BOOKS
暮らしの本
著者:八木 透 監修
読んだ人:下里康子(ライター)
初めての御朱印は、14年前、春の比叡山延暦寺でいただいた。伸びやかな「大日如来」、堂々たる「医王殿(薬師如来)」、それぞれ異なる言葉と筆づかいに衝撃を受け、惚れ惚れした。当時は今ほど御朱印の知名度はなく、友人と何気なくいただいたものだったけれど、「御朱印はお守り。自分の命が尽きたとき、お棺に入れてもらうもの」だと知り、素敵な行いだなあと思った。以来、その言葉を胸に、寺社を訪れた際はなるべくいただくように心がけている。
でも、御朱印は集めれば集めるほど読めない墨字も増え、朱色の押し印の違いもますますわからなくなる。寺社参りの作法も不確かで堂々と振る舞えない自分がいる。『御朱印ブック』はそんな御朱印巡りに必要な知識が簡潔にまとめられた心強い1冊だ。
実は、本書の担当編集者も自ら御朱印を集めてきたそうで、それが企画の出発点だったという。
「大学時代、美術を専攻していた一環でお寺を訪れる機会が増え、集めるようになりました。本書の中で思い出深いのは、人生で初めて御朱印をいただいた青岸渡寺。お寺自体も大変美しいです」
御朱印集めの原点が霊場巡礼にあることなど、本書は御朱印の基本から教えてくれる。その青岸渡寺も霊場巡礼の中で最も古い西国三十三所巡礼の第一番札所なのだという。こうしたさまざまな御朱印にまつわる知識に触れると、“やや受け身がちな収集家”だった私も、御朱印集めを目的にした旅に出てみようか、と好奇心がむくむくと沸いてくる。
押し印と墨字のみで構成されるシンプルな御朱印の世界。だが、そこには奥の深さと醍醐味が存在するということを、編集者が足で稼いだ数多の個性的な御朱印を例に、実感することができるのである。
御朱印の魅力やいただきかたから、お寺や神社でのマナーまできちんとレクチャー。初めての人でも安心できる御朱印集めの入門書。
書籍名:御朱印ブック
著者:八木 透 監修
ページ数:128ページ
判型:A5変型判
発売日:2010年12月
定価:1,404円(税込)