植物の写真が並ぶ。