更新日: 2019/05/14
前編では、多肉植物のさまざまな花を紹介しました。後編は、多肉植物の花を咲かせるコツについてのお話です。
撮影・文:TOKIIRO(近藤義展)
皆さんからいただく質問の一つに、「サボテンの花を咲かせるコツはありますか?」があります。
ベンケイソウ科の多肉植物は前編の画像でも紹介したように小さくて可憐な花が多いですが、サボテン科は色も鮮やかで大輪の花だったりします。
▲シャコバサボテンの花。エピフィルム・アケルマニー(サボテン科 エピフィルム属) 。
もともと中南米の砂漠などに生育してきたので、ベンケイソウ科の多肉植物同様、媒介している昆虫が少ない地域。サボテンは、涼しくなる夜間に活動するコウモリなどの動物に受粉を手伝ってもらうよう進化しました。なので、サボテンの花は夜開く種類が多いのです。夜ですのでできるだけ目立つようにビビッドなカラーで匂いも放ちながら咲きます。
多肉植物は屋外で育てるのが基本なのですが、現代の屋外の夜は街灯があり、なかなか暗闇にはなりません。それが植物にとってセンサーを狂わす要因になっているはずです。
さらに、屋内にサボテンを置いていたりすると、太陽からくる直射日光が当たらず、植物が本来持っているセンサーを働かせることができません。人間が創り出したテクノロジーの一つである窓ガラスは、植物が光合成するための十分な光は通過しないのが現状です。
多肉植物は、花を咲かせる時間サイクルを持っています。人類のモノサシと植物それぞれのモノサシは明らかに違うのです。
▲黄麗(セダム属)。黄色の色素、カロチノイドを多く持っているセダム属の黄麗は、葉の間から花芽を伸ばし、先に八重咲きに。暑さ寒さに比較的適応し、一年を通して美しい葉姿を見ることができる。
▲朧月(グラプトペタルム属)。日本の気候に比較的適応した品種。長年育てていると枝垂れてくる。食用でも育てられていてヨーグルトやサラダなどにとても合う。
ですので、あえてコツとしてお伝えしたいのは、咲かせようとしないこと。より自然に、より地球の営みにそって生きる環境になれば、その個体の良い時期に良い花を咲かせるはずなんです。それを無理に咲け咲けというのは酷な話。咲かないものを咲かせたいと思うのは人間のエゴかもしれませんね。
植物は約10億年前から進化を開始し、現在に至るまでに地域や環境に適応するように種が分化していったと考えられています。
▲ラウリンゼ(エケベリア属)。美しいロゼット状の葉姿をもつ品種。
そして人類は約1億年。現代の文明だけを考えると1500年というところでしょうか。ここ150年で人類のテクノロジーは飛躍的に進歩し、さらに加速しています。そんななか、地球の実質的生存上位は人類であり、地球はわがもの、という考えが多い気がします。
僕もカテゴリーで分けると人類に入ります。人間としての見方、考え方ももちろん大事にしていますが、地球目線、植物目線で今を解釈できるようなヒトで在ろうと日々、努力しています。
TOKIIRO(トキイロ)
多肉植物に特化したアレンジを提案する近藤義展、近藤友美とのユニット。グリーンデザイン、ガーデンデザイン、ワークショップ開催など多岐にわたる活動の中から、空間(器)に生きるストーリー(アレンジ)を創作している。『ときめく多肉植物図鑑』(山と渓谷社)、『多肉植物生活のすすめ』(主婦と生活社)の著書のほか、監修本も多く、いずれも英語版、中国版、台湾版に翻訳され、グローバルに活躍の場を広げている。
ホームページ:http://www.tokiiro.com/
インスタグラム:@ateliertokiiro、@tokiiro_life、@pause_story_
Facebook:@AtelierTOKIIRO
ウェブショップ:www.tokiirowebshop.com
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