BOOKS
暮らしの本
著者:伊藤和子
読んだ人:下里康子(ライター)
駄菓子屋にペットショップ、おもちゃ屋に文房具屋・・・、人によって異なるだろうけれど、誰しも子ども時代には子どもなりの行きつけの店がひとつやふたつあったと思う。私の場合は、近所の小さな手芸店。そこは品物を売るだけでなく、手芸キットを買えばつくり方も教えてくれるやさしい居場所だった。安全ピンとビーズだけでできるブローチ、瓶にリボンやロープを巻くだけでできる人形など、単純な材料やつくり方なのに工夫次第で想像もつかない姿につくり変えられることが楽しかった。『ぽんぽんでつくるどうぶつとモチーフ』を読むと、そんな記憶がよみがえる。
ぽんぽんも、いってしまえば、毛糸を巻いて切りそろえたシンプルなもの。なのに、糸の太さや種類、巻き数やカットを変えるだけで、おなじみのペットから動物園や水族館にいる生物、お菓子やごはんまで、こんなにも多彩なものができてしまうなんて。ぽんぽん、なめてた。
本書では40種の動物、モチーフが紹介されているが、まず動物の表情がいい。かわいいのにリアルさやクールさも見え隠れして、媚びない愛おしさがある。「特に猫は、作家さん自らペットショップに足を運んで観察し、納得がいくまで何度も試作をくり返してくれました」とは、担当編集者。
動物以外のモチーフのユニークさも心をひきつける。エビフライにおにぎり、カップケーキ・・・、ふわふわで、ぽてっとしていて、何ともおいしそう。
眺めてかわいい。だけどそれだけでなく、触りたくてうずうずする心地よさそうな毛糸のみっしり感もたまらない。子どもの頃のあの気持ちで、ぽんぽん、つくってみようかな。
毛糸をぐるぐる巻いてカットすれば、ふわふわマスコットのできあがり!顔だけじゃない、全身の動物やスイーツなども含めた40点。
書籍名:ぽんぽんでつくるどうぶつとモチーフ
著者:伊藤和子
ページ数:96ページ
判型:A5変型判
発売日:2017年6月
定価:1,296円(税込)