BOOKS
暮らしの本
著者:寺島綾子
読んだ人:太田明子(ライター)
無類のアクセサリー好きな私は、他人の身に付けているものが、服やバッグより気になる。それだけに興味深くページをめくったのが本書。伝統工芸品・加賀てまりを、真珠やダイヤモンド、珊瑚、紫水晶などのジュエリーに見立てて、さまざまな作品に仕立てた。言い換えれば、和洋織り交ぜた宝石をつくろうというユニークな企画である。
宝石にまつわる物語から小物へのアレンジもおもしろい。たとえばガーネットは、ゲーテが恋した少女が身に付けていたという逸話にちなみ、文豪のイメージでブックマークに。ダイヤモンドは、マリー・アントワネットが所持したブルーダイヤモンドのネックレスに合わせてチョーカーになっていく。こうした物語と相まって、手づくりの品は美しいだけでなく、奥行きを伴っていっそう魅力が増す。また、同じ模様でも濃淡やグラデーション、それに反対色、差し色など、コントラストやバランスでまるで印象が違ってみえるのも驚きだ。
まずは土台まりをつくり、中心を決め、糸を渡し、かがり、帯を巻く。一見複雑そうだが、実はシンプルな手順のくり返しだ。アクセサリーパーツをプラスしてヘアピンやピアスにしたり、クリスタルやビーズと合わせてインテリア小物にしたり。どれもおしゃれでかわいい。
つくることは育てることだ、とこの本を読んで思った。手を動かして作品を育てる喜び。どの服にどう合わせようかな。楽しみに没頭する時間が、夢を育ててゆく。
ダイヤモンド、ルビー、真珠・・・。てまりでつくる12か月の誕生石。新図案、新テクニック掲載の『小さなてまりとかわいい雑貨』第2弾。
書籍名:宝石みたいなてまりとくらしの小物
著者:寺島綾子
ページ数:96ページ
判型:A5変型判
発売日:2016年7月
定価:1,404円(税込)