更新日: 2019/02/12
前編では、多肉植物を贈るということ、そして水やりのコツについてお話しました。後編では、自らつくって贈る、寄せ植えのつくり方をご紹介します。
撮影:TOKIIRO (近藤義展、近藤友美) 文:近藤義展
肉厚でぷっくりとしたかたちが可愛らしい多肉植物。葉に水分や栄養素を蓄え、雨がほとんど降らない乾燥地帯でもみずみずしく生き延びていけるしなやかさは、見ているだけでなんだか元気が出てきます。多様でユニークなかたちや色を持つ多肉植物は、組み合わせることでさらに魅力を増します。
まずは、どんな寄せ植えをつくりたいかをイメージするところから始めましょう。旅行先など、今までに訪れた場所で印象に残った風景を思い浮かべたり、器からイメージを膨らませます。
今回のテーマはギフト。相手を思い浮かべながら、伝えたいメッセージを表現していきます。色やかたちはさまざまですが、多肉の苗を選ぶときにほんのりピンクや白を基調に選んでみます。
「あなたのやさしさにいつも癒されています」
そんなイメージで寄せ植えをつくってみましょう。
多肉植物の苗は、根のあるものを用意します。今回、使った苗は、上段左から、キルヒネア、コミックトム、虹の玉、白牡丹。下段左から、リトルミッシー、森村万年草、トリカラー、ゴールデンカーペットです。
▲寄せ植えに必要なもの。多肉植物の苗(根つき)、器(底穴あり)、底穴アミ(網戸のアミ)、土(多肉植物用の用土、洗浄済みサンゴ砂)、土入れ、ピンセット、マドラー、トレー。
多肉植物にはさまざまな種類があります。成長期が同じで、さらに原産国が同じなど育つ環境が近いと、水やりのタイミングなども似ているため育てやすくなります。 また、どんな寄せ植えにするかのイメージで、色、かたちを選びます。その際、上に伸びていくのか、横に広がっていくのか、そのまま大きくなっていくのかなど、育ち方を考慮するのがポイント。
多肉植物を植える器は、できるだけ底穴があるものを選びましょう。もちろんないものでも植えられますが、土壌細菌が溜まりやすいため育てるうえでデメリットがあります。器の底には底穴アミを敷きます。園芸用のアミでも構いませんが、網戸の張りかえ用のアミが目も細かく使いやすくリーズナブル。
土は園芸店やホームセンターで扱っている多肉植物用の用土で問題ありません。今回植える多肉植物はすべてベンケイソウ科の多肉植物で根が細かいため、土も細かいものを使うと根が土をつかみやすくなります。仕上げに使う化粧砂は使っても使わなくてもよいですが、今回は洗浄して塩を抜いた天然サンゴ砂を使用します。土を入れる道具は、園芸用の土入れを使用。小さいシャベルや、小麦粉や砂糖をすくうスクープなどでもOK。
ピンセットは、寄せ植えでできた隙間にさらに苗を加えたり、苗を土にしっかり植え込むときにあると便利。先が曲がっていて尖っていないものを準備すると良いです。
マドラーは、コーヒーショップなどにあるような木のマドラーがおすすめ。 最後に土を下に押し込むときに使用します。器のかたちに沿ってしなるような、硬すぎないものがベスト。
トレーはなくても寄せ植えはできますが、作業中にこぼれる土を受けたり、アレンジ前に苗を並べたり、あるとなにかと便利です。
1 底穴アミを敷きます。
2 土をふんわりアミが隠れるぐらい入れます。この時に入れすぎないことがポイント。
3 苗を入れていきます。
細かな多肉植物は、数種類まとめてブーケをつくります。違う種類の苗と苗を絡めるようにブーケをつくることで、 それぞれの多肉植物が、時間をかけ隙間を求めて生え進んでいるように見え、時間の経過を感じさせることができます。
4 ブーケにした苗を立て掛けます。
5 土を入れていきます。
根が露出していると特に夏場は弱ってしまいます。両側にしっかりと土を入れます。
マドラーで土を奥まで送り込んでください。
6 メインになる多肉植物、キルヒネアを入れます。
キルヒネアは、はじめに植えた多肉に少しかぶさるように置きます。5の工程と同じように土をしっかり入れていきます。
7 ピンセットを使って配置します。
ピンセットの使う向きは画像の様に先を下に向けるとやりやすいです。持つときにどれくらいの強さで持ったらよいかをなかなか文章で伝えられないですが、多肉がつぶれてしまってはダメージになります。とはいえ多肉の茎は思ったよりしっかりしています。失敗は成功の元、チャレンジして感覚をつかんでください。
隙間に植えます。画像のフレッシュイエローの多肉はゴールデンカーペットという種類ですが、優しさを伝える今回のアレンジではかなり主張してくるので、大きい多肉のわきに忍ばせることで調和をとっていきます。
8 バランスを見ながら植え足します。
同じ要領で植えていきます。根は必ず土の中に入るように植えてください。配置のコツは本来自然界に生きている植物は必ず太陽に向かって生きていきます。斜めになっているよりはまっすぐ葉が上を向くように植えると、より自然なアレンジがつくれます。
9 仕上げにサンゴ砂を入れます。
完成です!
多肉植物は、原産地が乾燥地帯のものが多いので、なるべくその環境に近づけることがすくすくと育つポイント。基本は屋外。太陽光が当たり、風通しがいいところがベストです。
雨に当たっても大丈夫ですが、2日以上連続して雨が当たらないようにします。葉にある気孔が閉じて二酸化炭素不足になり、栄養が足りなくなってしまうのです。とくに、多肉植物はもともと昼は気孔を閉じ、夜に開いて二酸化炭素を取り入れるため、夜の雨に気をつけましょう。
植えて直後から1週間の間は水を与えません。土が乾いた状態にすると、多肉植物が生きようとして、早く環境に順応できるようになります。水を与えると成長しようとしなくなってしまうのです。
1週間後に水やりをします。多肉にかかるように、シャワーを浴びるイメージで器の底に開いている穴から、水がジャージャー出るくらいたっぷりと水をやります。霧吹きなどでは、根まで水が届きません。
2週間後に土の状態をチェックします。マドラーか竹串などを土に刺し、土の乾き具合をチェックします。季節によっても変わるので植え替え直後だけでなくチェックすると良いでしょう。ここで土がマドラーについてくるようなら、置き場や置く向きなどを変えてみます。光合成ができていなかったり、風通しが悪いと土が湿った状態になります。
3週間後に水やりをします。
前編で書きましたが、水やりのタイミングは、植物が欲しがったとき。1週間、2週間というのはあくまで目安、多肉植物をよく見ながら、水やりのタイミングを見極めましょう。
TOKIIRO(トキイロ)
多肉植物に特化したアレンジを提案する近藤義展、近藤友美とのユニット。グリーンデザイン、ガーデンデザイン、ワークショップ開催など多岐にわたる活動の中から、空間(器)に生きるストーリー(アレンジ)を創作している。『ときめく多肉植物図鑑』(山と渓谷社)、『多肉植物生活のすすめ』(主婦と生活社)の著書のほか、監修本も多く、いずれも英語版、中国版、台湾版に翻訳され、グローバルに活躍の場を広げている。
ホームページ:http://www.tokiiro.com/
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