植物と人をつなぐもの 第1話(後編)|心を揺さぶり、壁を超える力を与えてくれるもの。それは人であったり、花一輪であったり。

1月から始まった新連載、TOKIIRO(トキイロ)さんの「植物と人をつなぐもの」。前編では、2015年から始まった作品展のお話をしました。後編では、さらにひろがる活動についてです。

撮影・文:TOKIIRO(近藤義展、近藤友美)

2009年に活動を始めてから、トキイロのアトリエはずっと千葉県の浦安です。玄関先で多肉植物の寄せ植えをつくっていたら、近所の方が「これは売っているの?」と声をかけてくださったり、仕入先を紹介してくださったり。2011年の東日本大震災では、浦安は液状化。多くの家が被害に遭ったけれど、それでもみんなで励まし合って再生してきました。紆余曲折の10年間で、このホームタウン浦安に楽しい人のつながりができてきたのです。

 

地元・浦安発信の新プロジェクト「コエルハコ」

「コエルハコ」は、浦安のレストラン「北栄(きたさかえ)テラス」にて、創作フレンチを楽しみながら、毎回ゲストをお招きして、面白一夜を演出する取り組みです。

「コエルハコ」という名前は、味わえる、聞こえる、嗅げる、触れる、見えるなど、五感を自然に刺激する場(箱)であるハコを創作するところから産まれました。もちろん、「今を“超える”」という思いも。心の深層にある動機や気づき体験から、壁を“コエル”、自分を“コエル”エピソードなどをお聴きし、料理と会話を楽しみながら時間を過ごすハコなのです。


▲「コエルハコ」の会場は、居心地満点のレストラン「北栄テラス」。

運営メンバーは5人。フリーペーパー「地図とペン」発行人でありデザイナーの市川桂さん、「北栄(きたさかえ)テラス」店長の鈴木遊さん、シェフの星直樹さん、そしてトキイロの近藤義展、近藤友美です。市川さんは、浦安の街で楽しい連鎖を起こしてきた地元のキーパーソン。千葉の名産を紹介する物産店「URAYASU markets」の店主も手がけています。

このプロジェクトを始めてから、日々忙しくて忘れていた“自分とは?”を考え始めました。昔は社会生活にうまくなじめず、「他の人と自分が何か違うような気がする」という疑問を抱いていました。そんな折り、出会った人達からの言葉や行動で色々なことを気づかせていただき、少しずつですが、自分を受け入れられるようになり、今につながっています。


▲第2回めのゲストは「組む東京」の代表、小沼訓子さん。あたたかな空気に包まれた和やかな会になりました。

「組む東京」の代表、小沼訓子さんをお招きした会では、幼い頃にカギをかけた箱をどのタイミングで開けたのか、なぜ封印したはずのその箱に触れようと思ったのか、そして開いた後はどうなったのか?など、料理を楽しみながら、会話が弾みました。

次回のコエルハコ3は2019年3月2日開催予定。ゲストには、森岡書店の森岡督行さんをお迎えします。

 

花一輪で日々の暮らしにひと休み。「pause」の提案

2018年から新しく始めたもうひとつのプロジェクトは「pause(パウズ)」。人と人とがつながって互いに影響し合うのが「コエルハコ」だとすれば、「pause」は、花一輪が心の内面に作用する力をお伝えする取り組みだと言えるかもしれません。


▲しなやかな曲線に包まれたチューリップのダブルホワイト。淑やかな佇まいの中に存在感があるところに惹かれます。

「pause」は、一輪の花との衝撃的な出会いから生まれました。ある日、散歩の途中で一輪のチューリップを見つけました。その花は川の脇の草むらという、あり得ない場所にまぎれながらもすごい存在感。凛とした佇まいで美しさと力強さを湛え、生きるために、淡々と、ひっそりと、静かに咲いている。

その姿を見た瞬間、さっきまで悩んでいた事がふっと吹き飛んで、その花に心が引き寄せられるように感情が湧き上がってきたのです。花一輪でこんなに気持ちが揺さぶられ、そして晴れやかになれるとは・・・自分自身の心の変化にびっくりした体験でした。


▲チューリップに合わせたのはユキヤナギ。ユキヤナギの小さくて可憐な花色とダブルホワイトの花色がお似合いだなと思って選びました。どちらも春の訪れを感じる花で、葉には自然が創り出す線の美しさが宿っています。

花は自ら誰かに働きかけたりはしないけれど、ただそこに存在するだけで人に喜びと力を与えている。その美しさで人の足を止めて心を豊かにし、笑顔にしてくれるんだ。当たり前かもしれないけれど、些細なことかもしれないけれど、それは大きな気づきでした。


▲ありのまま、ただ存在するだけで、寄り添う姿が愛らしく映ります。

花を通して心の内面に広がる豊かさに気づいてもらいたい。怒りながら花を見たり選んだりしている人はいないな、というのも小さい頃からずっと感じていたこと。お花を一輪飾るだけで日々の暮らしの中でほっとひと休みできる時間を提供できたら・・・。そんな思いで、この取り組みに「pause」(小休止)という名前をつけたのです。

自然からおそわることは、まだまだたくさんありますね。

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