BOOKS
暮らしの本
著者:カジタミキ
読んだ人:太田明子(ライター)
この春、近所のショップで切り絵細工のカードを買った。十羽の鳥が白い型紙におのおの自由なポーズをとる構図で、窓際に飾ると絵柄から陽の光がこぼれてきれいだ。
けれど、レーザーで焼き切る技法で量産されたそのカードと、カジタミキさんの生み出す切り絵とではまったく質感が違う。後者は指先で繰り広げるどれも一点物のアート作品で、ダイナミックかつ繊細なデザインに目を奪われる。また、同じ形につくっても、切り口にフリーハンドならではの微妙な揺らぎを感じて味わい深い。
実は彼女、独学で切り絵を学んで、今や桂由美ブライダルハウスのイベントで製作を手がけたり、ニューヨークで個展を開いて高い評価を得ている実力派アーティストなのだ。
主なモチーフは星座、月、花、動物など。森羅万象に心情を投影させる美意識の高さがうかがえる。中にはシンデレラやクレオパトラの恋を連想させる作品もあり、繊細な切り絵がカラフルな色彩をまとって、ファンタジーの世界へと心を遊ばせてくれる。
本書では、初めて挑戦する人でも、アートの世界をつくり出す醍醐味を味わうことができるような構成になっている。
ぜひ巻末の図案集を見て、比較的カンタンそうな図案から取りかかってみよう。最初はシロクマやアザラシのグラスマーカーがオススメ。お次はサクラの花びら。どうにも途方に暮れたときは、「全体を見ず、今切る一部分だけに集中して」との作者のアドバイスを何度も思い出して、少しずつ、少しずつ進めば大丈夫!気持ちを注いだ分だけ、充足感が待っているから。
パリコレで活躍、ニューヨークブルックリンでの個展も好評の切り絵アーティスト、カジタミキによる初の切り絵&立体切り絵クラフトブック。
書籍名:立体でつくる、綺麗な切り絵と小物たち Wonderland of Paper Cutting
著者:カジタ ミキ
ページ数:95ページ
判型:B5変型判
発売日:2017年1月
定価:1,620円(税込)