更新日: 2018/03/14
人気インスタグラマーameさんの新連載、「30 min. creation 毎日ちょっとで、できること」、第3話のテーマは、「しつらえる」。前編では、お気に入り場所を撮影することで気づいたさまざまなことをお伝えします。
撮影&スタイリング、文:ame(amelabo)
部屋の模様替えはどのくらいの頻度でしますか?
以前は頻繁に模様替えしていましたが、最近は大きな模様替えはしていません。そしてあっちもこっちも飾ってしまうと、飾っているのか散らかしているのかわからなくなってしまったので、今は飾るスペースと使うスペースの区別を心がけています。
テーブルの壁と窓際は飾るスペース、あとは使うものを機能的に置くだけ、と決めてメリハリをつけたら、飾るスペースの模様替えをより楽しめるようになりました。
上の写真は2月のテーブル。友人たちから嬉しいお花をいただく機会があり、記念に撮りました。
きっと何年たっても忘れない写真です(カレンダーが一緒に写っていると思い出しやすいのもおまけみたいにいいところ!)。
1話の前編でご紹介したように、私はテーブルのそばにカレンダーを置いているので、カレンダーを差し替える時が模様替えのいいタイミング。そしてこの場所を、もう何年もずっと撮っています。ワンパターンに思われるかもしれませんが、私にとってここは大切な場所です。
思い返せば、自分のテーブルの写真を撮り始めたのは、自分の場所なら心ゆくまで写真が撮れるから。外で写真を撮るときは、ちょっと落ち着かないし、なにをどう撮っていいのかわからないまま、なんだか気恥ずかしかったり、周りの人の迷惑にならないか気になってしまい数枚撮ってやめてしまいます。
そうすると、あと見返してもいまいち感動が写ってないことがほとんど。あれ?なにが撮りたかったんだっけ?と思うことが続き、自分が「好き!」と思う理由は何なのだろうと思い、それが知りたくて部屋で写真を撮り始めました。
自分の部屋だと外よりは心ゆくまで写真が撮れます。うまく撮る練習というよりは、自分が好きなものを知る練習です。「きれいだなあ」と感じて、わざわざ写真に収めたいと思うときのほとんどは、そこに綺麗な光があるか、今しかないものがある時だと気づきました。
もう時期は終わってしまいましたが、冬から春の楽しみはヒヤシンス。蕾が膨らみ始めたら1日も同じ姿がなく、いつもより早起きしてでも写真を撮ってしまいます。今日のこの姿のヒヤシンスを、この光の中で撮れるのは今だけ。
「今は今しかない」と思うのは苦しいですが、そうやって撮り続けることで、小さな鍛錬をしてきたように思います。
しつらえを毎月変えるのもいいですが、全部を変えるとなると大変。お気に入りのものをずっと置いておくのも好きです。
私にとってはこの猫の香炉(口から煙が出るのです)がそんなアイテム。もう数年、このテーブルの端が定位置です。
同じ場所に同じものを置いて同じように写真を撮る、というのは定点観測のようなもの。そのことに気づいたのは、数年前に小さな冊子、zine(ジン)をつくったときです。候補の写真を選ぶためにテーブルを写した写真を集めたら、そこには季節の移ろいが写っていてはっとしました。
春を知らせるヒヤシンス、初夏の果実、夏のグリーン、秋の夕暮れ、冬の朝の光。同じ部屋の同じ場所、時には同じものが並んでいるのに、まったく違う景色に思えました。
働き始めた頃の数年間、私は毎日が精一杯で、季節の移ろいというものを全く感じないで過ごしていました。その時のことを少し反省しています。実際、あまり健康ではありませんでした。
どんなお花も果実も時期は限られているし、季節の移ろいとともに太陽の高さも、日の長さも変わります。だからうまく写真に収められなかったら次はまた来年、なんてことも。私はせっかちな性格なので、そんな長いスパンで取り組むのは最初は少し苦痛でしたが、今では楽しめるように。
そしてそうやって撮り続けていることで「自分の部屋のいいところ」、「自分の選ぶもののいいところ」も分かってきたような気がします。
好きで集めているものたちも、組み合わせや置き方で表情も変わることを知りました。子どもの頃や学生の頃から持っているものと、最近買ったものやいただいたものが、思いがけずぴったりと調和する時は、なんともいえない嬉しさを感じます。
飾る、しつらえる、というとちょっと身構えてしまいますが、私は好きなものを眺めるために置く、と思っています。
ここには綺麗な光が当たるから、好きなガラスをおいて眺めよう、とか、帰ってきた時に一番に迎えてくれるのがこれだと嬉しいから玄関に置いておこう、とか。いただいたものが綺麗だから特等席に飾ってあげる。そして、そのとなりに合うものを置いてあげよう、とか。
だから食べるために買ってきたリンゴやみかんがきれいだったら、それをちょっとの間おいて置くのもいいなあと思うのです。
自分の感じた「いいな!」を大切にする。
それは自分を大切にすることなのかもしれません。
後編では私のしつらえ方法をお伝えします。
ame(amelabo)
日常を独特のセンスで切り取ったインスタグラムでの投稿が人気のインスタグラマー。現在、フォロワー数は4万人以上。学生時代から続けている趣味の写真とamegraphy(アメグラフィー)と言われる手書き文字やイラストを駆使し、カレンダーやプロダクトを手がける。写真や文字のワークショップや個展、百貨店カタログやイベントのディレクターなど、多岐に渡ってクリエイティブな活動をしている。本業は歯科医師。
インスタグラム:@amelabo
ホームページ:http://now-here.petit.cc
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