BOOKS
暮らしの本
著者:中川たま
読んだ人:石口早苗(ライター)
季節ごとのフルーツとその調理法を教えてくれる、果実愛にあふれた一冊。フルーツにまつわる思い出話やお気に入りの果樹園についても書かれていて、単なる料理本とはひと味違う。
フルーツというとデザートのイメージがあるが、この本には料理メニューも満載。中川さんはフルーツを調味料としてとらえ、旬の野菜や魚とマッチングさせて目新しい料理を紹介している。例えば、桃とミョウガ、巨峰とナス、梨とサンマ、今まで想像もつかなかった組み合わせで、オリジナルの一皿をつくりだす。こんなアイデアが生まれるのも、フルーツのみならず、食材全般に熟知しているからだろう。
もちろん料理だけでなく、スイーツやジャムなども紹介されている。中川さんのイチゴジャムは果肉がごろっと残っていて、昔、母がつくってくれたものとそっくり。食べごたえのあるジャムトーストが大好きで、朝食やおやつにも食べていた。最近は市販のものばかり、手づくりジャムが懐かしい。
そういえば、友人が奄美大島のマンゴーを送ってくれたことがあった。そのままでももちろんおいしいが、バニラアイスをのせていただくのがお気に入りの食べ方。濃厚な甘味が口いっぱいに広がり、私にとってのご褒美デザート。本にはストックレシピとしてマンゴーソースが紹介されていたが、アレンジを加えればドレッシングや冷菓にも。今年は自分でマンゴーのお取り寄せをして、いろいろ試してみよう。
それにしても、掲載メニューが100を越えるとは相当な数。ほかにも多数、候補があったそうだ。担当編集者は、「その季節に食べたくなるような料理であること、旬の食材と合わせた料理であるなどの視点で決めました。フレッシュをそのまま活用する料理、保存食にする方法、デザートだけでなく、おかずへの活用がすべて入れられるように構成しました」と話す。
実際につくってみたものをたずねると、「りんごと塩さばのポテトサラダ」「サーモンソテーとキウイとアボカドのタルタル」という答えが返ってきた。いつもつくっている料理にフルーツをプラスするだけの、つくりやすいものから楽しんでいるという。どれも簡単で手軽にできるのがうれしい。
春夏秋冬のフルーツを最大限に楽しむ方法を提案。ジャムなどの保存食だけでなく、主菜、副菜も紹介。食卓を驚きと喜びで彩るレシピ本。