更新日: 2019/10/14
9月にニューヨーク・ブルックリンでエキシビションを行ったトキイロさん。第10話(前編)は、その展示会のお話です。陶芸家の飯高幸作さん、スプーン作家の宮園なつみさんの作品を迎えての展示風景、その美しさの反響はいかに?
撮影・文:TOKIIRO(近藤義展)
トキイロのアトリエがある千葉県・浦安市は、震災以降、夏にセミがあまり鳴かなくなりました。液状化かなどによってセミの生態を壊してしまったのかなぁなんて推測するのですが、夜の虫の声も少ない気がします。皆さんのお住まいの地域はいかがですか?生態系の変化のスピードがそろそろ人間の想定を超え始めているのかなぁ。
▲トキイロのアトリエの屋上より。高く水彩画のような雲が空を描く季節になって、なにかもったりとしていた空気も軽くなりました。
エキシビションに参加するため、9月11日〜18日の日程でニューヨーク・ブルックリンを訪れました。今回の展示テーマは、Earth+Life+Arts Inspired by Natureです。
参加者は、僕、近藤義展(TOKIIRO)と陶芸家の飯高幸作さん(kousha)、そしてゲスト作家としてスプーン作家の宮園なつみさん(miyazonospoon)。会場は、ブルックリン・ダンボ地区のアイスクリーム屋さんOddFellows(オッドフェロウズ)です。
ブルックリン・ダンボ地区は、マンハッタンからブルックリンブリッジを東側に渡った地区でイーストリバー越しにマンハッタンのダウンタウンが一望できる立地です。以前は移民や貧困層が多かった地域ですが、1980年代からアーティストや流行に敏感な人たちが増え、近年は富裕層が流入し、物価が上昇している地域でもあります。
ほとんど地震がないこの地域には、19世紀に建てられたレンガ造りの建屋をリノベーションした、おしゃれなショップやギャラリー、シアターなどが建ち並び、町の景観をつくっています。
展示する多肉植物は現地で調達しないとなりません。まずはともあれ多肉植物を探しにマンハッタンへ。朝も早くからミッドタウンにあるフラワーストリートに出かけます。
フラワーストリートでは、季節の花やグリーン、多肉植物が取引されています。もちろん資材なども充実。とはいえ日本の流通のすごさを感じずにはいられません。
たくさんの花が並んだ棚から多肉植物をチョイス。価格は日本の4倍ぐらいでしょうか。ニューヨークの冬は寒いですから多肉植物の農家さんはいないのではと考えられます。そうなると西海岸やその他の地域から運ばれてきた多肉植物なのでしょう。経費やニューヨークの物価のことを考えると価格も納得です。
今回はもりもりのセダムを入手できてよかった〜! 2年前に多肉植物パフォーマンスのためブルックリンを訪れたときには手に入らなかったので。
制作はすべて友人の、Rey Parla 、Jose Parla 兄弟のスタジオにて行いました。
▲Rey Parla / Jose Parla 兄弟のスタジオ(https://www.instagram.com/reyparlastudio/、https://www.instagram.com/joseparla/)
一緒に展示会を行う飯高さんの器にアレンジを。今回の飯高さんの器はニューヨークの展示のために作陶したものばかり。制作も楽しかったです。
さて、いよいよ開催当日。こちらが会場となるアイスクリーム屋さんのオッドフェロウズです。
飯高さんの優しい白がアイスクリームとピッタリで、多肉植物もよく映えます。ニューヨークのみなさんにも好評で、たくさんの器やアレンジが旅立っていきました。
そして今回、作家仲間の宮薗スプーンがニューヨーク初上陸!1つ1つ手で削り出した木のスプーンは、口に入ったときの感触や持ち手の使いやすさを究極までにこだわった一品です。日本国内の展示会などではすぐに売り切れてしまう、宮薗なつみさんの作品。手に取る方も多かったです。
期間中、気持ちのいい風が流れるブルックリン。厳しい冬が訪れる前の爽やかな季節です。飯高さんもリラックス。
こちらは今回の展示の仕掛人Mika Parlá さん。
▲仕掛人のMikaさん。https://www.instagram.com/m_plus_project/
Mikaさんは、ブルックリン在住の日本人でNYに住んで20年。グラフィティアートやアンダーグラウンドカルチャーに触れ、ご本人もペインターであり、デザインのディレクションなどに携わってこられました。現在、アーティストのご主人と2人のお子さんと暮らしています。
伝統工芸に自己表現を加え、繊細で技の境地が感じられる日本の手仕事を、ご自身のフィルターを通した形でNYに紹介していきたいとの思いから、ブランド「Mplus」を立ち上げたMikaさん。今回がその初展示です。
展示会後の打ち上げは、VIPやセレブレティが集まるというラウンジへ。店内はそういう理由で撮影禁止でしたので、窓から見える景色だけを記録。
展示を終えて、ニューヨークという世界の情報やアートが集まるこの町で、飯高さんとTOKIIROの多肉植物の世界を表現させていただき、日本人の繊細で細かな表現が伝わっていく喜びをかみしめました。
今回の旅にはもう1つ大切なお仕事がありました。それは、マンハッタンのアップタウン、Club Pilates | East 89thさんのエントランスグリーンの制作です。
寒いニューヨークの冬を考慮して屋内のウインドウの近くに設置。ピラティスのレッスンを行っているこちらのスタジオ、多肉植物がピラティス前後の癒しになればいいですね。
後編では、ニューヨークの展示会でインスパイアされた多肉植物アレンジのつくり方を紹介します。
TOKIIRO(トキイロ)
多肉植物に特化したアレンジを提案する近藤義展、近藤友美とのユニット。グリーンデザイン、ガーデンデザイン、ワークショップ開催など多岐にわたる活動の中から、空間(器)に生きるストーリー(アレンジ)を創作している。『ときめく多肉植物図鑑』(山と渓谷社)、『多肉植物生活のすすめ』(主婦と生活社)の著書のほか、監修本も多く、いずれも英語版、中国版、台湾版に翻訳され、グローバルに活躍の場を広げている。
ホームページ:http://www.tokiiro.com/
インスタグラム:@ateliertokiiro、@tokiiro_life、@pause_story_
Facebook:@AtelierTOKIIRO
ウェブショップ:www.tokiirowebshop.com
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