植物と人をつなぐもの 第12話(前編)|「光」と「愛」。目に見えない大切な2つを多肉植物に映し出す。

2019年1月から始まったトキイロさんの連載も今回で12回目。つくりらの連載タイトル「植物(きみ)と人(わたし)をつなぐもの」は、2018年の11月に行った展示会のテーマからつながりました。それから1年。今回は2019年11月に開催された展示会のお話です。

撮影・文:TOKIIRO(近藤義展)

早いもので師走。秋を感じる時間が減ってきたなぁと思いながら、この一年つくりらの連載をさせていただいたことを感慨深く振り返っています。最終回の今回、前編はトキイロの2020年のスタートでもある東京・馬喰町のギャラリー、組む東京さんでの展示をお伝えしたいと思います。

 

展示のテーマは「光」と「愛」

「TOKIIRO EXHIBITION 2019」が行われたのは、11月上旬。今回のテーマは「光、影なくして知れず。愛、植物 (きみ)なくして知れず」で、「光」と「愛」にスポットを当てました。

光は、生命の存続には絶対的必要不可欠であるけれど目には見えない存在です。遮ったり、反射したりすることで初めてその存在を認識できます。いっぽう愛は、満たされているはずなのに対象のものや第三者がいないと認識できません。多肉植物の世界を通してこの充満された万物の命の源を表現しました。

光という大いなるテーマを多肉植物で表現するうえで組む東京という器は必須でしたし、オーナーの小沼訓子さんの導きなしでは実現できなかったと思います。展示は、地下から屋上までの4つのフロアを使い、それぞれの空間ごとに僕が考える光の解釈を表現しました。順番にご紹介していきましょう。

 

鉄フレームを設置した大きな世界

まず1階のインスタレーションです。天井高が3.8メートルもある1階には高さを生かした3メートルの鉄のフレームを設置し、見上げる目線で大きな世界をつくりました。トップからは光合成を助ける育成LEDをふんだんに使って集光。多肉が生き生きと生きる姿を感じていただくと同時に、肉厚の葉も光を通過させ、葉の下にある命のコミュニティに光を届けていることも観察していただこうと思いました。

多肉植物の世界には、彼ら独自のさまざまな進化と動きがあります。彼らのコミュニティが存続する要素はミネラルのほかに、水と二酸化炭素と光。彼ら目線で光を見てみると新しい発見があるかもしれません。            

夜になるとより陰影がはっきりしてきます。今回の展示の中で昼と夜、相対する光の陰影も表現してみました。影を認識することで光の存在をより明確に感じていただきたかったのです。

下の写真は逆側から撮影したもの。1階の展示で表現したかったのは、植物どうしが引き合い、空間のなかでつながっていく様子です。光や愛のように目には見えない存在の重要性を伝える展示の中で、植物どうしを通わせることで、「つながり(コネクション)」を表現しました。

 

言葉なき植物の波を感じる、無の時間

続いて2階のインスタレーション。太古より人類の文明と植物は密接な関係にあります。食、薬、染、着、芸、工、香そして儀。このインスタレーションでは祭儀の前に空間に起きる無の時間を創作。言葉なき植物の波を感じていただこうと思いました。

昼と夜のコントラストも感じていただきました。

 

ただ生きる植物の姿は美しい

地下室の展示は、可愛らしい多肉植物の印象を光と陰を用いて凛とした本来の生命力や緊張感を表現しました。そこにあったのはただただ生きる植物の姿。それを私は美と認識しています。


▲器: 吉田直嗣

 

空の近くへ多肉植物に会いに行く

屋上にも展示をしました。組む東京さんの屋上は千代田区のビルに囲まれながらも太陽と出会える空間でもあります。光に包まれた本当の彼らの色にぜひ会っていただきたい。時間を感じることのできる彼らの神秘にも触れてほしい。そんな願いを込めて。


▲器:石原稔久

地下から2階へと3フロアで展開したテクノロジーの光源とは対照的に、屋上は完全自然光での展示。太陽の光という生命の源に照らされるとき、多肉植物に限らずすべての命は本当の色を見せ始めます。夜は月明かりの中、生命維持の活動を始めていきます。

期間中たくさんの方に足を運んでいただきました。リアルに生きる多肉植物の姿を通して、目で見ることができないいろいろの何かを見つけ、持ち帰ってくださったのではないかと思います。

「TOKIIRO EXHIBITION 2019」、いかがだったでしょうか? いよいよ最終回となる後編では、2020年に向けてトキイロの希望を託した多肉植物の寄せ植えを紹介します。

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