インテリア, ハーブ, フラワーアレンジメント, フランス, ブーケ, 暮らし, 植物, 花
インテリア, ハーブ, フラワーアレンジメント, フランス, ブーケ, 暮らし, 植物, 花
更新日: 2020/07/15
フラワーデザイナー&フォトエッセイスト斎藤由美さんの連載、「パリスタイルで愉しむ 花生活12か月」。第12話は、名脇役の葉もの、フォイヤージュのお話です。
撮影:斎藤由美、石橋善子(インテリアフラワー) 文:斎藤由美
パリスタイルとよばれるブーケに「必須の花材」があります。それはフォイヤージュと呼ばれる葉ものです。
日本からレッスンに来てくださるフローリストたちは「『葉っぱはいらないから花だけで花束作って』というお客様がいる」と困った顔。花だけのブーケにしたら豪華になると思われているようですが、花の色を引き立て、花同士が重ならないようクッションになり、ボリュームを出してくれる葉ものは名脇役。
シャンペトル(野山の風情)が好きなフローリストたちは、脇役というより葉もの、実、枝だけのブーケを作ることもよくあります。とくに夏は、爽やかなグリーンで目から涼を感じることができ、暑さにも強いブーケなのでおすすめです。
家に飾った白バラとフサスグリのブーケは、バラがしんなりしたタイミングで解体。生き生きとしたフサスグリだけ花器に残しました。透き通っていた緑色の実がルビーのように真っ赤に色づき、水を替えるときに黄色くなった葉を取り除くと、1か月以上も生活に彩りを与えてくれたのです。
葉ものも含め、切り花は毎日水を替え、茎と花器を流水で洗ってぬめりを取ると、腐敗の原因であるバクテリアの繁殖を抑えられます。その際、切り戻し(切り口を斜めにカット)すると花材が水を吸いやすくなり、より長く保つことができます。このような手入れ法を見ると少々面倒に思えますが、実際やってみると、自分自身もすっきりリフレッシュできることに気づきました。また思っているより短い時間ででき、丁寧な暮らしをしているみたいで、すこぶる気分がよくなります。ぜひ試してみてください。
春以降、どんなブーケにも使える万能選手、ビバーナムにあれほどお世話になりながら、先端が繊細なフワンボワジエ(キイチゴの葉)が登場すると、値段が高くても、出始めでボリュームが少なくても飛びついてしまいます。同じ時期に出回るアジサイと組み合わせると、ボテっとした面になりがちなブーケに、立体感と軽やかな動きを出してくれます。7月は葉だけでなく、真っ赤な実付きのフランボワジエが入荷します。ローズ・ド・ジャルダンと合わせたら、女子力がギュンと上がる可愛らしさです。
フランスのフローリストに人気の葉ものは、パリから車で約1時間、南西に向かったシェライユという村で栽培されています。クリストフは葉や枝を専門に扱う「フォイヤジスト」。週に2回、トラックに切り立てのグリーンを乗せて、パリの花店を回ります。
クリストフの最初にして最大の顧客は、今から30年以上前、当時のフローリストたちが花材とみなしていなかった葉や枝をブーケに取り入れ、パリの花業界に革命を起こしたといわれるフラワーアーティスト。私の修業先でした。以来、私も特別な仕入れが必要なときは、クリストフの畑を訪問しています。
数年前のパリ花留学中、パリ6区のフラワーショップ「ローズバッド」で研修したYさんが栽培にも興味を持ち、クリストフの畑で研修。そのご縁でシェライユに移住し、自ら切り出す新鮮な花材をYさんのセンスでまとめ、パリに届ける仕事を始めました。花を受け取った人から、自然に囲まれたシェライユに行ってみたいという声が続出。Yさんに訪問ツアーを企画してもらうことになりました。
夏は無農薬で完熟のフランボワーズをもいで食べながら、広大な畑を散歩できます。長年花の仕事をしているとはいえ、切り花の状態でしか見たことのない花が多く、このように生えているのかと発見、驚きの連続です。
葉ものをたっぷり使う、自然なデザインが好きなフローリストたちの要望により、日本でも栽培農家さんが現れ、フランボワジエが手に入るようになりました。とはいえ、近くのお花屋さんで普通に買える花材ではないはず。前述のフサスグリは比較的、見つけやすいと思います。他にスモークツリー、ドウダンツツジ。ミズキ、赤い実のビバーナムコンパクタなど、枝ものも季節のおすすめ花材。バラやヒマワリと合わせても、単独で飾ってもきれいです。
自粛期間中、花や緑に癒されたいという声を受け、東京の花仲間が「インテリアフラワー」の配達、配送を始めました。基本的に、枝ものと旬の花の2種類で構成。長持ちしすぎて、次の注文がなかなか来ないそうですが、個人では調達しにくい丈の長い枝ものが好評です。
庭やベランダがある場合は、ハーブを植えるととても便利。とくにミントは繁殖力が強く、どんどん増えるので惜しみなく使えます。我が家でも花がないときはハーブを摘んでグラスに飾ります。グリーン1束でもあるのとないのとでは大違い。ここから1枝抜いて、アペリティフのお供に。自家製モヒートにも大活躍です。
葉が少なくなったら短く切ってキッチンの棚に。洗い物をするとき、ふっと気持ちが和むものです。道路脇で摘んだ花と一緒にヨーグルトの空き瓶に入れて、バスルームでも爽やかな香りを愉しみます。時間も手間も費用もかからない、こんな気負わない花の愉しみ方が夏に似合う気がします。
斎藤由美
パリ在住フラワーデザイナー/フォトエッセイスト。信州で花教室主宰後、2000年パリへ花留学。著名なフラワーアーティストの元で修行。コンペに勝ち抜きホテル・リッツの花装飾を担当。現在は驚異のリピート率を誇るパリスタイルの花レッスンと執筆が主な活動。花市場と花店視察など研修ツアーも手がける。著書に『シャンペトルのすべて』『コンポジション』『二度目のパリ』などがある。
インスタグラム: @yumisaitoparis
ブログ「パリで花仕事」:https://ameblo.jp/yumisaitoparis/
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