インテリア, フラワーアレンジメント, フランス, ブーケ, 暮らし, 植物, 花
インテリア, フラワーアレンジメント, フランス, ブーケ, 暮らし, 植物, 花
更新日: 2020/06/03
フラワーデザイナー&フォトエッセイスト斎藤由美さんの連載、「パリスタイルで愉しむ 花生活12か月」。第9話は、お待ちかね、バラのお話です!
撮影・文:斎藤由美
「花」といえばバラを想像する人が多いのではないでしょうか。どんなに花に疎くてもバラを知らない人はいないと思います。知人の花屋さんに「どの花が人気ですか?」と聞くと「やっぱりバラが圧倒的に人気だね」。世界中でもっとも愛され、たった1本で愛を告白できる花。バラはまさに「花の中の花」といえるでしょう。
フランスの5月中旬から6月は、まぶしい青空と木々の緑をバックにバラが咲き誇る美しい季節です。夜10時近くまで明るく、ソルド(セール)もあり、レッスンにはローズ・ド・ジャルダンが登場します。ローズ・ド・ジャルダンとは、庭で咲いているようなナチュラルな姿のバラの総称です。
梅雨の日本を脱出して、パリに来る方が多いこの時期。ここ数年、毎年6月に中国からパリ花研修ツアーのグループを迎えています。
昨年は、パリから西へ電車で約1時間、サンジェルマン・アン・レイという市にある貴族の館が会場に。ここは現在、ホテルのように一般に貸し出しているので、2階、3階の部屋に滞在しながらの4泊5日パリ研修ツアーでした。
パリ到着の翌朝はランジス花市場へ。まずはバラとピヴォワンヌが競演、一段と華やかで活気にあふれる生産者さんのコーナーを訪問します。見慣れた規格品のバラとは違い、1本ずつ形が違う長い枝バラ。数えきれない花びらを擁するオールドローズ。丈が20cmもないバラ、茎が細くて立派な花を支えきれずしなっているバラ・・・私たちの感覚からすると商品にはならないような形状でも、忘れがたい香りと魅力を放っています。初めて見るローズ・ド・ジャルダンにみなさんから感嘆の声があがりました。
ランジス花市場内のカフェでランチをとった後は、車で15分ほどの森へ。市有地ですが、知人を通して許可を得ることができ、自ら採取した草花で「本物のシャンペトルブーケ(野山のブーケ)」をつくるのです。ツアーメンバーの住む広州市は香港に近い中国沿岸部。高いビルが立ち並び、道路は6車線という大都市なので、「ぜひ自然の中で花に親しむ経験がしたい」とリクエストがありました。
次の日はパリのトップフローリスト「ローズバッド」オーナー、ヴァンソン・レサールのレッスンとデモンストレーション。爽やかな風が吹き抜ける木陰で、ローズ・ド・ジャルダンを使ったブーケが次々にできました。
続いて貴族の館のサロン(居間)で、枝バラを使った投げ入れのデモンストレーションを見学します。暖炉の前に置くアレンジメントをヴァンソンと参加者全員で一緒につくり、庭で束ねたレッスンブーケもディスプレイ。夢のような空間でシャンパーニュとタルトをいただく忘れられない時間になりました。
花研修ツアー実質最終日は、私のレッスンとデモンストレーションです。せっかくなので贅沢なスペースを利用して、作品ごとに場所を変えてみました。キューブにリボンを巻きつけて花留めにするデザインは、とても簡単。初心者にもできます。
まずは水を入れたキューブをピラミッドのように積み上げ、白いローズ・ド・ジャルダンをみんなで挿していきます。長い枝は曲線を生かして。しなやかにこぼれる姿はそのままに。巻きつけたリボンのおかげで、テクニックを必要とせずともバラを好きなところに入れることができます。
テラスに用意した隣のテーブルに移動して、同じキューブを使い、今度は鉢物とアンスリウムを使った簡単なデコレーションを制作。館内のライブラリーに飾りました。
次は庭の長テーブルでブーケ・ド・マリエ(ブライダルブーケ)のレッスン。球形のブーケのステム(茎)部分にも花や葉をあしらう独特のデザインです。使った花はもちろんローズ・ド・ジャルダン。前日のヴァンソンレッスンとは違う色のバラを使い、みなさんにローズ・ド・ジャルダンの魅力を存分に愉しんでいただきました。
さらに、サラマンジェ(食堂)へ移動し、最初に作った白バラを抜いて暖炉の上にキャンドルとともに装飾。
空になったキューブを今度はピラミッド状ではなく、テーブルの上にランダムに置き、ピンク系のバラを参加者と一緒にディスプレイしました。
ジャスミンで動きを出しながらキューブの間をつなぎます。
キッチンにある食器を使い、マカロンとベリー、シャンパーニュもセッティング。歓声があがり、撮影はいつまでも続くのでした。
ローズバッドで開催している通常レッスンでも、6月はバラが主役です。まるで庭から切ってきたようなローズ・ド・ジャルダンは、1本の枝のなかに、つぼみ、開きかけ、満開、花びらが散ってしまったものを同時に見ることができます。レッスンでは、蕊(しべ)だけになってしまったバラをあえて残し「バラの一生」を表現することもあります。
コロンとした短いバラはブラックベリーと合わせてキュートなブーケに。丈が長いものは流れを生かしたブーケにして、この季節だけのデザインを愉しみます。
バラの話は、第10話へと続きます
斎藤由美
パリ在住フラワーデザイナー/フォトエッセイスト。信州で花教室主宰後、2000年パリへ花留学。著名なフラワーアーティストの元で修行。コンペに勝ち抜きホテル・リッツの花装飾を担当。現在は驚異のリピート率を誇るパリスタイルの花レッスンと執筆が主な活動。花市場と花店視察など研修ツアーも手がける。著書に『シャンペトルのすべて』『コンポジション』『二度目のパリ』などがある。
インスタグラム: @yumisaitoparis
ブログ「パリで花仕事」:https://ameblo.jp/yumisaitoparis/