BOOKS
暮らしの本
著者:多田牧子
読んだ人:小泉大河(編集者)
昨夏公開され大ヒットを記録したアニメ映画、『君の名は。』。この映画のキーアイテムとして登場するのが組ひもだ。主人公のふたり、三葉が髪に結び、瀧がミサンガのように手首に巻いている。
映画では、実際に組ひもを組むシーンも出てくる。三葉が丸台を、祖母が高台を使いながら。「主人公と同じ組ひもをつくってみたい」。この映画に触発された10代、20代の男女が興味を持ち始め、各地で組ひもづくりがさかんになったと聞く。
期せずしてスポットライトがあたった組ひもだが、組ひもづくりに目覚めた人にうってつけなのが本書だ。ベーシックな8本組から始まり、より繊細な柄行きが楽しめる16本組など、丸台でつくれる美しい組ひもが31種類。同じ糸を同じ量使っても、糸をどう組むかでまったく表情が変わるのが奥深い。
本書では、組ひもでつくれるアクセサリーや雑貨も提案、暮らしの小物への仕立て方もじつにおしゃれでセンスがいい。身近なところでは、巾着やパーカーに。短いひもでOKなキーリングは、いちばん手軽かもしれない。
縄文・弥生時代、いや、それ以前にあったともいわれる組ひも。平安時代には華麗な組ひもをふんだんに使った大鎧などもつくられていたという。貴族から武家へ、そして明治の廃刀令以降、刀の下緒が不要になってからは着物の帯締めとして現代に知られるようになった。
時代に寄り添い、あるときは翻弄されながら、しなやかに用途を変えてきた組ひも。今に生きる私たちもまた、私たち流に楽しみたい。
編むのでもなく、織るのでもない。「組む」という技術。
それはどこまでも丈夫でしたたか。懐深く、私たちの暮らしに根づいている。
丸台で作る本格的な組ひもを、身近な道具でやさしく、かわいく。 究極のシンプルかつわかりやすい図案で、はじめてでも安心。
書籍名:うつくしい組ひもと小物のレシピ
監修:多田牧子
ページ数:96ページ
判型:A5変型判
2017年07月発売
定価1,404円(税込)