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パリスタイルで愉しむ 花生活12か月 第20話 ラナンキュラス

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フラワーデザイナー&フォトエッセイスト斎藤由美さんの連載、「パリスタイルで愉しむ 花生活12か月」。第20話はラナンキュラスのお話です。

撮影・文:斎藤由美

シルクのようになめらかな花びらが無数に重なり、マカロンのようにコロンとしたラナンキュラス。バラに次いで人気の高い花です。白、黄、オレンジ、ピンク、赤、紫、黒に近いボルドーなど、豊富なカラーバリエーションも魅力的。

豊富なのは色だけではありません。直径が1cmほどの「マイクロ咲き」から、開くと10cmにもなる「ローヌ咲き」のように花の大きさもいろいろ。斑入りのモロッコシリーズはその珍しさから1本が2000円近くしたのに、パリでも大人気でした。さらに2週間近く愉しめる「持ちのよさ」も好まれる理由でしょう。

 

バラに負けない存在感はブーケづくりに

ローズバッド・フローリストでは「ハノイ」という薄いピンクの大輪系が冬の主役です。バラに負けない存在感があり、茎も長くしっかりしているので、ブーケをつくるとき頼りになる存在。柔らかい色のユーカリと組み合わせるのが定番です。

ラナンキュラスは10月から4月と出回る期間が長く、出始めは紅葉したカエデと一緒に、出荷が終わるころは桜やリラと組み合わせてレッスンできます。同じ花でも添える葉もので印象ががらりと変わるのがおもしろいですね。

 

ヴェルサイユ宮殿で撮影した花嫁のブーケ

数年前の秋、日本に住む娘が結婚しました。そこで新婚旅行はパリに来てもらい、私はこちらで祝うことに。まずは娘と花市場に行き、ブーケ・ド・マリエ(花嫁のブーケ)用の花を選びました。「温度の低い色合わせがいい」という希望で、白いラナンキュラスと、ユーチャリス、シルバーリーフのラムズイヤーまではすぐに決まったのですが、もうひとつ、なにかインパクトのあるものがほしい、オリジナルなブーケにしたい、と考えた私が見つけたものは「コケボク」。細い枝は折れやすく、どれ1つとして同じ形はないうえに、ぐにゃぐにゃと曲がる枝を繊細なブーケに組み込んでいくのは難しかったのですが、まるで粉雪が舞い降りた森のように、静謐な雰囲気のブーケができました。

花びらが傷つかないよう、完成したブーケは包まずに、そのまま持って電車に乗りました。向かう先はヴェルサイユ宮殿。せっかくなのでフランスらしく、思い出に残る機会にしたいと考え、宮殿内にオープンしたばかりのアラン・デュカスのレストランでランチを予約していたのです。

このレストランは、パリのホテル・プラザアテネを始め、世界でもっとも多くの星を持つ有名シェフの新しい店。宮殿内ではありますが、三ツ星レストランよりずっとカジュアルです。来ている人たちも歩きやすい靴とラフな服装の人たちが多く、かしこまらずにフランス料理を愉しむことができました。レストランで食事をした人は、宮殿へ直通のドアから並ばずにアクセスできます。15時過ぎていたこともあり、訪問者は少なく、ブーケの撮影も思うようにできました。そうなんです!驚くことにセキュリティチェックで咎められることなく、ブーケを持ったまま宮殿に入れたのでした。

 

フランス人は花を持っている人に優しい

パリでのレッスンに参加された方々から「ブーケを持ってバスに乗ったら、席を譲ってもらえました」、「すれ違う人たちが微笑んでくれたり、きれいだねって声をかけてくれたりしました」と報告があるように、フランス人は花を持っている人に優しく、寛大な気がします。私の知る限り、混んでいるメトロの中で大きなブーケを持っていても文句をいわれたことはありません。

その経験上、もしダメだといわれたら預けるか袋に入れることにして、ヴェルサイユ宮殿にも堂々と自作のブーケを持って入り、撮影することができたというわけです。宮殿から出ると、まるで祝福してくれているかのような二重の虹が出ていました。

その後、エッフェル塔の前でもブーケを持って記念撮影し、近くのカフェで乾杯。私ができることはそのくらいでしたが、市場での花選びから娘と一緒にできたことは記憶に残り、私ならではの餞(はなむけ)になったのではと思っています。

 

花活けは草花を組み合わせて立体的に

ラナンキュラスは茎が腐りやすいので、花器の水は少なめに。傷んだ茎は短く切り、ゴブレットや薬瓶に飾っています。花が丸いので思い切り段差をつけ、間にくねくねと曲がる草花を組み合わせると、立体的で生き生きとした花あしらいになります。

これからどんどん日が短く、寒くなりますが、ラナンキュラスの愛らしい形と色が気持ちを明るくしてくれるでしょう。長持ちする花なので「何を買ったらいいかわからない」という、花・初心者の方に、とくにおすすめです。

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