植物と人をつなぐもの 第9話(後編)|知るほどに奥深い。多肉植物×器コラボのはてしない物語。

前編では、多肉植物の表現力をふくらませてくれる、陶芸家・飯高幸作さんの器について紹介しました。後編では、さらに多くの作家の器が登場します。

撮影・文:TOKIIRO(近藤義展)

器(スペース)に世界(ストーリー)を表現し10年の月日が経ちました。

器はたくさんの作家さんに創作していただいています。通常はお皿や椀、カップやマグ、酒器など、皆さん個性あふれる作陶をされていらっしゃる方ばかり。ご縁がつながり、本当に感謝しかありません。後編では、今までの創作してきた作品の中からご紹介させていただきたいと思います。

 

水と生命をテーマに作陶する沓沢佐知子さん


▲「誕生」2017年 アレンジ:近藤義展 、器:沓沢佐知子 

水と生命をテーマに制作を続ける沓沢さんの〝豆″。沓沢さんは彫刻や陶芸など幅広い表現と手法で立体作品を作る三重在住の造形作家です。

沓沢さんの工房を訪ねて、神が宿る美杉の山に伺ったとき、地球や生命の強さややさしさを深く感じました。その地で生まれる作品は、水のように透明でかつ暖かく、自分のどこか奥のほうが熱くなるような感覚になりました

その沓沢さんの〝豆″にインスパイアされ、美杉の山の豆に新しいコミュニティが生まれるとしたらこんな景色がいいなぁという妄想の中にこのアレンジが誕生しました。

沓沢さんとは2020年春、大阪での二人展をさせていただきます。今からどんな器が仕上がるか楽しみです。

 

アスティエの器で白と緑に映る陰影を表現


▲「Green over white」2017年 アレンジ:近藤義展 器 Astier de Villatte (アスティエ・ド・ヴィラット)

2017年、オルネ ド フォイユさんでの展示の際にオーナーの谷さんにアスティエの器に表現しませんか?と、ご提案いただき、ワクワクする時間をつくっていただきました。土の黒がところどころ透ける白。できるだけ色のトーンを絞り、白に映る影と緑に映る影のコントラストを表現しました。

アスティエ・ド・ヴィラットはパリ在住の二人のデザイナーがヨーロッパの伝統的なデザインにインスピレーションを得て創作されています。パリの黒い粘土を使い、彼ら独特の艶感のある白い釉薬で仕上げられ、モダンで気品あるテーブルウェアです。

 

バランスを崩すことから始まる「進化」


▲「不安定の可能性」2017年 アレンジ:近藤義展 器:成田理俊(material 鉄)

自然にはバランスをとるシステムがあるようです。バランスがとれていると動きが少なくなり安定する。意図的にバランスを崩していくことで新しい動きや流れを生みだしてゆく。

このアレンジは非現実的なアンバランスが多肉植物を進化させ、枠の外へ可能性を広げていく様を表現しました。その可能性の声が未来につながればと願っています。

作品を制作するとき、景色や妄想を多肉植物で創作する場合と、何か真理や哲学に基づいたメッセージを込める場合とがあり、「不安定の可能性」は後者です。

人の歩みもまたバランスを崩す所から始まります。両足安定から勇気をもって一歩バランスを崩すことで進む。そんな連続が進化を遂げることにつながるのではないかと考えます。

「不安定の可能性」は2017年10月、組む東京さんでの展示「植物(キミ)の声が流れとなり」で発表させていただきました。

 

「小さなお家」に生まれた多肉の森


▲「小さなお家」2018年 アレンジ:近藤義展  作陶 中山典子

中世のヨーロッパの教会からのインスピレーションを受けてつくっているというこの小さいお家シリーズは、中山典子さんの作品。一年に一度、春に二人展をさせていただいており、そのタイミングでしかこのシリーズは陶作されません。

中山さんがつくり出す世界に多肉植物がぴったりです。階段と窓という、このシリーズにおける中山さんのひそかなテーマをも考慮し、多肉の森をつくらせていただいています。

 

どこまでも続く、器と多肉の共演

多肉植物で世界を表現するなかで、本当にたくさんの器、そして作家に出会いました。アーカイブの中からもう少し紹介します。


▲アレンジ:近藤義展 ガラス:稲葉知子


▲アレンジ:近藤義展 器:北岡幸士


▲アレンジ:近藤義展 器:伊藤丈弘


▲アレンジ:近藤義展 器:飛松灯器


▲アレンジ:近藤義展 器:今井律湖


▲アレンジ:近藤義展 器:イイホシユミコ

 

器と多肉植物が融合した世界


▲「多肉植物の島」2015年 アレンジ:近藤義展 器:組む東京

2015年組む東京さんで初の個展をさせていただいた「unite」でのインスタレーションです。この展示では、器と多肉植物を融合し一つの世界として再構築するというテーマで創作しました。

「多肉植物の島」は、組む東京さんの建物を一つの器(space)ととらえ表現したものです。展示は約一週間の予定でしたが、オーナーの小沼訓子さんのご厚意で1年半にわたり展示、たくさんの方に見ていただきました。

さまざまな器(space)の中で、しなやかに姿を変えていく多肉植物。伝えるものも、伝わるものも、自然の流れのなかでゆっくりと変化していくようです。

おすすめコラム