更新日: 2019/02/11
今年から始まったグリーンデザイナー、TOKIIRO(トキイロ)さんの新連載。第2回目は、多肉植物を贈るギフトのお話です。
撮影・文:TOKIIRO (近藤義展)
トキイロがつくる多肉植物をギフトに選んでいただけることがあります。これは僕にとって本当に光栄なこと。生きている多肉植物を贈るということは、相手が育ててくれるという信頼があるからこそ選べるのですから。
「ギフトで」というオーダーをいただいた場合、贈られる方の想い、受け取られた方の気持ちを汲み取りながら制作しています。贈った方も、受け取った方も、皆さんが幸せな気持ちになってくれること、これが僕にとっての本当のギフトで、心を伝えるお手伝いをすることだと思っています。
トキイロでは、ギフトの提案のひとつに書籍とセットで贈るというものを用意しています。育ててながら読んでみてほしい、との想いから始まりました。贈った1年後に「昨年もらった多肉植物、元気にしているよ」、なんてメッセージをもらえたらなお嬉しいですよね。
植物は生き物ですから、贈られた方も世話をしなくてなりません。みなさんからいただく質問でいちばん多いのは、「どうすれば植物を枯らさないで育てられますか?」と「水やりは何日おきにすればいいですか?」です。この2つはみなさんが気にされるポイントだと思います。例外なく僕も初めはそうでした。
多肉植物を育て始めた当時は、やる事をリスト化して実行するべきだと考えていました。まず行ったのは、農家さんの水やり頻度を参考にして、カレンダーに水やりの日を書き込むこと、そして忘れずに実行することでした。「これで必ずうまくいく!」はずでしたが、結果は悲惨な状況。気に入ってわが家に迎い入れた高額な多肉植物の苗を枯らしてしまったんです。
枯らしてしまったのは仕方がない、次に活かす体験として考えよう、そしてなぜかを農家さんに聞いて覚えよう。そう思い、農家さんに電話をしました。
「教えていただいたとおり、2週間に一度水やりしてきたんですけど、残念ながら枯らしてしまって・・・。何がいけなかったんでしょう?」。農家さんから帰ってきた答えは衝撃的な内容でした。
「二週間に一度、水やりしたから枯れたんだよ!」
「・・・・・。」
農家さんが何を伝えたかったかというと、それぞれ置く場所、光の量、風の量、温度や湿度など、環境が違うのに水やりだけ同じでいいわけがない、そもそも植物がなぜ水が必要かもわかっていないで、ただただ決められたタイミングであげてもうまくいくわけがない。という事でした。
その苦い経験から10年が過ぎました。現在、水やりのタイミングをどうしているかというと、答えは「欲しそうだったら水やり、なんとなく感じたら水やり」です。不謹慎、不親切に聞こえますよね?具体的でないし・・。でも、本当に決めてないんです。
これではお客様にも説明ができません。そこで、どれくらいの頻度で水やりしているかを思い返してみると、実は10日から2週間に一度ぐらいのペースでした。なんと、水やりの頻度は10年前と変わっていません。でも、手にした結果は正反対です。
10年前:2週間に一度の水やり→枯れてしまった。
現在:2週間に一度の水やり→元気で育っている。しかも、多肉植物を通してたくさんの方の笑顔に出会えている。
10年前と今では、いったい何が違うのかというと、自分自身の思い、いわば思考や在り方が全く違うのです。当時の僕はいかに枯らさないかしか考えていませんでした。
多肉植物の魅力を通して世界中の人が笑顔になり、地球が元気で自然であることの源になっている、と考えているのが今の僕。この思考でいることこそが結果に直結しているように思います。する事が結果につながるわけではなく、何を思い、どんなふうに考えるかがそのまま結果につながっていくのです。
どうかみなさんも、水やりを“やる事”にしないでください。
植物に水やりをすることだけではなく、日々の生活や仕事の中でも同じことが起きているということに気づかせてもらいました。結果を出すために何をすることが重要ではなく、自分がどう在るかが重要だということを。
後編では、つくって贈る多肉植物の寄せ植えについてお話しています。
TOKIIRO(トキイロ)
多肉植物に特化したアレンジを提案する近藤義展、近藤友美とのユニット。グリーンデザイン、ガーデンデザイン、ワークショップ開催など多岐にわたる活動の中から、空間(器)に生きるストーリー(アレンジ)を創作している。『ときめく多肉植物図鑑』(山と渓谷社)、『多肉植物生活のすすめ』(主婦と生活社)の著書のほか、監修本も多く、いずれも英語版、中国版、台湾版に翻訳され、グローバルに活躍の場を広げている。
ホームページ:http://www.tokiiro.com/
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