植物と人をつなぐもの 第11話(前編)|恋する多肉植物図鑑

今回のお話は、トキイロさんが恋してやまない多肉植物の大特集。トキイロさんのアレンジに登場する多肉植物の魅力を近藤義展さんが熱く語ります。

撮影・文:TOKIIRO(近藤義展)

やっと秋らしい気温になってきた浦安です。とはいえ僕がまだ学生だった30年前は10月末にはもうスキーに行けていました。北海道でも未だ雪が降らないというニュース、なにか考えさせられます。自然が、地球が、大きなメッセージを人類に投げかけているような最近の気象ですね。

今回は多肉植物でトキイロのアレンジに登場する、ベンケイソウ科の中から、特に僕が恋してやまない多肉植物を紹介していきたいと思います。題して、「恋する多肉植物図鑑」をお届けします。

トキイロが世界を表現するために主に使っている多肉植物は、季節によって表情が変わり、比較的日本の気候にあった、管理がしやすい種が多いです。それはベンケイソウ科やキク科に分類される多肉植物。主に中南米や南アフリカ、北アフリカ、アジア(乾燥地域)が原産のものが多いため同じ器に入れて寄せ植えしても育てやすいです。

 

ベンケイソウ科アエオニウム属

まずはベンケイソウ科の中でも珍しい北アフリカのモロッコやカナリア諸島出身のアエオニウム属から紹介します。

黒法師*つややかな黒が美しい

葉が黒、茶のものがあって光不足になると退色して緑が出てきてしまいます。光が十分な状態の黒法師は存在感もあり幹立ちしていくので、器の中に世界をつくるときの幅を広げてくれる逸材。高さ1メートルにも達するので、剪定を繰り返し盆栽のようにコンパクトに育てることも可能です。

夕映え*季節ごとに色の変化が楽しめる

黒法師よりも葉は肉厚です。最高気温が10度を下回ったころから徐々に紅葉し、葉の周りが橙桃色になり夕日に照らされたようなグラデーションになります。名前にピッタリの変化です。

アエオニウム属は北アフリカ出身ということもあり日本の夏の夜の高温多湿にすごく弱いです。モロッコやカナリア諸島は年間を通して最高気温30度、最低気温20度程度なので、特に夏の気温変化にうまく適応できません。夏の夜の管理を原産地に近づける工夫が必要です。

 

ベンケイソウ科エケベリア属

次は葉姿も美しく人気のあるエケベリア属です。中南米出身で今では世界中で交配、育成されていて種類もどんどん増えています。

チワワエンシス*ほれぼれする葉姿

棘ではないのですが、葉先が爪のようになり紅葉時には赤くなります。ロゼット状に広がる葉姿が美しく花のようなエレガントさを持っています。

フロスティー*白い毛に覆われた葉がユニーク

ロゼット型に葉が広がっていますが、下葉は成長とともに枯れ落ち幹立ちしていく品種です。葉には白い毛をまとい全体的に白く見えます。強い太陽光線の下で進化してきた彼らのDNAは進化の過程で光をコントロールするすべを身に着けたといえます。

 

ベンケイソウ科カランコエ属

花をたくさん咲かせるのでお花屋さんで見かけた方も多いカランコエ属、南アフリカや中南米出身です。

白銀の舞*葉先のギザギザが可愛い

白い粉をまとう美しい葉姿です。花も咲かせ季節を演出してくれます。葉先のギザギザも可愛いです。

唐印*紅葉はきれいなピンク色に

冬季以外はグリーンな唐印も紅葉はきれいなピンクに染まります。カランコエらしく鈴なりの花も咲かせ美しい品種です。比較的育てやすいのでアレンジにしても単体で育ててもたのしめます。

 

ベンケイソウ科クラッスラ属

クラッスラ属の紹介です。トキイロのアレンジでは欠くことのできないクラッスラ。葉が2枚ずつ交互に直角に積み重なる姿はコミカルでもあるし茎立ちしていくので景色をつくりやすいです。紅葉する品種そうでない品種様々なのでバリエーションがあって楽しくつきあえます。

サルメント*黄色の斑がアクセント

イエロー系のクラッスラ代表です。たっぷり太陽の下でゆっくり育てると茎も太く上に高く立ち上がっていくので、黒法師のわきにそっと植えておくと黒と黄色のコントラストが美しいアレンジができます。冬はさらに葉の周りが赤く紅葉するので3色のカラフルな景色が楽しめます。

ムスコーサ*小さな葉が重なって塔のように

細かくつながる葉の連続が塔のように茎立ちさせていきます。ひと品種だけ植えても可愛いですが、アレンジの中では高さを出せる重要な役割。

多肉図鑑は後編に続きます。

 

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