BOOKS
暮らしの本
著者:寺島綾子
読んだ人:庄司靖子(編集者)
千年の歴史があるといわれている“てまり”。そのてまりが指先サイズに再現され、雑貨にアレンジされて1冊の本になった。『小さなてまりとかわいい雑貨』に登場するてまりには何種類もの模様があり、小さいながらも無限の世界が広がっている。この本を手がけた編集者にその魅力について尋ねてみた。
「あの小ささの中にさまざまな物語や意匠が凝縮されています。奥行きのある光沢を放つ姿が、宝石などにはない魅力のひとつと考えています」。なるほど、糸が織りなす絢爛な模様と光沢は、宝石にはない輝きを放っている。
てまりの図案には、日本ならではの季節の移ろいや縁起など、ひとつひとつに意味が込められているということを知り、てまりはただの“小さいまり”ではなく、れっきとした伝統工芸なのだと再認識した。色とりどりの糸でかがられた美しい模様は見ているだけでため息が出るほどだ。
実際にこの、複雑で難しそうな模様を自分でかがることができるのだろうか。同じく編集者に率直に聞いてみた。すると、「一見、難しい作業に見えますが、実は単純作業のくり返し。あせらず、ひと針ひと針刺してください」というメッセージをもらい、挑戦してみようかな、という気持ちになった。
本書に紹介されているてまりは、写真解説付きでつくり方が掲載されている。さらに、かんざしや帯飾り、ペンダントやブローチなど、アレンジされた実用性のある雑貨も紹介されているので、つくってみたいと思うものが見つかるだろう。
「無心にかがっているうちにいつしか精緻な文様が浮かび上がってきます。糸が複雑に組み合わさって美しい文様ができていく過程は、感動ですらあります。ひと針ひと針刺す時間を大切にすることが、美しい仕上がりへと導くのです」。
――編集者のいうように、かがる時間そのものを楽しめば、その先にある感動を味わえる。
加賀の伝統工芸、てまりを指先サイズに。材料も道具もつくり方もシンプルなのに美しい。ファッション小物へのアレンジも多数紹介。
書籍名:小さなてまりとかわいい雑貨
著者:寺島綾子
ページ数:96ページ
判型:A5変型判
発売日:2014年11月
定価:1,404円(税込)